ワイナリー通信

2018年のおさらい 畑のはなし

Winery通信 WINTER Vol.66

 2018年収穫ワインの出荷が始まりました。最初に発売されたのは《サン・スフル白》です。葡萄の熟度の高さを感じるとっても美味しいワインになっています。

 さて、冬号恒例、岸平典子社長に2018年の畑の話を聞いてきました。 

今年もやんばい暑かったですね。8月に伺った時には、葡萄は全般的にとても良い出来だと話されていました。

まずは白葡萄についてお話ください。棚つくりのベリーA古木 作業しにくい樹の高さ.JPG

岸平「今夏は日照りで苦戦した農家さんが多かったですね、お盆までは。水遣りをして凌いだ話も聞きましたが、連日の暑さで葡萄の糖度が上がり豊かな味わいの果実が生りました。果実は、日中の暑さで糖ができ、夜の低温で酸を保持します。今年は夜温が下がらず葡萄の酸が下がると予想。そこで初の試み、デラウェアの一部早摘みを行いました。完熟デラと分けて醸しています。」

ワインにする時にブレンドするのですね。

岸平「そう。いい感じに仕上がって喜んでいるところです。」

赤ワイン用の黒葡萄はどうですか?明日(2018年10月8日)から自社ベリーAの収穫がはじまるそうですね。

岸平「う~ん。お盆以降がねえ。黒葡萄のベレゾン期(色付き期)に雨がだばだば降り、のち台風です。雨による病気を逃れることができた樹も、強風で葉が傷み、望ましい光合成ができないものもありました。そうすると色付きなどに影響がでます。」

もったいないなあ。今年の黒葡萄はあまり良くないですか?葡萄は厳しくチェックされる.JPG

岸平「畑によりますね。きちんと管理され手を掛けた畑の葡萄は、質はそれ程落ちない。収量は減りますけどね。いつも良質の葡萄を作ってくださる農家さんは、今年も間違いのない原料を納入して下さいました。ちなみに自社畑もなかなか良い出来ですよ、ちょっと少なくなるけど。」

ベリーAの次がBQ(ブラック・クイーン)収穫ですか?

岸平「そこが例年と違ってBQは終わっています。今年はBQが熟すのがぐっと早くて、ベリーAと順が逆になりました。明日から一週間ベリーAの収穫、終わったところでカベルネに入る予定です。

温暖化の影響だろうけど、BQに限らず年々葡萄の生長が早まっていますね。栽培も醸造も、目を離さず手を掛ける事が大事ですね。」

 

取材日は10月7日。お盆以降一日も休みがないとのお話でした。ちょっとしぼんだか(失礼!)に見えるくらい、顔がほっそり痩せちゃってましたが、表情は充実して自信がうかがえました。今年の造りに手応えを感じておられるのだろう、と飲むだけのヒトはほくそ笑んで帰宅したのでした。

タケダに酒神の恵み多からんことを!

山形の夏は暑かった!

Winery通信 AUTUMN Vol.65

2018年7月7日・8日の二日間「やまがたワインバル2018 in かみのやま温泉」が開催されました。私も参加した一大イベントの報告書です。

7月7日(土)vlcsnap-2018-09-10-14h07m37s241.png

初日はワインバル。私もエプロン着けてタケダのブースに入る。雨が降ったり止んだりで、湿度が高くじっとり暑い。

雨ニモマケズ会場一番乗りは、500ml缶ビールを片手に盛り上がる美女軍団(ワイン販売開始にはまだ時間がある)。気合の入り方が「本気と書いてマジと読む」人々が年々増えている気がする。それだけ祭りとして定着したということかな。

お城が改修工事中のため会場ブースの場所が昨年までと違う。「探しちゃったわ」と神奈川から毎年訪れているという素敵なご夫妻が来店。サン・スフルが大好きだとおっしゃるおふたりに「毎年同じ味は造れませんでムニャムニャ」とつい言い訳がましくなる。「あら!それがいいのよ。今年も楽しみ。良い葡萄が採れるといいわね。」うれしいなあ。

《サン・スフル》《クリオエクストラクシオン》が人気。実は本日の目玉は《アッサンブラージュ ルージュ2012》ワイナリーに行っても飲めない買えない本日限定の1杯。

  

7月8日(日)P7080962.JPG

二日目はワインツーリズム。お客さまが巡回バスで上山―南陽のワイナリーを自由に巡る。タケダでは岸平和寛専務によるワイナリー見学会、有料試飲コーナー、フードブース3店(イタリアン・パン・日本料理)を準備。売店では本日限定の商品も販売している。

 

 P7080939.JPG《タケダワイナリー》は1杯100円、《ドメイヌ・タケダ》は1杯500円と、ツーリズム事務局スタッフも驚きのリーズナブルな値段。今日を逃すと手に入らないアイテムもあり、お客さまにも好評だった。

 私は昼まで試飲の売り子、その後オプションの特別ツアー『典子社長によるメーカーズランチ』の取材。乾杯を機に離れ、巡回バスに乗りよそさまの様子を見に出かけた。上山発バスが大変な遅れで、赤湯温泉街に到着したのは、戻りバスの出発8分前!バス停に一番近い酒井ワイナリーまでダッシュし、2・3枚写真を撮ったところで時間切れ。エー!?仕事だから飲めないにしろ、もっと見て歩きたかった。残念無念。復路はグレープリパブリックで途中下車。これぞ"フェスティバル"って感じで晴れやかな雰囲気。充満するエネルギーに圧倒される。

 バス中でもお客さん方が皆楽しそうだった。全ワイナリーを巡るには一日では足りないのではなかろうか?足らなかったところは、皆さんまた来年お会いしましょう。

 

 

変幻自在「やまがたワインバルinかみのやま温泉」

Winery通信 SUMMER Vol.64

2014年から、かみのやま温泉を舞台に開催されている「やまがたワインバルinかみのやま温泉」。昨年は初の二日間開催でした。今年は二日目をワインツーリズムに充て、舞台を広げパワーアップします。

と耳にし「詳しくおせーて!」タケダワイナリーに押しかけました。岸平ご夫妻から伺った<2018年のワインバル>はこんな感じ。

 2018年7月7日(土)初日 ワインバル

上山城を中心に、ワインメーカーとフード店のブースが並びます。今年は過去最大、地元山形県や上山市に縁のある28ワイナリーが参加。音楽ライブや浴衣コンテストがあるほか、浴衣を持参すれば無料で着付けをしてくれるコーナーもあります。ワイナリーの人達と話をして、お日さまの下で飲むワインは格別です。

 7月8日(日)2日目 ワインツーリズム

『当日限定のワイナリーを巡るバスに乗り、上山市と南陽市のワイナリーや葡萄畑を周ります』とチラシにある。はとバスの醸造所バージョン?と思ったら、もっと自由度の高い旅のようです。

かみのやま温泉駅・赤湯駅を起点とし、各ワイナリーや観光名所に臨時の専用バス停が出来ます。朝9時頃始発、その後45分間隔で6台のバスが巡回。パスを持っている人はどの便に乗っても、どこで乗っても降りても自由。各人が思い思いに楽しむことが出来ます。

迎えるワイナリー側も、それぞれ工夫をこらした企画を考えているところだそうです。(取材した5月初旬現在)

タケダワイナリーでは、時刻を決めて、案内人付きのワイナリー見学会を複数回開きます。有料試飲と、山形市の人気イタリアンレストランやパン屋によるマルシェも開催予定。

また、ワインツーリズムのオプショナルツアーとして、タケダワイナリーの蔵座敷でランチをいただく人数限定企画もあるとか。こちらは栽培醸造責任者である社長・岸平典子氏による案内のメーカーズランチです。山形市で人気のレストランが出張料理を提供します。市場では手に入り難いスペシャルワインが出るかもしれません。

 

酒井ワイナリー.JPG大浦葡萄酒.JPG南陽市は、山形県で一番古いワイナリーである酒井ワイナリーなど、複数の醸造所があります。しかも、温泉街兼生活の場に、ワイナリーが何軒もあるおもしろいところ。大きな神社の門前に温泉旅館、民家、辛味噌で有名なラーメンの本店、呑み屋、米沢牛コロッケを売る肉屋、そば屋、足湯、市立図書館と同じ場所にワイナリーが並んでいる。映画の舞台に入ったようで不思議な感じです。

「訪ねて下さる方に楽しんでいただけるように企画中です。」と、酒井ワイナリーの社長夫人がおっしゃっていました。

私も二日間参加予定です。どうぞ暑い山形にお越しください。お待ちしております。

これが新タケダワイナリーシリーズです

Winery通信 spring Vol.63

 

店頭でも並び始めた新タケダワイナリーシリーズですが「リニューアルの全体像がミエナイワ」と思われている方もいらっしゃるでしょう。そこで、今回は2018年春からの新ラインアップをご紹介いたします。

★タケダワイナリーシリーズ

 ①タケダワイナリー750 

 ②タケダワイナリー375

  ブラン[白・辛口]/ルージュ[赤・辛口]/クリオエクストラクシオン[白・甘口]

 ③サン・スフル 白[発泡]/赤[辛口]/シードル[発泡]/ロゼ[発泡]

 ④樽熟成 ブラン・ド・ノワール[白]/ルージュ[赤]

 ⑤KAMIOGINOTO 843-5 [赤・樽熟成] 

 ⑥アストール 白[極甘口]/赤[甘口]

    ※   は2018年3月現在品切中

以上が現在のワインリスト(一部在庫切れを含む)です。①と②は同じワインのフルボトルとハーフ。これに、『蔵王スター 一升瓶 [白・ロゼ]』が加わります。

『蔵王スター』の終売に伴い姿の見えなくなったアイテムがあります。お気づきになりましたか?

『アイスワイン白・ロゼ』です。人気商品をやめた理由を典子社長にお聞きしました。

岸平「国際的なワイン法では"アイスワイン"を名乗れるのはドイツ等の限られた地域で醸造される、樹上で自然凍結した葡萄から造ったワインだけです。『蔵王スターアイスワイン』は人工凍結によるものですが、この規定が出来る前から既に販売しております。不利益不遡及(ふりえきふそきゅう)によりこの名で販売を続けていましたが、この度の"果実酒等表示基準"を鑑みて、やはり正したいなと。『クリオエクストラクシオン』は日本語で『人工凍結濃縮法』となります。"蔵王スター白甘口"の位置にこのワインを入れました。従来の"蔵王スターアイスワイン"と比べて濃縮度をアップさせています。」

凍った葡萄を自然解凍させつつ搾りますが、融かし具合で濃縮度を調整するそうです。生の果実を原料にした場合にくらべ、採取できる果汁の量が少ない。濃縮度を上げればさらに少なくなるので贅沢な造りですね。

 2017年のワイン造りは「チームとしてアグレッシブな仕事だった」と典子氏は言います。

岸平「"蔵王スター"に沿わなくては―という決まりからはなれて、いちばん美味しいをまっすぐに目指した。」

 "蔵王スター"の名が外れたことで得た自由があったとは。慎重派のスタッフも新たな技術に挑む等攻めのワイン造りが出来た。

 典子社長の自信がうかがえる言葉通り、新タケダワイナリーはテーブルワインを超えた1本だと私も思います。

 

新「タケダワイナリー」はどうちがう?

Winery通信 winter Vol.62

 

 順次、新ブランドへの移行が始まっている「タケダワイナリー」。今秋からリリースされています。

 

タケダは、首都圏等では"タケダワイナリー"として、地元山形では"蔵王スターのワイナリー"として、多くの方に認知されています。その為、地域ニュースで蔵王スター終売が流れた際は、結構驚かれたようですね。

岸平「そうですね。営業担当者が外回りの時に、廃業なの?と聞かれたりして(苦笑)。まあ、ちょっとの間でしたけどね。」

"ベリーAの主たる収穫地・天童市が蔵王連峰ではない"ということで、名称を新しくしたんですよね?

岸平「端的に言えばそうです。日本ワインとその他のワインを区別する新しい表示基準を尊重し、厳格にルールに則りました。

では、具体的な変更点を伺っていきます。容量が720㎖から750㎖に増えました。

岸平「720㎖は、一升を基にした日本独自の規格でね。四合瓶なんですよ。ワインの国際規格は750㎖。この容量でなければ国際的には流通できません。"サン・スフル(750ml)"は輸出できるけど、"蔵王スター(720ml)"は輸出不可能。税関を通らないのです。」

あら、輸出を考えてのこと?

岸平「そうではないですが、仏国のレストランで弊社のベーシックワインを提供したいというお声もいただいています。私としては、ワインとして特殊だったのを標準にしたという感じかな。」

コルク栓がスクリュー栓になりますね。

岸平「ワイン専用スクリュー"スティルヴァン"にします。スクリューキャップにも色々あって、使用目的によって酸素透過性や耐酸性を選べます。ほら、(見本を示し)これがスティルヴァン。」

ああこれですか。長いですね。瓶首を覆っていたキャップシールも兼ねるのか。ボトリングはひと手間減りますね。

岸平「ポリスチレン製のキャップシールは不要になります。」

ラベルデザインも変わりました。シンプルでお洒落です。

岸平「キジと葡萄が我社のロゴマーク。葡萄の上にキジが乗っている従来の印はドメイヌ・タケダ。葡萄をくわえている新型が新シリーズのロゴです。注目して欲しいのは、この葡萄の"バラ房"です。いい感じのバラツキでしょう?これぞワイン専用葡萄ですよ。」

・・・・・・。中身について大きく変えた事はありますか?

岸平「敢えて変えたというのはありません。有核葡萄が増えている事もあり、より美味しくなっています。一所懸命作って貰った葡萄だから、細心の注意を払って丁寧に造りました。それがワインに表れたと思います。」

確かに、新生サン・スフルは素晴らしいワインに出来上がりました。

 

2016年のはたけの話 その2

Winery通信  summer Vol.60

春号から続く畑のはなし。ニュアンスをお伝えしたく一部山形弁をそのまま記します。意味は最後の注釈をご覧ください。

 

"有核葡萄"についてもう少し教えて下さい。デラ花1.jpg

岸平「種ありが有核、種なしが無核です。」

どう違うのでしょう。

岸平「現在、生食用の多くは"無核"ですが、そういう樹があるわけではありません。普通の樹に〈ジベ付け〉を行い人為的に作っています。ジベ付けは、開花前後の葡萄を、容器に入れたホルモン剤のジベレリンにひとつひとつ浸していく作業です。これによって種のない果実が生ります。」

ぶどう棚の下に入ってずっと上向いて、大変な作業ですよね。デラ畑1.jpg

岸平「有核が増えた理由として、まず農家の高齢化があります。生食用葡萄は見栄えも大事な分、手間が掛かって大変。"年寄って葡萄さんねは"*1とおっしゃる農家さんにはワイン専用を作ってみないかと話しているんです。"有核だじぇ" *2ってね。」

岸平「二つめの理由は国産ワインが広く認められるようになった事。以前は《有核の葡萄=質が劣る加工用の果実》のイメージがあり、外聞わるいというか、誇れないものだった。近頃は、生食になれなかった果実と、ワイン専用に栽培した葡萄は違うという認識が定着してきました。胸張って有核を栽培してくれる。若い農家の中には、最初から高級ワインの葡萄つくりを目指す人もいます。」

他にも要因はあります?

岸平「価格の安定。生食葡萄は市場価格の変動が大きく、博打のようだと言う人もいます。豊作での供給過剰や、天候による品質の低下によってガクっと値が下がる場合もある。生食用が安い時は、加工用はさらに安くなっちゃう。ワイン専用は加工用より高く、価格を予め取り決めていますから。」

手間が減って、収入が安定するなら農家にとっても"いいばり"*3じゃないですか?

岸平「そう思います?でもね、傍から見るほど楽じゃないのよ。ジベ付けしないと葡萄の生長が違うの。何十年と栽培してきたじいちゃんでも、ほとんどの人が有核は初めて。天候と葡萄の状態の組み合わせが、"見たことない"わけです。例えば梅雨頃はこれ位の大きさだからこの手入れをする―といった経験値が活かせない。"どやんばいすっどいいのや典子さん"*4と問い合わせをもらうので、その畑に出向いて、確認しながら一緒にぶどう作りをしているところです。」

確かに、現在リリース中の蔵王スターは種の香ばしさや熟した皮の味を強く感じます。ワインが美味しくなって、沢山飲まれるようになって、農家の後継者が増えると、まさに"いいばり"なのですがねえ。

 

*1"年を取って葡萄はもう作れない"

*2この場合"有核でいいんだよ"の意

*3"いいこと尽くめ"

*4"どうすればいいの?典子さん"

2016年のはたけの話

Winery通信 2017 spring Vol.59

 

3年ぶりに蔵王スター白の一升瓶が店頭に並びます。ラベル記載はありませんが2016年収穫醸造です。

昨年の畑はどうだったのか教えていただきましょう。お話はお馴染み社長岸平典子です。

岸平「昨年の山形は空梅雨で、8月は次々と台風が通過、9月中旬以降はずっと雨。ちょっと難しい天候でカベルネ1.JPGした。葡萄に付く病気の発生は少なく、その点は良かったです。」

葡萄が熟してから随分雨が降って私は心配しましたが。

岸平「葡萄の栄養生長期が天候に恵まれ、樹がしっかりすると強い果実になる。2016年は生長期も、べレゾン(色付き)が始まった時期も日照が十分だったので大丈夫でしたね。2015年はこの時期が雨に祟られて黒葡萄が辛かった。」

個別に伺います。白葡萄はどうでしたか?

岸平「デラやシャルドネは平均点以上の良い出来でした。9月の長雨前に収穫を迎えたシャルドネは特に良

かったですね。デラは8月の台風の影響が出ましたが、収穫期を長くする事で十分な原料を確保できました。以前はすべて完熟マックスでの収穫をお願いしていたのですが、秋雨の影響を受けやすく、実に傷みがでるリスクが伴います。天気予報を見て、必ずしも追熟(もうひと押し熟れるのを待つ)していなくても収穫可能にしました。もちろん完熟頂点の果実が主ですが。」

その変化はワインにも表れていますか?

岸平「ええ。今回はワイン用として栽培された有核(種あり)葡萄の割合が増えたこともあり、風味が増しシャープになっています。」

黒葡萄はどうでした?

岸平「黒葡萄も品質は良い。ただ、収量が少なかった。これはうちに限らず、どこでもそうでしたね。空梅雨の影響かなと思っています。量は少なくとも良品の葡萄が採れた場所と、量・質とも残念なことになった場所。畑の管理の在りようで結果に大きな差が出た年でした。」

黒葡萄は9月末から10月あたまが収穫期ですよね。ベリーA.JPG

岸平「んだね。いつ収穫すべきか悩んだ、今回も。赤ワインは特に皮や種の成熟度が大事だから。」

でも無事に収穫できたんですね。

岸平「まずまずだね。強烈なキャラクターはないけれどエレガント。緻密で繊細なワインが出来ると思います。ただねぇ。原料の絶対量が足りなくて赤の一升瓶は今回ありません。それと、2015年に続きサン・スフルのロゼが造れませんでした。」

ええええ⁉ホントですかっ!・・・ショックです。

岸平「私もショックです。今は在庫が1本もなく、私も飲むことが出来ません。飲みたいなぁ。」

なんという事でしょう。衝撃が大きくてその後は音が遠くなる感じでした。有核(種あり)に切り替える葡萄農家が増えた背景や、その際のご苦労などもお聞きしましたが、また今度とさせて頂きます。

忘れないためのワイン『vin de MICHINOKU』

Winery通信 2016 winter Vol.58

以前紹介した、ワインをコップで楽しむイベント『コップの会』。2014年3月仙台市で開催された時にその話が「決まったらしい」(談:岸平典子氏)。

らしいーとはどういう事で?Vin de MICHINOKU2015(2016.03.11_3).jpg

岸平社長「コップの会終了後、打ち上げで気分よく飲んでいたら、一緒に来ていた酒井さん(酒井ワイナリー)と佐藤さん(紫波フルーツパーク)に、『造るのは典子さんに決まったから』と言われまして。話を聞いてなかったので、ナニカと問うたら、東北六県の葡萄でワインを造るぞ!と。」

 それが、『ヴァン・ド・ミチノク』の始まりだった。仏国の著名な醸造家ティエリー・ピュズラとオリヴィエ・ボノームが、大震災のあった年に東北を想い『キュヴェ東北』と名付けたワインを醸造した。2014年日本に届いたそのワインはこの日を忘れないために、3月11日全国のビストロ等で一斉に抜栓された。仙台市では『ブラッスリーノート』当時(現『バトン』)の板垣卓也さんが主催し、その数日後同じ会場でコップの会が開かれていたのだ。

岸平社長「ところが翌年の『キュヴェ東北』は諸事情により入荷しないと板垣さんに聞き、んだら東北葡萄でワインを造るべし!となったのです。」

板垣さんを中心に、飲食店・酒販店・醸造家が仲間のツテを頼りに原料を探し運搬した。

岸平社長「葡萄の確保から運搬、ラベル貼り等は皆手弁当。ワイン関係者が一年で最も忙しい時期に、休日返上で秋田・岩手のワイナリーから葡萄を持って走って来る。人の気持ちってすごいなと思いますね。」

タケダもタンク1個をミチノクにあてがうので、その分自社製品は後回しになる。

岸平社長「青森は飲食店の人とお客様が葡萄を運んでくれました。収穫済みの山葡萄が待っているつもりで行ったら山に案内され"採っていって"。」

水さえ待たず、あるのは葡萄だけ。飢えや虫と闘いながら300㎏収穫し、そのまま山形に。タケダに到着したのは21時。『朝8時から葡萄しか口にしていない』とクタクタになりながら届けてくれた。

岸平社長「ミチノクには①東北六県の葡萄、②野生酵母、③無添加の3つの決まりがあります。初めての品種、しかも混醸(全品種を合わせて醸造)は初挑戦。難しかった。失敗が許されない酒ですから緊張しますね。」

2014年秋に醸造し2015年3月にリリースしたのが第一回。今年、三回目を仕込んだ。Vin de MICHINOKU2015(仕込_2).jpg

岸平社長「近頃編み出した作戦は毎日声がけすることです、発酵中の酒に。『がんばれ』とか『今日は調子いいな』とか。スタッフにもお願いして実践してもらっているんだけど、若者はやってくれないなあ。」

たくさんの人の想いが詰まった『vin de MICHINOKU 2016』は、2017年3月11日に抜栓される。

※「vin de MICHINOKU」に関するお問い合わせは、バトン(板垣代表)batons@macuisine2002.comへお願いいたします。

この秋、新しいワインがデビュー

Winery通信 2016 autumn Vol.57

タケダでは、収穫した畑ごとに別タンクで醸造し製品化の際にブレンド。各個性を活かしたバランスの良いワインに仕上げます。

これに対し、ひとつの畑から収穫した葡萄だけで造られたワインがあります。『ドメイヌ・タケダ 古木』。ワイナリーで最も古い畑、樹齢を重ねた葡萄だけで造られたお酒です。その意義はテロワールにあるといえましょう。この1本には"樹"の個性、すなわち土地の個性がギュッと詰まっています。色、香り、味ーワインの要素を独りで表現できる葡萄だけが、畑の名を冠することが出来るのです。

さて、前置きが長くなりました。色付きを待つワイン専用葡萄の姿-小粒な実がまばら.JPG

この度タケダから登場するのは、単一畑の葡萄を原料にした『タケダワイナリー KAMIOGINOTO 843-5 2014年収穫 赤辛口』です。天童市上荻野戸産ベリーA 花輪周一郎栽培100%使用。

サン・スフル赤の原料は天童市上荻野戸地区の葡萄農家が作っています。そのグループのまとめ役は花輪和雄さんです。『KAMIOGINOTO 843-5』は、和雄氏の跡を継いだ息子・周一郎さんが特別栽培した葡萄を100%使用し、タケダ古木シリーズ同様に樽熟成しました。

高い品質のベリーAをタケダに納め続けている花輪さんですが、ベリーA古木に並ぶような、より高品質なワイン用葡萄の栽培にはご苦労されたようです。木の剪定から房の作り方、収穫時期など、栽培の仕方をいちから見直しました。岸平社長に相談しながら作ること3年。2014年収穫でようやく、単独ワイン醸造に至りました。

天童市の、満々と日の当たる畑で、典子社長と周一郎さんに話をうかがいました。

このワインを造った経緯を教えていただけますか?

花輪「タケダさんの古木畑を見た時に、もし同じくらい良い葡萄を作ったら、ウチので単品ワインを造ってくれるだろうかーと思ったんです。そしたら岸平社長が"やっべ(やりましょう)"と。」

それは誇りやモチベーションとして?

花輪「第一はそれ。それと葡萄の付加価値を高めたい。私より若い世代が農業を職業に選んで、つないで行って欲しい。それには"価値あるもの"を作る実感と、生活出来る収入が必要です。私の葡萄が1本のワインになったら、"俺も"と続く若者が出てくるかもしれない。」

葉っぱを除き光が降り注ぐ。下からの照り返しも眩しい.JPG岸平社長「良い葡萄を作ってくれる人がいなければ、私たちは何も出来ません。質の高い葡萄を使い、高品質なワインを造ることで、農家と私達に新たな可能性が見えました。そして何より、飲む人に山形の豊かさを知ってもらうことが出来る。ぜひ、飲み比べてテロワールの違いを味わって欲しいです。」

同じ品種で同じ醸造者が造ったワイン。原料(産地)によるキャラクターの違いを楽しみたいと思います。

営業 岸平和寛専務に最近の状況を聞く

Winery 通信 2016 summer Vol.56

 

この度の熊本県、大分県で発生した地震により、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。

かつて、日本の中小規模醸造所のワインを飲食店で楽しむのは難しい事でした。山形は何十年も前からワイナリーが複数あるにもかかわらず、お店で出されるのは海を越えてやってきたものが多く、国産はグラスワインで出されるくらい。ところが、近頃は『地酒・地ワイン』を看板にする店がたくさんあります。

山形だけでしょうか。岸平和寛専務に伺いました。

日本全国を飛び回って随分お忙しいようですね。FRC003.jpg

岸平専務「今まであまり行ったことのない地方への出張も増えて、日本ワインに対する注目度が上がっていますね。」

飲食店のお酒リストが変わりました。豊富な地酒(ワインも含めて)から好みに合わせて選ぶことができます。山形だけですか?

岸平専務「全国的な動きですね。今ワインブームと言われているけど、キーワードは"地元"。まず自分が生活している所で造っているものに興味を持ち、その後に他所を試される方が多いようです。例えば、大阪にワイナリーが増えてから、西日本で国産ワインが注目されるようになりました。この流れは都市部を中心に拡がっています。」

年代的には私のような中高年が中心ですか?

岸平専務「若い人が多いです。バブル期のワインブームを知らない世代が持った"新しい価値観"じゃないのかな。ワインが飲まれるシーンが変化していて、リーマンショック後は、それまでの高級レストランからバルなど気楽に楽しめる店になり、東日本大震災後は家呑みが多くなっています。」

"地元の酒は地元の気候と食"がイチバンと信じている私にはうれしい。旅先でも体験できるという事ですものね。ところで、社長と一緒に仏国にも行かれたとか?

岸平専務「機械を視察がてら営業もね。パリに日本人夫妻が営むレストランがあり、弊社のサン・スフルをご利用いただいています。コースで提供されるワインは、基本、ソムリエが皿に合わせて選びグラスで提供する仕組みで、タケダもその中でお飲みいただいている。ワインについての説明は後からなので、お客様は味わってから銘柄を知るんです。実際に、私たちがうかがった際もウニの一皿に合わせてサン・スフル白がサーブされました。醸造責任者の典子社長は店の仏国人ソムリエから質問攻めにあっていましたよ。」

 

海外でもタケダワインは飲まれているのですか⁉futta0074.jpg

岸平専務「自分達で輸出しているのではないですが。ほかには、アムステルダムの日本ホテルにあると聞きました。台湾では富裕層向け販売店で"古木"が並んでいるそうです。」

知りませんでした。今後は積極的に輸出を?

岸平専務「いえいえ。ただでさえ品薄でお客様にご迷惑をお掛けしているのに、それは考えていません。色々な所でご愛飲いただけて嬉しいと思っています。」

今年もお待ちしています。山形ワインバル

Winery 通信 2016 spring Vol.55

ちょっと先になりますが夏のお話をひとつ。『やまがたワインバル inかみのやま温泉』が今年も開催決定!陽気なワインのお祭りが温泉町を舞台に繰り広げられます。上山にある2ワイナリーをはじめ、上山産葡萄を使用している県外ワイナリーも参加。美味しい山形フードを味わいながら太陽の下で飲むワインは格別です。地元の酒は地元の食ですよ。

今号は私の〈2015体験記〉です184A5327.jpgのサムネイル画像

2015年7月5日(日) 電車が山形駅のホームから混雑しているのは『ワインバル』が理由だった。かみのやま温泉駅で大半が降りる。祭り開始は14:30、まだ午前中なんだけど。タケダワイナリーの出店は、メイン会場ステージ前。準備はスタッフがあらかた終えていた。祭り事務局テントより早いかも。「サン・スフルを開ける時間かがっしね」などと冗談をかわしつつ、大量の氷塊を発泡スチロール

箱に入れ、ワインをつっこんでいく。端っこで手伝いながら皆の手際良さに舌を巻く。

 184A5892.jpgのサムネイル画像のサムネイル画像13時頃「まだ飲めないの?」と来るお客様が出始めた。現金販売のフードと一緒に昼食を、といったところか。14時過ぎにワイン供給開始。来場者は受付でグラスを受取り、気になるワイナリーのブースへ。券と引き換えにワインを購入する。会場が坂であるため店が散開していて、購入者の列もまずまず。ローカル色が大変よい感じです。東京から来たご夫婦が「ヴァンダジェで美味しかったから来てみたの」と来店。浴衣が良くお似合いですね。「着付けてもらったのよ。」浴衣持込みの方には無料で着付けをしてくれるコーナーもあるそう。

 この日タケダが用意したのは5銘柄。蔵王スター赤・白辛、アイスワインロゼ、サン・スフル白・シードル(...辛口が多いなぁ)「ジュースっぽいと敬遠していたけど、このベリーAは辛口で美味しい」と驚く方、「私シードルだけで6杯目。ウフフ」と追加チケットをひらひらするツワモノ。様々なお客さまとの会話が楽しいです。途中足りなくなり追加ワインをワイナリーから運び込む。会場まで車が入れないので、下の道から石段を駆け足で数往復。うおお部活動みたいだあ。

祭り後半、典子氏と下まで下り、武田家馴染みの魚屋さんで穴子白焼きを食べた。焼きが上手でとっても美味しい。184A5630.jpgのサムネイル画像自家製ソーセージの屋台や、ホテルメイドのライスコロッケ、山形牛の煮込みetc。上山らしいなと思ったのは果実盛り合わせまであること。お菓子屋さんのかき氷も人気でした。

郷のお祭りにお呼ばれしたかのような、懐かしさを感じます。2016年は、7月9日の土曜日開催ですので、温泉に泊まりながらゆっくり来てけらっしゃい。

詳しくは、こちらをご覧ください。

 

今年の味を美味しく引き出します

Winery通信  2015 winter Vol.54

秋も深まり、冬を前にワイナリーは一年で最も忙しい時期にあります。殊に今年は天候不順、例年にも増して手と時間を掛け、慎重な作業を心がけています。

夏号で天気に恵まれ良い出来だったデラウェアについてお伝えしました。あの後、赤・黒葡萄の果実が熟し、収穫まであと一歩というときに長雨が続きました。

社長「入荷したデラウェアを仕込みながら、まめに畑に通って葡萄の状態を見ました。毎年、収穫日を決めるのには悩みますが、今年も苦しかったです。」

2013年がやはり天候に左右された年でした。確か、選果に時間がかかって仕込みが深夜に及んだという事でしたね。

社長「ええ、私たちも初めての経験でした。今年はあの時ほどではありませんがね。」

現在販売している古木2種が2013年収穫ですね。どちらもクリアで綺麗な味です。

社長「エレガントだと評価を頂きます。ありがたいことです。収穫した葡萄と向き合い、良いところを引き出そうと心掛け醸造しました。それまでの経験があまり頼れない年だったので、手探りで新しい事をはじめるようでした。今年はその経験を活かします。」

具体的にはどこが違うのでしょう。造り方を変えるの?

社長「造り方は同じです。醸造管理をきめ細かく行います。朝一番に香りを嗅ぎながらサンプルを採取し、成分分析とテイスティングをします。数値と五感をつき合わせて、タンク毎にその日の管理を指示。温度、かいつきの回数、タンク内の循環など。スタッフは感覚を研ぎ澄ませながら作業に当たり、何かあれば醸造責任者の私に教えてくれるのです。」

それは醸造責任者と同じ感覚を持っていないと出来ませんね。

社長「醸造管理のスタッフ全員でテイスティングします。一人の人間では体調によって感じ方が変わりますからね。綿密な打ち合わせも行い、この工程がなぜ必要か皆理解していますから、気付きが早い。頼りになります。」

ここまでは毎年の仕込みと同様だそう。加えて今年は昼・夕のチェックも欠かさない。タンク毎に毎日つけている記録も今年は特に詳細だ。

社長「葡萄の新たな一面を丁寧に拾っていく感じですかね。主張が強い葡萄を相手にした時には気付かない、良い点を表して伸ばす。技術を問われる年ですね。」

この時期いつもの事だけど、典子社長の張り詰めた様子そのままにワイナリー全体がピリッとした空気に包まれていた。取材中、「自慢だけど」と前置きして「うちのチームワークの良さに改めて感謝している」と、その瞬間だけはほっこりした表情を見せたのが印象的でした。

葡萄畑に見る気候変化 2015夏をふり返る

Winery通信 2015 autumn Vol.53

秋を迎え、実りの充実振りに加え自身の満ち具合も気になる今日この頃。今年のワインはどうなのかー新酒を飲み、熟成後を想像するのもまた楽し。まずは"良い葡萄から"聞かせてもらいました。

 

社長「今年は雪融けが遅かったわりに季節の進みが早く、畑仕事は忙しかったですね。芽を出し花を咲かせる植物の生長は積算温度によるもの。春から暑い日が続いたので、生長のペースが例年より速いです。現時点(8月末)まで雨が少ないおかげで葡萄はいい感じに推移しています。糖がのり、酸がしっかりしている。デラウェアの収穫はほぼ終了していますが、今年は良いですよ。」

他の品種はどうですか?

社長「シャルドネもまずまずですね。秋雨がなければよい果実が採れるでしょう。ベリーAは今年特に良いです。実のつきも質も。サン・スフル原料を任せている農家さんも『今年は一番の自信作だ』とおっしゃっています。あとは、カベルネがかつてないくらい良い出来ですね。」

今までとなにか違うのでしょうか?

社長「カベルネは、山形での栽培は積算温度が足りないと言われていた品種です。それが今年は十分だったということでしょうね。温暖化の影響だと思います。畑の雑草も今まで見なかったつる性の種類が繁殖していますよ。」

水不足はありませんでしたか?我家の小さな庭でさえ、水やりが大変でした。

社長「水やりはしません。うちの畑はふかふかしたやわらかい土でしょう。これがスポンジのような保水力がある。苗木には水を与えました。まだ根が小さく弱いですから。」

気候の変化が葡萄に影響を及ぼすなら、当然ワインの味わいにも現れますね。

社長「ええ。単純に収穫の良し悪しではなく、葡萄の風味が変わってきます。例えばシャルドネは世界の広い範囲で栽培・醸造されていますが、地域によって個性が異なります。この先、弊社のワインが南方(地理的)の特徴をもつ事だって考えられる。」

ところで、シャルドネ、カベルネはシャトー・タケダの品種ですね。今年は造れそうですか?

社長「これからの出来次第ですね。」

2015年収穫ワインは、10月1日の蔵王スター特別限定醸造[白]を皮切りに順次発売。イベントでは、東京恵比寿で開かれる『フェスティヴァン』にサン・スフル[白]新酒が登場します。国内外の自然派ワイン醸造家が集うお祭りに、タケダからは岸平社長夫妻が参加。今話題のジョージア(旧クロアチア)壺ワインも来場予定だそうです。畑や山形の四季について造り手の話を聞きながら飲むのは一層美味しいでしょう。興味がある方、ご来場の際にはぜひ話しかけてみて下さい。

 

※以上は8月末現在のお話しです。皆さんご存知のように、9月は全国的に長雨となりました。自然相手の仕事は本当に予想しない事ばかりですが、葡萄の収穫はこれからが本番です。天候に恵まれる事を心から願っています。(9月中旬現在)

ワイナリー見学へのお誘い

Winery 通信 2015 summer Vol.52


探検隊_シャルドネのつぼみ.JPGのサムネイル画像今年は春の進み具合が早く、葡萄園ではお日さまに急かされながらの作業です。これからワイナリーは緑美しい季節を迎えます。近頃ワイナリー見学に訪れるお客さまが増えていると聞き行ってまいりました。同行させて頂くのは東京からいらした女性二人組です。案内役は畑・工場担当社員の佐藤誠さん。横浜でワインショップ店長をしていたという米沢市出身の30歳。タケダワイナリーのあらましを聞いた後、工場隣接のシャルドネ畑を見学します。

キジやヨシキリの声が響くなか、垣根仕立ての畑を見ながら棚仕立てとの違いや、この苗木が何年目など解説つきで風景を観ているよう。除草剤を使わないため雑草が元気に生い茂るが「土はフワフワと柔らかく葡萄にも良いんですよ」と話す佐藤さんもなんだか心地良さげだ。

探検隊_売店ではグッズ販売も.JPG醸造タンクを横目に見つつ事務所前坂を上ると、蔵王連峰が一望できる。工場の軒下には秋の出番を待つ葡萄を搾る機械が鎮座まします。一日5~8t仕込むそう。「秋にいらっしゃると仕込みを見られるかもしれません。一面葡萄の香りですごいですよ。」

次は地下セラー。地下水を利用し、年間通して平均15℃に保たれている。樽が寝かせてあるセラーも入口から覗かせてもらった。『樽には何年くらい入れておくの?樽によって個性が異なる?』お客様からの質問にもスラスラ答える姿は流石です。稼動はしてなかったが瓶詰め工場を見て、売店で試飲・お買物。これでコース終了です。葡萄~ワインまで実際に造っているスタッフが案内するので説得力があります。また、色々試飲して好みのワインを買えるのもいいですね。

タケダは上山温泉から車で10分足らず。帰り道、7月5日に行われる《やまがたワインバル2015 inかみのやま温泉》の会場へ寄ワインバル会場2.JPGってみました。駅から歩いて上山城を目指します。レトロな町並みだけど、中はスペイン風バルが入っていたりして意外(失礼)に今風。

お城の土産処の女性にお聞きしたところ、当日は"広場"を中心に数箇所の会場で飲食物などのブースが並ぶそうだ。「とってもにぎやかなお祭りですよ」と前売券の販売所や、日よけの帽子を準備した方がいい等親切に教えてくれた。

『ワイナリーを訪ねながら山形旅をしたい。夕食はタケダのワインで。どこがいいでしょう?』多くのお客さまからお問い合わせを頂きます。上山温泉は市の条例により乾杯に上山産ワインを提供しています。飲物リストにもあると思います。温泉とワイン両方楽しめますね。また、山形市のホテルキャッスルでは上山の2ワイナリーを巡る《ワイナリー見学付き宿泊プラン》があるそうです。

山形の夏をぜひ体験しに来てください。

 

ワインたずさえ全国行脚 典子社長出動中

Winery通信 2015 spring Vol.51

雪国山形の冬は農閑期。日常的な畑作業はありません。(雪の重みで樹が折れないように雪払いが必要な時はある。)この時期タケダでは、シードルの仕込み、キュべ・ヨシコの仕上げ、製品瓶詰めと工場の仕事が中心です。スタッフはよく回る独楽のようにクルクルと立働きます。そして岸平社長は出張シーズン。ワイン片手に全国行脚です。

 日本ワインを知ってもらう為、ワイン醸造家たちは色々な活動をしています。例えばフェイスブックでの情報発信は、年間通して行うことが出来る活動です。葡萄が目覚めると畑から離れられない栽培兼醸造家が多く、メーカーズディナーなどは、飲み手の方と出会える冬季限定の機会です。

 以前紹介した『コップの会』―コップで気軽にワインを楽しむ会―が、今年は7都市で開催されます。札幌・東京・名古屋・大阪・広島・博多、そして3月11日は仙台。地方に暮らしていると、普段は紙面でしか見ることのできない人気ワイナリーの人とアイテムが並ぶ、またとない機会です。

 山形ワインフェスティバル『山形ヴァンダジェ2015』は、今年も東京港区"hue plus"を会場に開かれます。山形県の全ワイナリーが一堂に集まるイベント。今年は1社増え、12社のワインを飲み比べながら、山形の食材を使った料理も楽しめる。3月の第二日曜日です。

 地元山形でも、イベントがあるようです。5月下旬、山形駅周辺を会場に「農業とワイン」のテーマのもと、農家と醸造元が集います。併せて、一般参加のワインフェスティバルを開く予定。

 7月上旬は『山形ワインバル2015inかみのやま温泉』があります。上山城前広場を中心に、温泉街を歩きながらワインと食を楽しむイベントです。去年は二千人が訪れました。上山の2ワイナリーと、上山産葡萄100%のワインを造っている県外ワイナリー(昨年3社)、県内ワイナリーも応援にかけつけます。風情ある城下町の中で飲むワインも一興です。駅から歩いて行けるのもうれしいですね。

 特に東京では日本ワインブームを感じるという岸平社長。だからこそしっかりしたワイン造りを心掛け精進しなければならないと言います。

 岸平「日本ワインも輸入ワインも区別なく同じ酒として捉える方が出てきました。なんと、若い世代には、日本ワインしか飲んだことがないという方もいます。このブームが終わってもベーシックな飲み物として根付くか否か、今、私たち造り手は問われているのでしょうね。」

 日本ワインはまだ黎明期。みんなが普通に手に取る日が来ることを願って、岸平典子氏の旅はつづく。

物語を知る 2014年のおさらい

Winery通信 2014 winter Vol.50

 

ボジョレーに限らず、ヌーボー(新酒)は、その年の収穫を祝い、ワインの出来を探る季節行事的飲みものです。その後、時期が過ぎれば普通のワインとして飲まれます。タケダワイナリーでは特別限定醸造ワインがそれに該当しますね。

 酒を美味しくする要素のひとつに『ストーリー』があります。今年の天候は?畑は?手にしたお酒が出来上がるまでの物語を知れば、味わいもひとしお。タケダワイナリーの2014年です。

 

2014年の葡萄はどうでしたか?

岸平「今年は7月の雨が多かったため、盆前収穫の早生(わせ)デラウェアが影響を受けました。その後は天候に恵まれて、中生~晩生のデラウェアと、マスカット・ベリーAやカベルネといった黒葡萄は非常に高品質の果実が収穫できました。」

ベリーAは自家農園に限らずよかった?

岸平「そう、買付け葡萄もすごく良いですよ。2014年、山形県はベリーAの当たり年ですね。果実に触りながらワクワクしました。仕込むのが楽しみでね。うちのベリーA古木も嬉しい程良い出来です。"2014年古木"は特に良くなると思うなあ。カベルネは100%自家農園収穫ですが、これも良い。」

デラウェアは早生と晩生()で差が出たのですか?

岸平「明暗を分けました。早生で蔵王スターを造りますが、今年は収量が少なかった。その上、ワインに仕込む際に葡萄はすべて選果します。例年同様の基準で見て、使えない葡萄が少なくなかった。原料不足です。残念ですが、今年は蔵王スター1.8ℓ瓶はお休みです。晩生はサン・スフル白の原料。傷みも少なく糖がのって酸が落ちず、ほとんどが質の良い葡萄でした。これを持って来ていただいた時は、正直ホッとしましたよ。」

昨年(2013)もデラウェアは大変でしたね。

岸平「あれよりはいいですね。あの時は早生も晩生もありませんでしたから。むしろ、今年のサン・スフルは良年と言える出来です。愛飲家の皆さまにも喜んで頂けると思います。」

 

土地を表現するワインを造るという事は、目前の葡萄に向き合い、ひたすらに醸す事なのでしょう。「蔵にこもっててあまり人と会わないから、話し方を忘れてる」と照れ笑いする岸平社長を見て、ただ飲むだけの私が"当たり年"とか言うな!と恥ずかしくなりました。あらためて、ワインは農産物であり、なにものかが祝福してくれた飲みものなのだと思いました。

 

葡萄畑から真っすぐ届けるおいしさ

Winery 通信 2014 autumn Vol.49


タケダワイナリーではこの夏から、全商品をクール便取扱いとしました。運送会社のクール便厳格運用により発送が制限されるなか、その理由は?

サンスフルとブドウ.JPG岸平社長「当社ワインの性質上必要だと判断しました。私達は葡萄の自然な味わいを大事にしたワイン造りをしています。添加物や人工的な手の加えが極力少ない、または入れない商品ばかり。その結果大変デリケートな仕上がりで、輸送中の温度にも影響を受けやすいのです。お客様にワイナリー出荷時の味をそのまま召し上がって頂きたい。それには温度管理が欠かせません。」

確かに、タケダの売店で買う蔵出しワインは美味しいと思います。かなり昔の話ですが、土産物屋の店頭で日光浴した蔵王スターワインを買ってガッカリした事がありましたよ。

岸平「それは極端な例でしょうけど(苦笑)。

酸化防止剤が少ないので酵母が緩やかに仕事を終える。澱引きしないので、そのうま味が抽出される。ワインは生きものですから。あるインポーターが『ワインは刺身と同じように扱うと良い』と話していましたが、その通りだと思います。」

岸平社長は酸化防止剤を使用する場合でも、醸造の教科書よりずっと少ない分量だと聞きました。もし、教科書通りに、一般的な使用量を用いたら扱い易いワインになるのでしょうか?

岸平「う~ん。取扱いは楽になるでしょうが、味は変わってしまいますね。まず、口に含んだ時の広がり、変化していく余韻はあまり感じなくなるでしょう。」

ウレシクナイ話だなあ。IMG_1884.JPG

岸平「例えば"サン・スフル"は無ろ過・非加熱・無添加の生詰ワインといった商品ですが、瓶中で発酵し続けているため瓶内圧力
が高く、栓を開ける際に吹きこぼれが起きたりします。せめて、瓶詰の際に澱引きすれば、もっと開けやすいワインになるかもしれない。でも、夏を越えたサン・スフルが一段と美味いのは、澱から出る旨味のおかげなのですよ。」

サン・スフルは熱心な愛飲家のいる人気アイテムであるが、同時に《こんなに吹くと思わなかった》とお叱りの声も頂戴している。瓶首に掛けた注意書きも、思う程効果ありませんね。

岸平「サン・スフル ロゼは特に...。造るのを見合せようかと思ったりします。あの味は、どうしてもあの造りのワインにしか出せませんが、ご不快な思いをなさるお客様もおられて。」

熱烈なファンはどうなりますか。毎年楽しみに待っておられます。

IMG_1894.JPG岸平「予想外の噴出事故を減らすため、試みに販売方法を変えます。"サン・スフル ロゼ・発泡"に限り、今後はインターネットでの注文はお受けできません。電話注文か売店での対面販売のみとさせて頂きます。」

事前に説明してご理解いただくのですね。効果を期待します。もし、それでも心が折れてしまった時はウチの分だけでも造って頂きたいと思います。

改植穴掘り体験記

Winery 通信 2014 summer Vol.48

GW期間の4月29日、休日返上で植替えをすると聞き、タケダワイナリーを訪ねました。

長靴に割烹着、帽子と園芸用手袋のいでたちで午前9時頃タケダに到着。今日は社屋に隣接するシャルドネ畑の改植。スタッフは段取が済み作業を始めたところでした。

これが苗木だ.JPG「まず、苗木を見せましょうか。」と岸平社長が冷蔵倉庫に案内してくれました。苗木はどれも接木(つぎき)これには理由がある。

岸平 「フィロキセラというアブラムシがいます。葡萄の根や葉に付き枯らしてしまう害虫です。元々アメリカに生息する虫でしたが、19世紀、米国原産の葡萄を仏国に輸入した際一緒に持ち込まれ、欧州の葡萄畑が壊滅的被害を受けた。この虫に耐性がある米国原産のブドウ品種を台木(接木の根部分)にして欧州品種を接木すると、この虫に負けずに育つことが判り、以降この方法になりました。」

 日本でもそれに習って米国原産種の台木を使う。

岸平 「穂木(ほぎ・接木の上部分)は、自社の樹から採って作っています。」

自社樹の一年枝を2月に採取、苗屋さんに渡し指定した品種の台木に接いで育苗してもらうのだそうだ。その日見せてもらったのは、穂木を渡してから1年2ヵ月経て帰ってきたもの。

岸平 「地熱が適温より高くなってしまうから、春の連休前に植樹は終わらせろ、と先代(父)は言ってたけどね。近頃は4月一杯でギリギリ何とかってトコロ。」農事日和.JPG

快晴の農事日和。物差し代わりの細竹、鍬、スコップと各自役割に応じた道具を手に働く。元気な樹はそのままに、弱った樹は植替え、樹の間が抜けている場合は植え足す。皆さんに気使われ、私は穴掘りの必要な所に印を付ける軽作業となった。簡単そうだが実際にやってみると難しい。樹と樹の間を1mにせよと指示されたが、既存のブドウ樹が1m間隔とは限らずズレが生じる。第一、どれが残す樹で、どれがアカン樹かが見極められない。自ずと慎重になりかなり遅い。且つ不正確な目印である。ああ、とんだ足手まといだ。

穴掘り.JPG居たたまれず午後はスコップ隊に編入してもらう。穴は30㎝の立方体に堀り、底は真ん中を高く山型にする。『丸穴は生長の時に根が廻って絡んでしまう。角の立った四角にするのが肝要』とのこと。

土に立てたスコップの上辺を思いきり踏みつける。表面は少し硬いが、下は想像したよりも軟らかい。これなら根っこもさぞ伸びるだろう。親方の志田さんは見事な四角穴をサクサク作るが私はなかなか四角にならず角丸になってしまう。これが正しい四角穴.JPGのサムネイル画像時折強い風が吹くなか、和やかに賑やかに畑を進んで行く。ケーンと甲高く鳴くキジが同じ畑の先に見える。明日は体が動かないかもなあと思いながらも、何と気持ちの良いことか。

植付け用穴は2人の印係と6人の穴掘り係で200個以上出来た。午後5時過ぎ「今日はここまでだな。」と親方の声で作業終了。苗木は明日植えるそうだ。お疲れ様でしたと皆さんに声をかけて頂き、お世話さまでしたとご挨拶したが、本当は"すみませんでした"じゃなかろうか? 帰ったら念入りにストレッチしなくちゃ。

 

テーブルワインはコップ酒で?

Winery 通信 2014 spring  Vol.47

秋の収穫から仕込みが一段落する年末まで、醸造家は蔵を離れることができません。毎日醸造タンクの様子を見る必要があるからです。年明けから雪解けの3月までが出前仕事(出張)の多い季節になります。社長の岸平へお話しを聞きました。

 img-319191106-0001.jpgのサムネイル画像岸平「私たち醸造家はより美味しいワイン造りを目指して共に学ぶ場を設けています。並行して、カジュアルにワインを楽しんで頂くための活動もしています。」

菅井「どんな活動を?」

岸平「名付けて『コップの会』。テーブルワインは気楽にコップで飲もう!という提案です。ワインはグラスでまずテイスティングをするのが《本当の》飲み方だと思い、難しいとおっしゃる方がいますが、必ずしもそうではありません。それにお箸を使う和食に脚のついたグラスは使いづらいでしょう。」

菅井「ハイ。洗い難いしで、実は私、普段はチューリップ型のタンブラーで飲んでいます。」

岸平「私も含めワインを造っている者は、コップ派が多いんですよ。確かに、是非にもワイングラスで味わいたい本格派は有るけど、テーブルワインはもっと簡単に楽しんでもらいたい。美味しく飲めるコップを紹介しつつ、各ワイナリーお勧めのワインを実際に味わっていただく企画です。2011年2月に発足!?しました。」_MG_0072.JPGのサムネイル画像のサムネイル画像のサムネイル画像のサムネイル画像のサムネイル画像

菅井「どのように行われるのですか?」

岸平「主催者は、趣旨に賛同してくれた各地域の酒屋さんです。一般のお客さんに参加していただき、コップでワインを飲んで美味しいものを食べながら、私たち造り手とワイワイ楽しんでもらうのが基本です。

今年2月に東京で開催した時は、"飲み会"を三会場設けてもらい、6件の醸造家が二人一組になって、1時間ずつ各会場を回りました。お好み焼き屋、ビストロなどいずれもカジュアルなお店です。評判が良くて、今年は名古屋・博多・札幌・仙台でも行われます。」

菅井「全国ツアーですね。」

岸平「はい。私たち『コップの会実行委員会』(※注1)も盛り上がっています。」

どんなコップが良いのか教えてもらいました。唇に当たる感覚が味覚を大きく左右するので、うすいガラス製が望ましい。色を楽しむ点では劣るが、磁器も悪くはないそうです。金属製は金気の味がしてしまう為、できれば避けたいところ。私は以前百貨店でワイン用タンブラーを探したのですが、輸入ブランド品1個¥6000以上と高価で手が出ませんでした。今回、非常に薄いコップが日本製にあると聞き早速購入。うすはりオールド300ml1個¥1700。確かに薄く軽いです。クリアな硝子は色も映えます。持った感じは水を手で受けたよう。口当たり柔らかく、スーとワインが入って来る。これは美味い!器でこんなにも味が違うのか。もう少し小振りな方が香りを味わえるかな。重ねて収納できる点もいいですね。スグレモノのうすい硝子コップ。これから長い付き合いになりそうです。

写真/土居麻紀子

 ※注1 : 興味のある方は『コップの会』フェイスブックhttps://www.facebook.com/kopwineにいいねしてね!!

2013年をふりかえる

                                            Winery 通信 2013 winter  Vol.46

また、この季節がやってまいりました。新酒を口に出来るこのしあわせ。今年はどんな味かな?と過ぎた春や夏を思い出しながら飲むのが、いちばん贅沢な夜長でしょうか。

社長、今年はどんな案配だったでしょう?

岸平社長「今年は大変だったあ。7月は雨ばかりで早生種のデラウェアが打撃を受けました。果実の成熟期に過剰な雨を吸い上げ実割れが続出した。下のグラフをご覧ください。山形市の今年7月の降水量と、7月の過去30年の平均降水量を棒グラフに表したのですが、今年の降水量の多さに驚かれると思います。

降水.jpg

山形地方気象台HPよりデーター取得

「仏蘭西にいた頃何度も耳にした『(葡萄の)悪い年ほど造り手の力量が問われる』のがここだと思って、最初の作業である選果からかなりナーバスになりました。選果だけで例年の4倍の時間と手間が掛かってしまい、搾り終わりが深夜2時だった時も。"今年のサン・スフルは造れないから"とウチの営業に宣言したのが、今シーズン仕込み始めの言葉になっちゃった。」

 えっ!?それは困るなあ。

「そう。"社長それは困ります"と。そこで、何とかサン・スフルを造る為の方策を考えた。葡萄の品質低下を防ぐため、農家にお願いして、割れている実は畑で落としてもらいました。傷んだ実は極力持ち込まない。そのうえで厳しい選果と、細心の注意を払って醸造し、2013年サン・スフルも造る事が出来ました。」

デラ選果4.JPG今年ほどチームの力を感じた年はない、と(珍しく)目を潤ませて語る岸平社長。農家の方に協力いただけたこと。連日夜遅くまで作業が続いても、嫌な顔せず働いてくれたスタッフ。その中には主婦もいる。「本当に頭が下がりました。社員の家族も含め、みんなの力があって造る事が出来たワインです。」

 晩生の黒葡萄(マスカット・ベリーA、カベルネ・ソービニョン、メルロ、ブラック・クィーン)に関しては、色付きや糖度、酸味ともに例年通りの分析データが上がっているそうです。

こちらは取材に訪れた10月末が仕込みの真っ只中でした。人に同じ日が廻ってこないように、ワインも同じ味の年はないのだなあ、と改めて思う2013年の初冬です。

新ラベルの謎を探る

Winery 通信 2013 autumn  Vol.45

この夏リニューアル発売のタケダワイナリー《アストール》《樽熟成》のボトルラベルには、正直ちょっと驚きました。ご覧になった方々には「おおむね好評です。」とのことです。今回は思いきったイメージ・チェンジにまつわるエトセトラ。

お話しは岸平典子社長です。

IMG_1823.JPG

岸平社長「当ワイナリーの商品は2シリーズに分かれます。自社畑を原料にした『ドメイヌ・タケダ』と、山形県産葡萄の『タケダワイナリー』です。

店頭に並んだボトルを見て、どちらの商品か判るようにしたいと考えています。今回ホームページを新しくしたのを機に、ボトルデザインも順次見直しをかけることにしました。」

 数年前と比べワインの味わいが変わってきています。(筆者)

「今は栽培・醸造ともに人工的な作業を減らし、自然派をはっきり意識した造りになっています。『こういうワインを造ろう』と意図した方向に造り込むのではなく、葡萄に寄り添うような醸造方法をとっていますから、ワインのタイプは変わりましたね。」

 デザイン変更にはその辺も関係があるのですか?

「ボトルを見てどんなワインかイメージが伝わるといいなと。ラベルは商品の顔です。」タケダワイナリーを知らない方との出会いのきっかけになるかもしれませんね。昔レコードの"ジャケ買い"したのを思い出します。

「バル、ビストロなどのお店でボトルのままお出しできると喜ばれているようです。うちのは見かけがグラス・ワイン向きと言われていたもので...(苦笑)。

《樽熟成》は蔵王スターの流れを汲んだデザインにしています。」

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具体的なデザイン・コンセプトも教えてもらいました。

「《アストール》は仏蘭西語で「星・天体」。そこから「乙女座」を指し、「美女」の意をなすようになった。瓶ラベルに描かれている点点は星、丸いのは月を表しています。金色の点点を繋ぐと乙女座の形になると―やってみた事はないけど―聞いています。また、《白》は昇りはじめ、《赤》は天空の月です。《白》を左≪赤」を右に並べると月が動いていく様がわかります。」なかなか乙女心をくすぐる話しですね。ボトルを眺めながらゆっくり楽しんで飲みたいと思います。

ワイナリーを支える〈ラテン系〉働き者集団

Winery 通信 2013 summer Vol.44  

荷造り2.JPGおそい季節の訪れで遅れがちだった農作業が急ピッチで進められている山形です。むせぶような緑の中、ここタケダワイナリーでもスタッフがおおわらわで汗を流しています。15haの自社畑を有し年間30万本(720ml換算)を生産しているタケダは中規模ワイナリーになりますが、社長も含め総勢17名と少ないスタッフで操業しております。農作業・工場・事務・営業をこの人数で、ですからそれは忙しく、皆よく回る独楽のように働きます。今回はそんなタケダスタッフについて教えていただきました。

まずは現場責任者・岸平典子社長。畑作業が一番好きだと云うあたりは先代譲りで、剪定鋏にこだわる職人気質です。夫・岸平和寛営業部長は、営業&経理&総務&人事を担当しています。工学修士(博士課程前期を修む)の元市役所技師職員は、工場の機械修理もお手のものです。当然畑も出ます。関東方面の営業担当なので各種イベント会場に「よく居ますよ」。尚、フェイスブックも彼です。社長と部長を除くスタッフ15名は、「事務方」「現場方」で編成されています。 

事務1.JPG「事務方」お客さまのご注文を承ったり、資材管理、発送手配などを行う事務員が4名(内1名は現在産休中)。平日のワイナリー見学案内も彼女達の担当です。それに営業が1名、パートタイマー2名。お客さまにわかり易い案内が得意な人や、酒屋での販売経験がある人、工業高校で化学系を修め、葡萄や醸造工程での分析も行う人とバラエティ豊かです。地元東北を担当するベテラン営業マンは兼業農家。農事に通じているから話しの説得力が違います。

現場1.JPG「現場方」自社畑の葡萄栽培から醸造、工場までを担当するのが8名。配送担当者もこのチームです。植樹、新枝の誘引、草刈り、防除、葉や実の間引き。収穫は外部の助けを借りますが、農作業だけでも結構な仕事量です。それに農事は時期が大事。工場で"急ぎ瓶詰め"があっても、畑を後回しにはできません。その場合は、2班に分かれて工場と畑の同時進行です。エネルギッシュに明るくガシガシ仕事をする様子は"ラテン系日本人"といった感じ。こちらも個性派ぞろいで、親子二代のタケダ社員、プロ庭師、調理師と美容師の免許を持つ人、元建具屋、元ソムリエ等々多彩な顔ぶれです。4月~11月の休日出勤当番は全社員による交替制なので、全員がお客さまをご案内し、ショップに立ちます。現場サイドからご説明する見学案内も評判は上々だとか。

社長「毎朝、全員でミーティングを行います。情報を共有する事で行き違いによるミスが無くなり、手の空いた人が迷わず次の仕事に掛かれます。忙しい時は事務方が工場に入るし、営業も畑に出ます。とにかく骨身を惜しまず働いてくれる人ばかり。まさに"有難い"ことです。うちは"全員ヴィニュロン"を目指しています。」

[ワイン編]県産ベリーAと自社ベリーAの違いを探る   その2

 Winery 通信  2013 Spring vol.43

前回、大雑把ながら果実の違いを知りました。自社畑の方は色付きも良く、味が濃いそうです。醸造したワインは、県産がチャーミングな"赤い味"、自社畑はどっしりした"黒い味"と、其々に個性を表します。では、造りの違いを見て行きましょう。

スタースフル古木2.JPG 厳しく選果された葡萄は「除梗機」に入れ、房から茎を取って実だけにします。皮・果肉・種丸ごと全てを仕込んで赤ワインにします。

 社長「色々な仕込み方があってね。うちも以前は破砕して果汁が出易くなった実を使っていたけど、今は房から外しただけのホール(丸ごと)を仕込みます。雑味の無いよりクリアな味のワインが出来ます。」

 醸造工程は次の通りです

表.jpg

  県産葡萄から造る「タケダワイナリー」シリーズは樽使用の商品がありませんでした。この度、2011年収穫で「タケダワイナリー・ルージュ 樽熟成」「タケダワイナリー・ブラン 樽発酵」の2アイテムを醸造、発売の運びとなりました。これは東日本大震災復興応援"しずくプロジェクト"としても用いられたワインです。弊社リリースの前にお口にされた方もいらっしゃるかもしれません。

樽1.JPG

ベリーA100%の白ワインはタケダ初。ゆるく搾った果汁を直ぐ樽にいれ、発酵させる造り方はシャトー・タケダと同じです。

 県産葡萄、自社畑、どちらも心を込めて造っています。キャラクターの違いをお楽しみ頂ければ幸いです。

[果実編]県産ベリーAと自社ベリーAの違いを探るその1

2012.冬

 扇風機にあたっていたら後ろからそっと近づき「わっ!!」とやられたような気がする今年の秋の訪れでした。"初秋"無く、晩秋のち冬の山形です。

 タケダでは自家栽培の原料のほかに、デラウェア種とマスカット・ベリーA種は協力農家さんから買付けた葡萄も使用しています(デラウェア種は自家栽培なし)。自社畑は「ドメイヌ・タケダ」、山形県産葡萄は「タケダワイナリー」各シリーズの原料となります。それらは何がどのように違うのか、知りたい。この度はここをじっくり探検します。


社長 「自社畑は自然農法。有機栽培認定野菜にも使用可能なボルドー液(抗菌剤)を基本とした防除を 行っています。植物の多様性に富むストレスの少ない土である―というのが、第一の特徴。」

果実の違いを簡単にまとめてみました。

  自社マスカット・ベリーA 県産マスカット・ベリーA
樹 齢 70年
タケダで一番古い品種。(一部改植あり)
約20年
通常20年ぐらいで植替える。
10アールあたりの果実収量 1トン以下 約1.8トン
一般的に2トン程度の収量がひとつの目安といわれる。ところによっては3トン収穫もある。 仏国は国で、品種によって収量上限が決められている。役所によるチェックも行われ、違反には罰則もある。
糖 度 20度以上 18度以上
仏国は国の基準あり。
収穫期 10月15日以降(今年は10/17、19) 10月第1週 遅くとも2週初め頃

社長 「並べてみると県産葡萄の基準があまいように見えますが、全く違います。タケダの要求は厳しく、農家の方々には大変な協力を頂いています。収量と、糖度、収穫時期は密接な関係にある。結実したら早い段階で摘房し、1本の樹に生る葡萄の数を少なくして、ひと房を充実させる。さらに糖度を高めるため、ギリギリまで樹で熟成させる。自社畑はもうひと押し"到熟"させてやっと収穫。「でも収穫期を遅らせるのはリスキー。秋の台風や長雨が心配されます。下手したら商品にならない。自分の畑ならいざしらず、ひと様にそこまでのリスクは背負わせられない。」それでも糖度が18度以上になるまで収穫を待ってもらう。仕込みの際の選果はどちらも同じ。タケダのベテランスタッフが厳しくチェックします。」


vol42.jpg 社長を含めたおばちゃんトリオがパワフル&スピーディに行う。 にぎやかなその様子に、男性スタッフは近付きたがらないらしい。
  醸造過程にも違いがありましたが、次回【ワイン編】でくわしくお伝えします。今日は耳よりのお知らせをちょっとだけ。
  ベリーAの樽熟成は「古木」のみだったが、地元業務用酒販店の依頼を受け、飲食店向けに2010年収穫「サン・スフル赤 樽熟成」を造った。これが上々の出来上がり。
  尚、「サン・スフル赤 樽熟成」は一般の販売はありません。下記掲載の山形のレストランで飲むことが出来ます。


「タケダワイナリー サン・スフル赤樽熟成2010」の飲めるお店
 ※詳細は各店に直接お問い合わせください。

vol42_02.png■C'estquoi?
 山形市本町2-1-48
 TEL.023-666-7712
■酒菜一
 山形市香澄町1-7-7
 TEL.023-641-0255
■ビストロ・オジェ
 山形市香澄町1-9-11VIP本田館BF1階
 TEL.023-625-6533
■トラットリア・ピッツェリア・ボーノ
 山形市七日町2-3-16
 TEL.023-624-5090
■ダイニングバー グルーム
 山形市城南町1-1-1 霞城セントラル24階
 TEL.023-645-1488

Winery通信 Vol.42

畑でのたたかい

2012.秋

 人の世が大変であっても季節は巡り、今年も実りの季節が来ました。  初夏の長雨に頭を痛めたものの、しっかりと暑い夏だったおかげで今年も良い葡萄が収穫できました。赤・黒ブドウの収量は例年より少なめですが、質の高い良い果実です。美味しい赤ワインが造れると気合が入っている岸平社長に話を聞きました。


 盆前にタケダワイナリーを訪ねた。畑ではスタッフが暑さとの戦いだが、敵は他にもあるとのこと。「まあ、栽培の敵は主に4つかね。季節の順に話しましょう。」と、やはりバテ気味の岸平社長は言うのだった。

社長「雪が融けて春になると虫が出てくる。その中には葡萄の新芽を食べる害虫もいるが、うちでは殺虫剤は使いません。見つけ次第"手"で駆除します。もし、特定の一種(虫)が大量発生したら困るけど、大抵の場合、これをエサにする天敵が追っかけ発生して、数が減っていく。薬を使うとそれに耐性を持った性質の悪い虫になる恐れがあります。」

 ちなみに、害虫を捕ってくれるので蜘蛛はありがたいそうです。

社長「虫と並行して勢いづくのが雑草。作業の邪魔になるが、畑にとって悪い事ではなく、むしろ必要と考えています。農作物の"連作障害"は知っていますか?一つの所で同じ作物を作り続けることで、土の成分が偏ってしまい上手く育たなくなる。農家は畑の野菜植付け場所をローテーションさせて防ぎます。果樹畑はそれができない。土の改良も行うが、多様な植物が存在することが望ましいのです。また、雑草は虫に対しても有益です。梅雨前に土中のダニが上がって来て葡萄の新芽を食べるんですが、ちょうどその頃、カラスノエンドウがぐわぐわ伸びます。ダニは軟らかいカラスノエンドウの新芽を好む為、葡萄に来なくなる。梅雨明け頃の害虫ヒメゾウムシにはギシギシ。タケダの草刈りは年2回だけ、春の終わりと夏の終わりに行う。足元が滑る急斜面の作業は大変です。」
「梅雨はベト病があります。菌の一種で、畑の一部でも発生した場合、雨を介して瞬く間に広がります。これもウチでは合成農薬はできるだけ使用せず、有機栽培認定でも使用可能なボルドー剤を散布します。菌を殺す薬ではなく予防剤なので正直弱い。効果を上げるには散布のタイミングをみきわめるのが重要です。」
「収穫期最大の敵はムクドリ。シャルドネ種等の白葡萄を好み、"垣根仕立て"が狙い易いようです。収穫が近付くと2~3羽が繰返し偵察に来ます。そして最も美味しい時、私達が収穫日と決めた日の早朝に、群れでやって来て2~3時間で食い尽くしてしまう事も。ヴィオニエ種が全滅した年もあります。以前は防鳥ネットで畑を覆っていましたが、使用後は大量のゴミになり、良くないと思い止めました。今は、ムクドリがエサ場と認識する前、葡萄の実が青いうちから、『バード・ガード』を鳴らします。これは音による鳥撃退器で、"鳥が首を絞められている声を再現し流す"と説明書にあります。米国製です。鳥がギャーと叫んでいる様な音なので、うちのスタッフは『ギャー助』と呼んでいます。その他釣り糸のような"防鳥糸"を張るなど、工夫しながらやっていますが、なかなか手強い。」

 ほかの葡萄栽培家と情報交換をしながら、地球に負荷の少ない方法を探りつつ、日々戦っているタケダワイナリーです。

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Winery通信 Vol.41

林檎のお酒の造り方

2012.夏

vol40_02.jpg 初夏の空色は、何だか誘われて川辺や野山に出向いてぼうっとしたくなります。幸い山形にはそういう場所がいっぱい。秋の芋煮会が学校行事にも組込まれている土地柄、上水道ご不浄完備の河川敷が自由に使えます。高原のキャンプ場もあります。自然の息吹を感じつつ飲むのもいいものです。

 ここフルーツ王国山形は、りんご出荷量が全国第4位。「サン・スフル シードル」は、フランス北部の伝統的な"林檎のワイン"を、山形県産りんご100%原料に無添加・非加熱・無ろ過で造った自然派のお酒です。フルーティで優しい味わいは、どうやって造られているのでしょう。
 
(1)林檎を洗う
水を掛けながら長いブラシの間をコロコロ 転がして洗う、専用の機械で行います。

(2)選果
ナイフを片手に林檎の傷みを徹底して 取り除きます。葡萄酒同様、味を左右する大事な工程です。

(3)クラッシャー
機械で林檎を破砕。皮ごとすりおろした 状態になり、そのままプレス機に入れられます。

(4)搾る
皮や種の味を果汁に出すため、プレス機の 中で少し置きます。搾った果汁はタンクへ。

(5)澱を下げる
タンクのなかで一晩休ませ、澱(固形物) を下げます。

(6)発酵開始
上澄みを別タンクに移し、発酵をはじめます。

(7)醸し
厳しい温度管理のなか、果汁の糖分を 測定しつつ発酵がすすむのを待ちます。

(8)瓶詰め
液中の残糖が一定の基準になったところで 瓶詰めです。

(9)熟成
地下セラーで寝かせる。瓶中では酵母が 糖分を分解し、炭酸ガスを発生させながら熟成がすすむ。3~4ヶ月かけて糖はすべてアルコールに変わります。シードルが出来上がりました。

 
 工程は基本的に葡萄と一緒ですが、果実の特徴が異なる分、「勝手が違う」そうです。例えば搾る際、林檎は繊維が多くスポンジの様に果汁を保つため搾りにくい。葡萄は発酵過程で果汁中の色素も分解されるが、林檎はそれがない(だから赤ワインは皮も一緒に醸して色・風味を出す)。林檎は葡萄に比べ糖度が低いので、アルコール度も6~7%と高くありません。ちなみに、タケダの葡萄酒は11%。強いお酒は苦手な方も、シードルなら飲みやすいかもしれませんね。原料にするりんごの品種選定も含め、試行しながらもっと美味しいお酒を造りたいと努めています。葡萄酒同様、ご愛飲下さるようお願いいたします。

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Winery通信 Vol.40

大雪を辛抱、春よ来い

2012.春

 山形の大雪が全国ニュースで流れた冬でした。しかも珍しいことに山形市が。例年は、県内でも豪雪地帯である最上地方や置賜地方の映像を見て私達も慄くのですが。やあ参りましたよ。市街地での大雪は、雪をかたづける場所もなく街中マヒ状態。特に2月2日の降り方は酷く、1時間に10cmのペースで降り続けあっという間に町全体が雪に埋もれていきました。至る所で自動車がつっぱえって大渋滞。車がスタックすることを山形弁で"つっぱえる"と言います。

 農業への影響も大きく、ハウスの倒壊や果樹が折れるなど深刻な被害が出ています。そんな中、当ワイナリーには全国からお見舞いの言葉が寄せられました。ありがとうございます。

 そんな冬の一大作戦は"サラドコギ"です。自社畑で棚作りなのはベリーAとブラック・クィーンですが、樹に積った雪をほったらかすと重みで潰れてしまう為、雪を落とさなくてはなりません。

 全く除雪していないまっさら、真白な雪の畑に踏み入り、上を向き棒で棚を叩いて行きます。「雪の更地をこぐ(歩く)」様子から"更土漕ぎ"と呼ぶのではないかと思われます。(私はもちろん当のスタッフもタケダ以外では聞かない言葉)今シーズンは2月10日までに3回も行いました。10人のスタッフが約2haの急斜面で格闘、午前中で何とか終わします。「膝はカクカク腰から下はだるくて、午後の仕事が大変になる。」そうです。「今年は気温が低く、雪がサラサラと軽かったから比較的楽だったけどね。」

 岸平社長によるとサラドコギの回数が多かった年は葡萄の出来が良く「当たり年」になりやすい。1シーズンに3回は新記録だそうです。期待しちゃいますね。

 いつもより寒く雪も多い冬だからこそ出来る事もある。やはり冬期の重要な仕事のひとつ"キュベ・ヨシコ"の澱引きは、気温が低い方がやり易い。「もうひとつ今年のニュースとしては」と社長がこんな話をしてくれました。

 「豊作だった2011年収穫ベリーAが良いワインになったので、"蔵王スター赤"の一部を樽に入れて冬越ししてみました。初の試みです。これがね、どうなっているか楽しみなんだ。」いいですねぇ。

 厳しかった冬の後に訪れる春は、また格別です。今年は桜の開花も遅れそうだと気象台が予想しています。でも、輝く春は、必ずやって来るのです。

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Winery通信 Vol.39

おとなの辛口発泡ロゼ"登場"

2011.冬

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  タケダワイナリーでは今年マスカット・ベリーAが豊作でした。天童市の協力農家の皆さんが豊作にしてくれました。気候の点では厳しい年だったそうです。
「花ぶるいといって開花の頃に寒くなったり、その後長雨によるベト病(カビ)が発生したりと気の抜けない年でした。手を掛けて育ててくれたのだと思います。」

その結果、質量ともに実り多き年になった。天童産のベリーAは『サン・スフル赤』の原料だ。実はこの季節、岸平社長には、毎年思っても叶わない事案があった。

  社長 「赤ワインは完成品も勿論美味いけど、仕込み過程で非常に美味しいタイミングがある。それはロゼになった時です。」

----どういう事でしょう?素人の私にも理解できるようお願いします。

  社長 「まず基本から。ロゼワインの造り方は以下の3通り。」
① 黒葡萄を丸ごと搾ると、果汁がピンク色になりそれを仕込む。
当社『アイスワインロゼ』がこのタイプ。
② 白ワインと赤ワインのブレンド。仏国のシャンパーニュ[ロゼ]が代表的。
③ 赤ワインと同様に果汁と皮・種を一緒に仕込み、途中、赤になる前(ロゼの段階)で瓶に詰める。
「今回この③の方法で『サン・スフルロゼ』を造りました。」

  社長 「赤ワインの発酵中の香りと味がとっても良くて、前々から『これうまいずねぇ』と醸造担当スタッフで盛り上がっていた。皆様にもこれを味わって欲しいなと思っていたのです。

しかし生産量の関係上、赤を減らしてロゼの製品化はできなかった。そんなところに吉報が。この豊作なら赤を減らさずともロゼが出来る!

  社長 「ロゼとして一番おいしい点を探って造りました。」

社長が差し出した一本は、金色の王冠を被り華やかで愛らしい色の...アレ赤いぞ。

  社長 「いや、間違いなくロゼです。うまいです。」
 
----私の眼には赤く見えますが?

  社長 「実はスタッフの中でも『赤過ぎるのじゃないか!?』という意見も出たんだけどね。」

複数のサンプルを用意しテイスティングした結果、満場一致で選ばれたのは、一番赤いロゼだった。理由はただひとつ「ウマイ!」―タケダワイナリーはそういう所だ。
"蔵人しか飲めなかったワイン"をこの冬皆さまにもお届けいたします。ぜひご賞味下さい。

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Winery通信 Vol.38

自然の力を引き出す農法

2011.秋

 人の世が大変であっても季節は巡り、今年も実りの季節がきました。
 初夏の長雨に頭を痛めたものの、しっかりと暑い夏だったおかげで今年も良い葡萄が収穫できました。赤・黒ブドウの収量は例年より少なめですが、質の高い良い果実です。美味しい赤ワインが造れると気合が入っている岸平社長に話を聞きました。
「葡萄畑は20年サイクルと言われています。植えて3年目頃から収穫ができ、20年ぐらい経つと樹の力が弱まる。そこで新しい樹に植替えが必要になります。父の植えた葡萄が、欧州品種も含めてその時期を迎えており、毎年苗木の植え替えを行っています。」


----植えるのは購入した苗木のほか、畑にある葡萄の木からつぎ木をしてつくった苗を使うこともあるそうです。それもタケダで育てるのでしょうか?

  社長 「いいえ。しっかりした苗木が必要ですから、その道のプロにお願いします。実は小学校から高等学校まで一緒だった友人が家業としていましてね。相談に乗ってくれるし、そこに依頼して。」

----苗木も上山育ちなのね。植樹の時期はいつ頃ですか?

  社長 「毎年春先の仕事ですね。雪が消え地熱が上がってきて、暑くなる前。4月中旬~4月末の2週間、ギリギリ粘って3週間弱。誘引と同時期なので大忙しですよ。」

----今年の植替えはできました?

  社長 「今年の植樹は例年より多く約2,000本。そのうち700本は新しい畑に『ピノ・ノワール』種を植えました。実を言うと"タケダ植樹祭"を計画していたのですが、3月の震災があって中止しました。お世話になっている酒販店やレストラン、愛飲家の方をお招きして、新しくピノ・ノワール畑をつくろうと企画を進めていた矢先の事でした。幸いにも当社は大きな被害はあまりありませんでしたが、新幹線も止まり、山形でもガソリンが手に入らないなどいろいろあったでしょう。うちのスタッフだけで全部植えました。」
「ピノ・ノワール種は父と1999年に試験的に50本を植えて、収穫時期などを探りながら栽培していた。ようやく美味しく造る勘どころも掴めてきて、本格的に取り組もうと畑を拡張しました。苗木はこの50本からつくったものです。」

----なぜ敢えて"植樹祭"にしようと?

  社長 「自分で植えた葡萄で造ったワインはまた違った味わいがあるかなとね。体験すれば、飲むときに畑や風や土・草の匂いも想い出して一緒に楽しめる。」

----それは贅沢で幸福なことです。以前、半年間アルバイトをさせて頂いた私がそうですから。ところで、どんなワインを造るかもう決めているのでしょう?

  社長 「ロゼの発泡酒。キュベ・ヨシコのロゼをつくる予定です。」
 
オオオそれは!首をなが~くして待っています。

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Winery通信 Vol.37

自然の力を引き出す農法

2011.夏

vol36_02.jpg  東日本大震災、続く福島第一原子力発電所の事故により被災された方々に、心よりお見舞い申し上げます。私もかつて仙台市に8年間暮らしておりました。この衝撃は言葉にできません。あの日から、仕事・生活を通じ私が出来る事をじりじりと行っていますが無力感が募ります。しかし千里の道も一歩からです。必ず供に歩き通しましょう。   ワイナリー通信春号の原稿を書き上げたのが3月11日昼前でした。いのち芽吹く季節を迎え、タケダを通じ自然の力を考えてみたいとテーマを選んでいました。人知の及ばぬ大きな力をこのようなかたちで思い知るとは想像しませんでした。被災地の現状を思うと辛い部分もありますが、やはり大事な話です。皆様に知って頂きたく掲載いたします。

タケダワイン裏ラベルにある『自然農法』とはどういうものだろう。『有機栽培』は国の定めた基準だが、それとは違う。具体的にどういう事か社長に訊いてみた。

  社長 「私達のいう自然農法とは、自然の力を最大限に引き出すため、人間が手を貸しつつすすめる栽培方法です。」

----畑を放っておくのですか?

  社長 「放置とは違う。畑には動植物を巡る自然の循環がある。土中の微生物に始まり、ミミズを食すモグラや鼠・雀、それを狙う猫・トンビ。アブラムシと天敵テントウムシ。そして、命が尽きた動植物を分解する微生物にもどり一周ですね。このサイクルがうまくまわれば、その中で葡萄も逞しく育ち良い実を結ぶ―という考えです。」

----ああ、田舎育ちの私には感覚的に解ります。では、どうやって人が手を貸すのですか。

  社長 「そもそも"畑"は不自然なのです。開墾し、邪魔な草を除いて毎年同じ作物を作る。単一化することで効率よい農業を進めてきた。でもそれは土にとって大変なストレス。雑草も虫も含めた種の多様性が"自然"なのです。とは言え、天に任せてばかりもいられません。例えば草が伸び放題で風通しの悪い畑にならぬよう草刈りをする。梅雨に繁殖するカビ等菌に対しては有機認定をとれるボルドー液などを施しますが、これもかなり少ない回数です。」

ワイン造りも小さなサイクル。果汁の中で酵母が糖を食べ発酵し酒となる。酵母も一種類とは限らない。良いワインを造ってくれるのも、都合の悪いのも存在する。各酵母が活発になる条件の違いもあり、醸造時は目を離せない絶妙なバランスで成り立つ。

  社長 「1.環境を崩さず壊さず100年後も農業ができる事。2.ワインは地の恵みの飲み物であるがゆえ、自然循環が良好な土地の葡萄こそが、より地の味をもたらす。以上が私の信条です。可能な限り畑で付いた酵母で醸造したい。人工的なアイテム(糖や酵母)を加え管理すると計算通りの味にはなる。でも、それを越えるミラクルは生まれません。葡萄収穫時に味は決まっている。私はそれに従って手助けをするのです。」

先代から続くタケダの土作り。土のバランスはデリケートで、一度汚されると回復するのに何十年もかかる。

  社長 「うちの畑は他に比べて雪解けが早い。何故だと思います?微生物の活性が高く、熱を発しているからです。ワイン造りは土から始まっています。この土はタケダの宝です。」

Winery通信 Vol.36

2010年をふりかえる

2010.冬

 タケダワイナリーが蔵元創業90周年目の節目。
 気になるワインの出来具合も含めて、今年はどんな様子だったかを岸平社長に伺いました。
「今シーズンはいろいろと例年にないことばかりでした。まずは天候。遅い春の雪、夏の長雨そして猛暑と、かつて経験した事がなく葡萄の管理が大変でした。カレンダー上の作業日程は当てにならず、畑に足繁く通いよく観察して、いま葡萄が望んでいることは何だろうと考えました。見極めて決断し実行する。そんな連続でしたね。「葡萄を信じろ」を信念にワインを造ってきましたが、今回私が学んだのは「自分も信じろ」でした。十六年間の経験の蓄積が支えになりました。ワイン造りは技術もすごく大事です。今更ですが。」 (菅井注:笑いながら答えてくれましたが、秋頃はだいぶピリピリしていた様子でした。)

 早めに手を打ったのが功を奏し、タケダの葡萄の品質は良く、特に黒ブドウ<ブラック・クイーン、マスカット・ベリーA、カベルネ・ソービニョン>は平年より良い出来だそうです。糖度など、分析結果は例年通りでしたが、色・香り・味のふくらみがとても良く、果実の"充実"ぶりが秀でていたとのこと。それは楽しみ!2010年収穫ワインが飲める日が待ち遠しいです。ただ収量は全体少なめで、ワイン生産量は少ないということでした。

 畑に来る動物もいつもとは違った様子。
「うちには熊・猿は出ませんね。カモシカを見かけた時があるくらい。被害を受けて困っているのはムクドリです。鳥はシャルドネなどの白ブドウを好み、一番美味しい時期を知っている。収穫する前日に大軍団で食べに来る。今年は他に餌が無いのか、被害が大きかったです。あと畑によくいるのはキジとお蔵猫。今年はキジの親子連れが多かったなぁ。ミャンマーの研修生がキジをみて驚いていました。」
(注:お蔵猫とは、武田家の蔵下に勝手に住みついている猫。 広大な畑に各々テリトリーを持ち全く自由に暮らしている。 武田家同様何代にも亘る。 現在5匹くらい。)

 NPO法人アジア・ケシ転作支援機構の招きで、夏に研修を受けたミャンマーの農業技術者に続き、醸造責任者が"仕込み"にあわせて来日。10月18日から11月8日の間、タケダワイナリーで頑張っておられた。プラント・マネージャーでもあるチョー・ヘンさん(55)は、日本語はできないが英語が堪能な方で、今回は通訳がついていない。醸造に関する細かい始動もあるなか、英語と仏語と日本語を駆使して岸平社長も頑張った。

 では岸平社長から皆様にひとこと。
「葡萄を作ってくださる栽培家、タケダのスタッフ、販売店、そしてタケダワインを飲んでくださる皆さまに、あらためて感謝する一年でした。 これからも美味しいワイン造りに励んで参ります。 今年もありがとうございました。」

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Winery通信 Vol.35

2010年タケダの夏をご報告

2010.秋

vol34_10.jpg  今年の気象には大変な苦労をされている方も多いかと思います。心よりお見舞い申し上げます。
 滝のような雨が降りつつ、盆までに28日間真夏日が続いた山形。我が家の"猫の(額)家庭菜園"では、トウキビは半分しか実入らず、オクラは生長せずと惨敗です。大葉だけは繁ったので、少量の醤油で漬込みおにぎりなどに活用しました。タケダの葡萄はどうだろう。心配しつつ訪ねました。 vol34_11.jpg
「4月も遅くに雪が降り、萌芽の頃に寒く、7月の長雨。かつて経験したことがない年です。7月になりすぐブドウに病気が出始めました。防除が必要なのに雨が止まず手が打てない。じりじりしながら待って、やっと7月17・18日に休日返上でボルドー液を散布しました。社員の皆が自主的というか、むしろ積極的に出社してくれて一気に終わらせたのが良かった。例年に比べ収量は少ないが、良い葡萄ができそうです。」
 ボルドー液とは殺菌剤として使われる古典的な農薬の一種。使用しても有機栽培の認定を受けることができる数少ない薬だそうだ。葡萄が元気で安心しました。 vol34_12.jpg
「今年の夏は国際交流しちゃいましたよ。」と岸平社長。ミャンマーの農業研修生を受け入れて、3週間一緒に作業をしました。
 ミャンマーにはタイ、ラオスにまたがるケシの不法栽培地域がある。『黄金の三角地帯』と呼ばれ、麻薬の生産拠点として知られているが、現在は国策で果樹などに転作が進められている。研修生は、その葡萄園で働きワイン造りに挑んでいる農業者と通訳、22~65歳の男性5人。vol34_13.jpg 仙台市のNPO法人「アジア・ケシ転作支援機構」の招きで来日、縁あってタケダワイナリーでの研修となった。苗木の植付け方や剪定、防除など社長とスタッフが指導をしながら、一緒に作業する。「ウチでも新しく作付した畑があったので、実地研修するのにタイミングが良かった。」上山温泉を宿にして毎日ワイナリーに通う。
「ミャンマーの方は穏やかでにこやかで、礼儀正しい人達でした。骨身を惜しまず働いてねぇ。作業の合間に歌が出たりして。あれは日本の民謡のような作業歌かな。本当に気持ちの良い方々でした。」とは岸平部長。 一緒に働いた仲間を懐かしむかのような表情で話してくれました。タケダのスタッフ皆も仲良くなって、帰りは自家用車で滞在先のホテルに送って行くことも多かったとか。vol34_14.jpg「研修を終えて帰る時、彼らの国で最も丁寧な"感謝のご挨拶"を頂きました。人手の要る忙しい時期に手伝ってもらい大変助かり、こちらがお礼を云いたいくらいでした。」 次はワイン造りを学び、母国の役に立ちたいとおっしゃっていたそうです。
 ひと際暑い夏に、爽やかな風が吹きこんだタケダワイナリーの2010年・夏です。

Winery通信 Vol.34 

「金星ブドー酒」から「蔵王スターワイン」へ

2010.夏

春号でワイン醸造90年を記念してタケダ創成期をご紹介したところ、思わぬ反響を頂戴しました。 今回は続編をお送りします。

gold_raberu.jpg 武田家四代目・重信が武田食品工場を継いで12年。 欧州系葡萄品種カベルネ・ソービニョン、メルロの栽培に試行錯誤しながら、青果物商も継続していた1974年。 『金星ブドー酒』を製造していた工場が全焼。 工場設備を全て失うと共に、本格派を目指して醸造し瓶内熟成中のワインが灰を被ってしまう。 これがデビュー前の『アストール』だった。 無論、熱を浴びたワインは商品にならない。 それを飲みながら重信が下した決断は「これから家はワイン専業になる。」ことだった。

 火災の5ヵ月後、まだ片付けも終わらぬ中、重信は新工場の青写真を残し2ヶ月間渡欧。 醸造機械を買い付け、仏ボルドーの一級シャトーを訪ね土壌を調査して歩く。 帰国後すぐに自社畑の土壌改良に着手。 化学肥料を一切使わない有機的な方法を用い、数年かけ葡萄栽培に適した土に変えた。 甲斐あって欧州品種の葡萄栽培に成功。 東京農業大学在学時に感銘を受けた"シャトー・マルゴー"級のワイン造りを目指し突き進む。

zao_star.jpg ワイン専業になるにあたり、会社名"武田食品工場"改め、"タケダワイナリー"とする。 『金星ブドー酒』も新たな名前を必要とした。 岸平典子社長いわく「3つの要素から決めたと聞いています。 ①金星、②武田の屋号が"ヤマジュウ"で、それをどこかに残したい。→この地で山と言えば③蔵王。 原料の葡萄も蔵王山麓で収穫されたものですしね。」 ちなみに、『蔵王スター』の発売は1977年が最初。 『アストール』は帰国後すぐ1975年に醸造、5年の熟成期間を経て1980年に発表している。

 ではここで、タケダのトレード・マークにご注目下さい。 キジを冠した葡萄の房です。 社名変更に伴って生みだされました。 自然環境を守りながら営む自社畑には、沢山の生き物がいます。 植物、虫、鳥、鼠、猫。 キジも出勤するかの如く通ってきます。 「この自然の中にあってこそ、真のローカル・ワイン―土地の味が醸せるのだ。」との決意がデザインされたものです。

golden_star_wine.jpg 1989年、重信の長男・伸一が3年の仏留学から帰国。 この年、伸一がボルドー、ロワールで習得した本場の技術も加わり、日本では魁の瓶内二次発酵の発泡ワイン(いわゆるシャンペン)『キュベ・ヨシコ』を製造(1992年発売)。 翌年には自社トップブランド『シャトー・タケダ』を造る(1993年発売)。 伸一と入れ違いに仏に渡った長女・典子が4年間の留学を終え帰国したのが1994年。 兄のもとでワイン醸造家としてスタートする。 「当時は社長(父)や兄にもダメ出しされることも少なくなかった。 でも、学ぶことが沢山あって必死でした。」(典子談)

 1999年、突然の事故で伸一が亡くなる。 深い悲しみの中、葡萄は確実に育ち実をつける。 実れば仕込まなくてはならない。 恐らく典子にとって相当なプレッシャーだったろう。 この十年、葡萄に背中を押されるように、醸造責任者へそして代表取締役へと彼女も成長してきた。 父や兄のワインをより高品質に。 それに無添加ワインなどの新しい試み。

 タケダのモットーはずっと「良いワインは、良い葡萄から」。 山形の風土を表現するワインを造りたい。 お客さまの暮らしの中に"当たり前に美味しい"を届けたい。 これからも葡萄と対話をするようにワインを造り続ける。

Winery通信 Vol.33 

おかげさまで タケダは90年

2010.春

1920年にタケダが果実酒醸造免許を取得し、ワイン造りを始め今年で90年になります。 当時は「金星ブドー酒」の名で販売していました。 今回のテーマはタケダワイナリー創成期です。

vol32_11.jpg  明治初期、現在の山形市北部"沖の原"の大地主の長男・武田猪之助は、「一生食べて往ける」財産を分け与えられ独立した。というのも、この猪之助さん"呑む打つ買う"の三拍子がそろった人で、家の行く末を案じた一族が相談の結果、後継ぎとして相応しからずと分家にされてしまったのだ。山形市二日町に居をかまえ、現・天童市と上山市に農地を求め小作人を使い果樹栽培をはじめた。葡萄、サクランボ、柿等の栽培から販売までを行うが、どちらかといえば青果物商の方が主だったようだ。やがて、二代目に引き継がれていく。

vol32_12.jpg 時代は大正になり世はハイカラ。栽培したブドウで葡萄酒を造り始めたのが、大正9年。でもこの頃は、所謂"旦那様"で、畑仕事も酒づくりも、人を使ってのことだった。これに反発を感じていた三代目・重三郎は、畑や工場に出向き、額に汗しながら葡萄栽培を本格化してゆく。1934年現在地(上山市)に移り住み、農園を拡大。マスカット・ベリーA等、当時の新品種を植樹した。―これが現在『ドメイヌ・タケダ ベリーA古木』の原料となっている。―天童市の農園は実弟が受け継ぎ果樹栽培を続けていた。第二次大戦後の農地改革の時は、もちろん自作地と認められ土地を失わずに済んだという。
      
 1953年に醸造永久免許を取得。翌年には工場の規模拡大を行い、ワイン造りを続けながら、ブドウやリンゴなどの果汁の製造もはじめる。東京農業大学で醸造学を修めた四代目・重信(現・会長)が事業を継承したのは1962年。学生時代に感銘を受けた仏ボルドーの一級ワイン『シャトー・マルゴー』を目指し、いずれはワイン専業にと望みを抱いていた。

 1974年、火災で工場を全焼。「現在、シャトー・タケダを貯蔵している小セラーは祖父の代からのもので、火災の際、ここだけ無事だったのです。中に当時の『アストール』が残って...。父が、その後しばらく灰を被ったそれを飲んでいたのを覚えています。」その頃小学生だった、現社長・岸平典子は「鮮明な記憶」と語る。

 地元大手銀行に「ワイン醸造に資金は貸せない」と断られながらも諦めず、情熱をかってくれる金融機関と出会い火災から5カ月後、重信はワイン専業とする事を決断し、新工場の設計図を残し二ヶ月間欧州へ旅立ってしまう。

 その後の、土壌改良から始めた欧州系ワイン専用葡萄栽培の成功は、雑誌等でご存知の方も多いと思います。

vol32_13.jpg ワイナリーとして90年。岸平社長に思いを訊いてみた。「伝統は買えない、とは亡くなった私の兄の言葉ですが、近頃身に沁みて感じます。真っ当な商売を続けてきてくれた事に感謝をし、私も先祖に恥じない様精一杯努めたい。」そういえば、『サン・スフル』〈赤〉と、〈シードル〉の林檎、どちらも原料は天童産ですね。「ワインは原料が命です。上山のデラウェアもそうですが、祖父の代からお付合いのある方々とは、昨日今日では得られない信用という宝があります。」

 10年後に100周年を迎えるが?「淡々とやっていくだけですね、当たり前に美味しいを造る。あとは、会長に長生きしてもらって一緒にお祝いしたいです。」

Winery通信 Vol.32 

"酸"あればこそ!

2009.冬

vol31_01.jpg 今年もこの季節がやってまいりました。「おいしい冬」。食欲の秋と言いますが、寒い季節の魚や野菜の美味さはまた格別です。気のおけない仲間と鍋を囲めば、これぞ人生といった喜びも味わえます。    「食事と一緒に楽しもうと思うとワインは難しいわ。」とおっしゃる方が少なくないようです。確かに、重厚なタイプのワイン(いわゆるフルボディタイプ)は淡い味わいの日本食には合わせにくいですね。極甘の、酸が極端に少ないタイプも同様。しかし、フレッシュな酸のしっかりしたワインなら、おでんや刺身にも実によく合うのです。繊細な味と香りに定評のある当ワイナリーのリストには、そんな和食ワインが揃っています。日本で育った醤油や野菜には、日本の土から生まれた葡萄で造ったワインが、やはり合うのでしょう。

vol31_02.jpg タケダワインを試飲して、「酸っぱい。」と思ったことはありませんか?この酸は、葡萄がもっているもので、ワインには大事なポイント。醸造家は、「葡萄の酸が落ちない」と表現するのだそうです。よい原料としての、ひとつの条件です。稀に、発酵による酸っぱさとお考えになる方がいらっしゃるようですが、そうではありません。健康な、良質の果実が持つ味であります。

 山形は、一日の寒暖差が大きい土地です。上山・山形・天童市を含む村山地方は、ぐるりと山に囲まれた盆地になっており、平地での米・野菜と、山の斜面を利用した果樹栽培が盛んです。山の夜は夏でも涼しく、薄物の長袖がほしくなります。日中は40℃近い気温になる日も少なくありませんから、それがどれ程のものか、おわかり頂けると思います。葡萄に限らず果物は、昼の暑さで糖度が高まります。同時に、実が元々持っている酸は減少していきますが、夜の寒さがそれを防いでくれるのです。充分に成熟し、酸が落ちる直前。葡萄のポテンシャルが頂点に達した時に、タケダワインの葡萄は収穫されます。

 この酸があればこそ、凛としたワインが出来るのです。
 とはいえ、そこは好みもございます。酸っぱいワインは得意じゃないという方。是非、和食と一緒に召し上がってみて下さい。ワイン単体で飲んだ時に強く感じた酸味が、すっきりと料理の味を引き立たせてくれます。

 ワインコーディネーターの友田晶子さんが、「サン・スフル赤」と鮨の組合せはお薦めとおっしゃいました。財政面の都合、私は刺身盛合わせにしましたが、これが本当によく合って。鱸、鮪、蛸、アオヤギ、どれも美味しく頂きました。大吟醸に近い感覚でイケますよ。日本酒に比べ、アルコール度が低いのもうれしいですね。以前、白ワインで赤貝を食べてしまった事があるのですが、生臭さが際立ってツライものでした。『魚は白、肉は赤』とは限らない。毎日の生活の中に、ワインを採り入れてどんどん楽しんで下さい。

 最も手軽に出来る惣菜を一つ。椎茸をアルミホイルで包み、オーブントースターで10~15分焼いて出来上がり。お好みで塩・胡椒、または醤油をかけ、レモン汁数滴加えて召し上がれ。焼くときにグレープシードオイルを少量垂らしても美味しいです。「サン・スフル赤」で食せば、マジックがうまれます。

Winery通信 Vol.31 

東北は梅雨が明けぬうちに立秋です

2009.秋

カラ梅雨かと思われた6月、さくらんぼに高温障害が出た7月上旬を経て、その後雨降りが続き、暦の上では秋になってしまいました。盆地の夏は蒸し暑いとはいえ、今年のジクジクはひとしおです。
 せめて食卓では季節感を大事にしたいですね。
 タケダ営業荒井氏曰く「まだ秋の"食べた記・飲んだ記"をやっていませんよ。」全季節制覇か!?秋はなんでも美味いのです。私の話等不要と思うが...。

■8月4日/蔵王スター 特別限定醸造ワイン〔白・甘口〕
山形の郷土料理"いも煮"(上山市・山形市周辺バージョン)。シンプルで本当に美味しいので作ってみて下さい。鍋一つでOKです。
(1)鍋で日本の牛肉を砂糖と醤油でサッと炒り、肉が赤いうちに取り出す。
(2)ちぎって湯がいた平こんにゃくを入れ、炒りつけ下味をつける。
(3)(2)に水を入れ、混合節などでだしを取り、里芋を煮る。
(4)里芋が軟らかくなったら、酒・砂糖・味醂・醤油で味付けをする。肉を戻し、長葱を入れる。以上
 ゴボウや舞茸、しめじを入れても美味しい。葱は煮過ぎないこと。旨いに決まっている黄金の食べ合わせです。
 
■8月6日/蔵王スター 特別限定醸造ワイン〔白・甘口〕
このワインは特に野菜と合う。今日は農家の伯母にもらったスペシャル玉葱が主役。肉厚でザックザックした歯応えの玉葱を厚さ15mmの輪切りにし、フライパンで焼く。ウチの茄子も焼く。それらに和風豚ひき肉あんを掛けて食べる。菜のおひたし、漬物、完熟トマトと野菜尽くし。ワインと野菜が、お互いのコクを引き出しあう感じ。普段の惣菜に合わせやすいワインです。
 
■8月6日/サン・スフルシードル
vol30_06.jpg何にしよう?シードルの故郷・仏北部は乳製品をよく食べるそうだ。
 玉葱と舞茸のホワイトソースを鶏胸肉のソテーにたっぷりかけて頂く。コンソメをあまり使わず、敢えて素朴な印象のソースを作る。
 「これだ!」あまりに美味しくてカパカパ飲んでしまいました。正直、「林檎酒かあ、合わせ難い。」と思っていましたが、なんの。やはり立派な食中酒です。
 
■8月9日/ドメイヌ・タケダ ブラック・クイーン古木
vol30_04.jpgvol30_05.jpg これは鉄分豊富なお肉を合わせたい。
 今日は牛のハツ・レバー・モモステーキを用意。モモ肉は塩味、他は醤油味にする。鉄鍋で焼いて皿に盛り合わせる。
 いやあ、旨い!特にレバーとの相性が良いと思う。他はワインの力強さに負けてしまった。
 B.クイーン万歳!大好きだ。でもまだ硬いかな?
 
■8月12日/ドメイヌ・タケダ ブラック・クイーン古木
vol30_03.jpg 開いて飲み時になった。拍子木切りしたエリンギと食べ易くカットした鶏レバー其々に、ベーコンを巻く。アスパラガス、鶏ハツと串に刺し塩少々胡椒で焼く。残ったレバーはニンニク・生姜・長葱を使い「ばば煮」にする。―菅井家では、田舎のおばあさんが得意とするであろう醤油味の、佃煮一歩手前的な煮物をそう呼ぶ。私が得意と言える料理のひとつだ。
 串焼きは美味しく、ちょっと洒落ている。ワインにも合う!が、「ばば煮」の方がこのワインにはまっている感じがするのはなぜだろう。ローカルワインの地力?

Winery通信 Vol.30 

お客さまとの出会いの場 メーカーズディナー

2009.夏

 日増しに濃くなる木々の緑に励まされ、近頃、よく歩いています。 道端にニホンタンポポを見つけ、移り行く風の匂いを感じ、改めて思いました。山形は良いところです。

vol29_09.jpg タケダはこの時期、繁忙期に向け助走中といったところ。ワインメーカー岸平典子氏がお客様との触れ合いを求めて、外に出る仕事が出来るのも、2月から初夏の間です。ご存知の方もいると思いますが、例えばレストランや酒販店主催の『メーカーズディナー』。醸造家を招き、話しと共にワインと食事を楽しむ会です。五千円以下のカジュアルなものから、三万円台のフルコースと、様々なスタイルがあるそうです。vol29_10.jpg「私が仕事に就いた頃は海外メーカーを招いての会がほとんどでした。近頃は、日本メーカー数社を呼んでの催し等もあり、時代は変わったと感じます。」(典子氏談)。これも先輩達の地道な努力の積み重ねがあったればこそ。「私が目指しているのは仏語で"ヴィニョロン"。畑の人を意味します。名家オーナーが城(シャトー)を経営しているボルドー地方と違い、ブルゴーニュは家族経営の小ワイナリーが集まる産地です。ここでは、葡萄栽培家が醸造家であり、瓶詰め、販売、配達まで行いますが、この人達を"ヴィニョロン"と呼ぶんです。」タケダでは、社員皆が"ヴィニョロン"であってほしいとの思いから、畑担当者もワイナリー見学の案内をし、営業部長も剪定鋏を握る。お客さまからは、「話に説得力がある。」と好評だ。また、お客さまの声を直に聞く事ができ、スタッフにも良い刺激になっている。

vol29_11.jpg 典子氏に、ディナーではどんな心持ちでお客さまに話すか聞いてみました。「まず心掛けているのは『わかり易さ』。ワインに詳しくない方でもイメージしやすいように、専門用語はなるべく使いません。それと、ほとんどが首都圏で開催されますので、都会では感じにくい季節を運んで行くつもりで出掛けます。」最近は女性の参加者が増えていて、積極的に質問をなさるそうです。"自然派ワインは農園から違うの?"、"発泡ワインに種類はあるの?"、etc...。「ユニークなところでは、"ベランダで葡萄を育てたいのだけど"との相談や、私のプライベートに関する質問もありますね。」

 実は、高校・大学を通じて演劇部に所属していた典子氏。お客さまの反応を感じながら話しをするのは舞台に似ているとか。思いもよらない所で経験が活きている。人生、何でもやってみるものですねぇ。  

vol29_12.jpg 「お客さまの生の声に、大きな流れを感じます。『サン・スフル』は、この声がきっかけで生まれました。ワインを身近に感じてもらいたい。造り手と出会うことによって、タケダワインに愛着を持ってもらえたら嬉しいです。」

 デパートの「日本ワインフェア」は蔵元が出向くことも多く、詳しい話を聞くチャンスです。お近くで機会がありましたら、足を運んでみて下さい。

Winery通信 Vol.29 

くだもの王国 山形からお届けする もう一つのお酒

2009.春

皆さまはご存じでしょうか?山形名産果実は、さくらんぼだけではありません。葡萄、桃、スイカ、メロン、ラフランス、日本梨、西洋梨、柿そして林檎。実り多き豊かな地、山形のくだものはどれも美味しい。収穫期に山形へお出でになると、国道沿いなどに"産地直売"の店を見ることが出来ます。
なかでも秋の林檎は、地元民の私でさえ驚くほど沢山の品種が並びます。その美味しい林檎を使って、山形ならではのお酒を造りたい-タケダは始めました。
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 フランス北部のブルターニュ地方やノルマンディー地方は、葡萄栽培にとって気候が冷涼過ぎ、古くから林檎の産地として知られています。地酒も「シードル」や「カルバドス」といった、林檎を原料としたものです。「留学中、仏北部を旅行した時に食事としてそば粉のクレープ等と一緒に頂きました。美味しかったです。山形もそばが名物。故郷と似ているな、と。」岸平社長の秘かな想いは、今年カタチになりました。

 山形県は林檎の生産量全国第4位。なかでもふじは贈答用としても人気があり、高品質のものが栽培されています。天童市産林檎「ふじ」100%を原料に、自然派ワイン「サン・スフル」の白と同じ製法で、瓶内一次発酵、亜硫酸無添加、無ろ過で造りました。発酵途中の出来たて直前を飲ませてもらったところ、非常に爽やかな優しい味でした。アルコール5~6度、香りやわらかく、体にスーっと染みていきます。まっすぐできれいな味は、おさげの学級委員長(古い)のイメージ?どこか懐かしく、心の奥がふわっと温かくなる素直なお酒です。これからどう成長するのか、とても楽しみ。

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澱引き、ろ過、熱処理を加えていない為、色やにごりがあります。家庭で林檎ジュースを造った時を思い出して頂くとよろしいかと思います。どうか、びっくりなさらず安心してお飲み下さい。静かに澱を沈めたら、微発泡を感じつつ、進むほどに変化する味を楽しんで下さい。ワインより"開く"のが大分早いのです。抜栓後は「サン・スフル」に比べても日持ちしません。私個人的には、当日か、次の日までに飲みきることをお薦めします。
 尚、瓶の底に残る澱は、「バニラアイスに掛けて召し上がると、レストラン仕様の洒落たデザートになりますよ。」と、ソムリエ中野氏が教えてくれました。 

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Winery通信 Vol.28 

赤ワインの仕込み

2008.冬

「赤ワインの色はどうやって付けるの?」
ワイナリーへ見学に来た小学生から必ず出る質問だそうです。そうか、近頃の子供は花をすり潰して色水を作ったりしないのね。あれは葡萄の皮の色です。でも、同じ葡萄を使って白ワインも造ります。違いのヒミツは"仕込み"にあります。
 葡萄の皮の色が黒く(濃く)ないと、赤ワインになりません。これが大前提です。
では、タケダ"赤ワインの仕込み"をご案内します。

(1)果実の選別
未熟・傷みのある実を厳しく取り除く。赤は特に原料の出来が味に出るので気を遣う。社長曰く「選果の厳しさは業界トップレベルと自負しています。」タケダ全銘柄に行っているそうです。

(2)茎を除きタンクへ
除茎破砕機にゆるくかけ、実・皮・種すべてをタンクに入れる。これで色が付くのです。

(3)酵母と出会う
タケダでは可能な限り野生酵母での発酵を行います。"野生酵母"とは、畑で付着した自然の酵母菌。培養菌と比べ、より自然な味わいの"地ワイン"が出来ます。しかし繁殖力が弱く管理がとても難しい。タンク中の様子をまめに見て、必要があれば培養酵母を植えます。
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厳しく選果を行う

(4)醸し
発酵が進み発生した炭酸ガスにより、果汁の上に皮などの固形物が浮いてくる。これをシャポー(帽子)と呼びます。これが果汁のフタになり酸欠を起こすのを防ぐ為、長い棒で突き(ピジェ)、ポンプを使いタンク内の果汁を循環(ルモンタージュ)させます。繊細な味を要求されるシャトー・タケダは、ピジェの回数を増やしルモンタージュは行いません。ポンプを通る際に少し加熱されるのを避けるためです。

(5)フリーランを抜く
絞りを掛けない果汁はフリーランと呼び、エレガントなワインになります。樽熟成させるものはそのままオーク樽へ、他は別のタンクへ移します。

(6)プレスランを採る
シャポーを圧搾機にかける。こちらはプレスラン。力強いワインです。選抜きの葡萄を搾ったのもはエグ味がほとんどありません。フリーランと分けて別タンクに入れます。

(7)瓶詰め
収穫した畑毎のフリーランと、葡萄の種類分のプレスランがあります。それらをブレンドし瓶詰めします。後は飲み頃が来るまで地下セラーで保管されます。

「分析データは参考にしかならない。どの工程でも判断は人の五感です。
ワインの声に耳を傾けるような気持ちで接する事、たくさん対話する事。
これが現在のうちのワイン造りです。」
そう言った社長の顔には頑固職人の自信と輝きがありました。

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ピジェをする

Winery通信 Vol.27 

"じいちゃんの樹"に会いに行く

2008.秋

ここはタケダワイナリーの畑です。
「ドメイヌタケダ マスカット・ベリーA 100% 古木」の材料になる葡萄を栽培しています。
社長・岸平典子氏の祖父が植えた、最も古い自社畑の一つ。
ワイナリーの東、道路を挟んだ所の急斜面に、広さ約1.5ha。
その七割が、樹齢70年の"じいちゃんの樹"です。
当時、果樹栽培をしながら、青果物商も手掛けていた祖父・武田重三郎は、葡萄の商品性に着目し、生食・加工どちらにも適した、マスカット・ベリーA種を植えました。
そして、大正9年、「武田食品工場」として『金星ブドー酒』発売。
現タケダワイナリー誕生です。


手前がマスカットベリーA畑、右奥はシャルドネ。中央奥がワイナリー

以来、長きに亘ってタケダで大切に栽培された樹は、いま、充実したとても良い実を着けてくれるようになりました。
幹は、まるで龍のような姿です。

「昔の畑は棚作りといって、日本ではお馴染みの形ですが、積雪の多い山形では、冬は雪の重みに耐え忍ばねばなりません。それで、この様に傾きつつ、曲がりくねった樹になりました。」

足元は雑草が大変元気よく、蚊がいっぱい。除草剤を使用せず、自然農法というのは、飲む人に優しく、畑作業者にはキビシイのです。盆休み明けに、草刈をするそうです。
今年のベリーAは、成長期に雨が少なかったお陰で、実が小さく水分が少なめ。なかなか良い出来とのこと。アレ?果汁が少ないのに良い出来なの?「余分な水がないのであって、果汁は濃く、しっかりした味になるの。」
 順当であれば、10月中・下旬に収穫し、タンクで仕込み、発酵の終わる11月頃、樽に移して約1年間熟成させる。
「1年に1回しか出来ない剪定を、自分の手で行うようになり14年。やっと、その成果が現れ始めたところです。2007年収穫の"ベリーA古木"を9月末に樽空けします。祖父が植え、父の育てた葡萄が、どんな風に応えてくれているか、私自身とても楽しみにしています。」
 この畑の葡萄は、「アッサンブラージュ」等にも使われるとの事でした。この畑の写真を眺めながら、"山形"を味わってみて下さい。


天翔る龍のような樹



身長113cmの子供と雑草。所によって埋もれる

Winery通信 Vol.26 

こんなのアリ?

2008.夏

 旅の記憶は、人それぞれ。一緒に旅した者でも、心に深く残った事象は異なるようです。 出会い、風景、匂い、音。味も重要なポイント。例えば、我家の長男。私が「新潟の田舎道は美しかったな」と言っても、思い出せない。 水族館に行った、大きな船を見たと並べてもダメ。 「質問。何を食べた時?」 「夜はノドグロ(魚)。」 「ああ!ハイ、ハイ。田んぼが良かったね。」等となる。 日々の食事が、人生の思い出そのものなら、『食育』って、やっぱり大事。 「じゃあ、あんたの家は居酒屋風食育ってトコね。」と友人の一人に言われた。 「ワイナリー通信で見たわよ、"居酒屋メニューで晩ご飯"。」違います。 そんなタイトルじゃありません。 トホホ企画第3弾。 ド素人である私の、「飲んだ記・食べた記」。 今度のお題は『惣菜』とタケダ・ワイン。


information_vol25_01.gif5月6日  ●サン・スフル《白》
生詰めワインのサン・スフル。さっぱりしたメニューが合いそうだ。ハーブ入りの胚芽パン、ハードタイプのチーズ、ゆで卵とトマトのサラダ。主菜は、カジキマグロのソテーにトマトソースを添えて...と思ったら、カジキが高値!豚肉にする。美味しい。が、料理がワインに負けているかも。ゆで卵が大健闘。

5月7日  ●サン・スフル《白》
発泡ワイン用栓をし、冷蔵庫に入れていた2日目サン・スフルは、和食で頂く。
弁当用に今朝作った鶏そぼろを使い、人参・枝豆・エノキダケ・竹輪・葱を加え炒り豆腐を作る。
鱈の蒸焼き、山菜の天ぷら&おひたし、グリンピースご飯、大根と茄子の味噌漬。
ああ!やっぱり。旨味の強い酒なので、複雑な旨味を持つ和食に良く合う。
特に、濃くない味付けの物が良いと思う
。唸るほど美味しいです。

5月8日  ●サン・スフルの澱
瓶の中に、蔵王の樹氷の様な"澱"が残っている。
典子氏が、キュベ・ヨシコの澱で鶏を煮込むと言っていたのを思い出し、これでも出来るんじゃ!?と試す。鍋に、一口大に切った鶏ムネ肉・トマト・キャベツ・玉葱・人参・ローリエ・澱・ひたひたの水を入れ、約15分煮る。塩・コショウで調味し、出来上がり。澱からダシが出て、肉も柔らかく美味しい。今後は澱は捨てない事にする。

information_vol25_02.gif5月11日  ●アッサンブラージュ《赤》
力強いワインに、県産牛肉を使った肉じゃが。
こっくり濃いめの味付けに合いますね。
安定株といったところ。

information_vol25_03.gif5月12日  ●蔵王スター《ロゼ》
残業で帰宅が遅く、スピード料理で勝負。 切干大根煮、山菜のおひたし。ボリュームサラダは、ミックス豆缶(ドライタイプ)・マカロニ・スナックエンドウ・トマト+シーザードレッシング。 イカとセロリの中華炒めには今一つだが、他はバッチリ!これぞ、テーブルワイン。

5月16日  ●アッサンブラージュ《赤》
タケダの所為なのか、私の好みか。 あまり手を掛けない素材味が1番合うように思う。
そして見つけた、このワインに合わせる決定版。
鶏レバーとハツは塩・コショウ・ガーリックパウダーで味付けし、鉄フライパンにて炒りつける。砂肝は塩・粉山椒をふりオーブントースターへ。 手羽先をグリルで焼く。山蕗の煮物や浅漬を添える
ワインのスパイシーな味・香りで、安価な食材が、大ご馳走に!鮮度の良いレバーは臭みが全く無く、「うまいっす。」と子等にも大好評。大事なのは、焼きすぎない事だね。 簡単うまいで、今回のMVPです 。...アレ?ヒトはこれを居酒屋メニューと言うのかな?

Winery通信 Vol.25 

発泡酒いろいろ<2>

2008.春

 また遅い雪がつもっています。 二月も半ばだというのに辺り一面銀世界。受験会場へ向かう人など、所要時間が読めずに難儀しておいででしょう。やがて来る春も、昨年同様一斉に花が咲き誇る、急ぎ足かもしれませんね。  タケダ発泡酒をめぐる探検。今回はその2回目。タケダ・ワインリスト筆頭「キュベ・ヨシコ」です。 『メソッド・トラディショネル』瓶内二次醗酵。仏シャンパーニュ地方で造られるシャンパンの製法がこれ。とても手間の掛かるものです。


information_vol24_01.jpg(1)ベースワインを造る。
白ワインとして商品化するものより酸が強く、香りも強いシャルドネを使用します。
(2)酵母を育てる。
発泡ワイン用乾燥酵母を少量のベースワインに入れ、"酵母ワイン"を作ります。瓶内醗酵は、酵母にとって過酷な仕事です。アルコール、限られた酸素、10℃の低温という環境に耐えられる、強い酵母菌を1週間掛けて増やします。
(3)瓶内二次醗酵ワインを仕込む。
ベースワインに糖と酵母ワインを加え、タンクの中を軽く循環させます。均一に混ぜ合わせつつ、発酵の為の酸素を入れたいからです。そして、すぐさまそれをシャンパン用瓶に詰め、王冠で栓をします。この(3)の工程は、一気に終わらせなくてはなりません。
(4)低温発酵させる。
酵母が活動可能なギリギリの気温摂氏10℃の部屋で、約半年~10ヶ月間かけ醗酵させます。酵母がワイン中の糖を食べ、アルコールと二酸化炭素に分解するのが"発酵"。瓶の中で逃げ場を失った気体は液中に溶け込み、これが気泡となります。ゆっくり時間をかけ醗酵させることによって、繊細な泡ができるのです。
(5)寝かせる。
発酵が終わった酵母は、澱となって瓶内に沈殿します。この澱からも、旨味や香りが出るので、そのまま3年間、ワインを静かに寝かせます。飲んだ時パンのような香りがするのはその為です。
(6)澱引きをする。
"ピュピュトル"という特殊な板に、瓶口を下にして差し、1日1回90度ずつ回転させます。斜めに立てられた瓶は、1ヶ月後垂直になり、王冠の上に乗っかるように澱が集められます。いよいよ澱引き。瓶口を-25℃で瞬時に凍らせ栓を開けると、ポンッと王冠ごと澱が飛びます。瓶内の圧力で吹きこぼれた分のワインを足し入れ、コルク栓・ワイヤー栓をはめて出来上がり。味が落ち着くまで数ヶ月置き、やっと出荷できます。


w_yoshi01.GIF 日本では、発泡ワインについて基準が無いので、フランスの規定で話しますと。『シャンパンはガス充填等ではなく、瓶内二次発酵である事。
上記工程(3)から1年経てば販売可能。その際製造年号は入れない。ただし、澱と触れる期間を3年以上もったワインは、"ヴィンテージ・シャンパン"と呼ばれ一段上のワインとして扱われ、年号が入る。』
 「澱引きの際、リキュールやブランデーを足すシャンパンが一般的ですが、何も足さないのは、"ノンドゼ"といって仏でもより高級とされます。
又、シャルドネ種100%のものは、"ブラン・ド・ブラン"で、これも高級品です。」じゃあ、キュベ・ヨシコは"ヴィンテージ・シャンパン"、"ノン・ドゼ"、"ブラン・ド・ブラン"と三拍子そろった高級発泡酒なのですね。今更ですが。「高価なお酒ですからね。自信を持って、誇りをかけて造っています。」
*キュベ・ヨシコ2003は、好評につき完売しました。次の発売は、2005年ものを来年6月に予定しております。

Winery通信 Vol.24 

発泡酒いろいろ<1>

2007.冬

例年より遅くなりましたが、今年も無事葡萄の収穫が出来ました。8月に雨が少なく、日中しっかり暑かったお蔭で、なかなか良い葡萄になってくれた-との事。今年も良いワインを造ろうとスタッフ一同張り切っています。 この秋新発売の「タケダワイナリー サン・スフル(白) 微発泡 山形県産デラウェア種100%」。 info_01.gifinfo_02.gif一番の特徴は、日本では先駆けの瓶内一次発酵の発泡酒だと言うことです。 タケダ・ワインリスト筆頭「キュベ・ヨシコ」は瓶内二次発酵。 どちらも発泡酒ですが、どう違うのでしょう? 今号から2回にわたり、そこのところをじっくり探検して行こうと思います。 『メソッド・アンセストラル』伝来の、昔ながらの方法という意味。瓶内一次発酵です。素朴であるが故、労力の要るつくりです。しかも「サン・スフル」は酸化防止剤無添加。美味しいワインにするために衛生面でも細心の注意を払います。 手順を紹介します。


①果汁を搾る
厳選した果実を搾り機にかけ、果汁を取り出します。圧力をかけず、滴り落ちてきた汁は"フリーラン"と呼ばれ、アクが少なく澄んだ味がします。原料はこのフリーランのみを使用。通常は、ここ果汁の段階で酸化防止剤を入れますが、「サン・スフル」は勿論なし。一晩置き、果汁のにごりを沈めます。

②果汁タンクに酵母を入れる
果汁のにごり部分(小さい果実片など)を取除き、ワイン酵母を投入。発酵が始まる。

③瓶に詰める
酵母菌が糖を食べ、アルコールと二酸化炭素を出すのが発酵。液に糖分が残っている発酵途中で瓶詰めすると、瓶の中で逃げ場を失ったガスは、ワイン中に溶け込み、発泡酒となるのです。手作業で1本1本瓶詰めし、王冠をします。この作業は、一気にやってしまわなければなりません。明日になれば、タンク内のワインの状態が変わってしまうからです。

④瓶内発酵させる
室温15~20℃の地下セラーに寝かせ、3~4週間。瓶の中は3気圧の発泡酒になります。働き終えた酵母が、澱となってにごっていますが、敢えて澱引きはしません。出来上がりです。

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葡萄と酵母だけで造った、自然派ワイン。仕込みのどこかで、少しでも雑菌が入ったらワインとして飲めません。また、発酵の進み具合をこまめにチェックし、ここぞというタイミングで、全量を仕上げます。この時期、ワイナリーは葡萄の収穫、仕込みと猫の手を借りたい程の忙しさ。「二千本を3人で詰めました。正直、スタッフは泣きながらの作業でした。私自身、なんでこんな大変は事始めちゃったかなと少し後悔しました。」でも。出来上がってみれば「美味しいねえ。」
全く新しい試み、手作業ということで、限定2000本の生産でした。発売から2週間で、半分売れてしまいました。工場見学にいらしたお客様に大好評を頂きまして・・・。このお便りが出る頃には、「品切れの可能性が高いので書かないでください。」とスタッフの声がありましたが、このワインを知って頂きたくて記事にします。
姉妹品「サン・スフル赤」は手に入るそうです。来年の生産量はお客様の声を参考にしたい、と言っている疲れ気味のスタッフに暖かい励ましのお言葉を頂戴できれば嬉しいです。

Winery通信 Vol.23 

タケダワイナリー見学

2007.秋

暑い暑い夏がようやく終わり(?)、実りの季節がやって来ました。それにしても、暑かったですね。洗濯した息子の柔道着が、分厚い襟さえ半日で乾く毎日。山形の夏でもあまり経験した事がありません。そんな中、蔵王山麓にあるタケダワイナリーを訪ねると、そこは爽やかな空気に包まれていました。いや、山形市の町中に比べればなのかもしれません。ちょうど居合わせた、他県からおいでになったお客さまが「いやぁ、山形ってこんなに暑いトコでしたっけ?」とおっしゃっていましたから。

uketuke.jpg今日の目的は、ワイナリーを見学なさるお客様と同じコースをあるくこと。タケダでは4月~11月の間、平日はもちろん、工場が休みの土・日曜日もワイナリーのご案内をしています。ただし、少ないスタッフが交代で行っていますので、お相手できるお客さまの組に限りがございます。事前の予約をお願いしています。また最近話題の"メーカーズ・ツアー"(責任者案内とでもいいますか)ではありません。畑の責任者と、醸造責任者と、会社責任者が同一人物の為、時間・空間的に大変難しいのです。どうか、ご理解頂きたいと思います。
kakine.jpgという事で、本日案内して頂くのは斉藤さん。パートタイマーとしてお勤めの女性ですが、今やタケダのメイン案内役。話しが丁寧でわかり易い、とお客様にも好評だそうです。今日は宜しくお願い致します。

「では、畑の方から案内させて頂きます。当ワイナリーは1920年・大正9年より自家農園産葡萄を使ったワイン製造を行っています。 syarudone.jpg現在は今目の前に見えますシャルドネ種など、15ヘクタールの自家農園で葡萄栽培をしています。その80%がこのような垣根仕立てといわれる畑です。」本社に隣接するシャルドネ畑を前に、下草がボウボウな理由と草刈の方法。畑作業でのポイントを当事者らしい視点で話してくれます。次は搾り。蔵王スター"特別限定醸造"の仕込みが始まっているとあって、2台の搾り機が待機中。「今日は日曜なので搾っていません。」

shop.jpg「これから地下セラーにご案内します。」シャッターを開け、地下へ続く坂を半分まで降りた時スーッと涼しくなりました。「空調は使っていませんが、夏・冬を通して一定の温度に保たれています。」手前のセラーには蔵王スターアイスワインが置いてある。「コルクの乾燥を防ぎワインを守る為、瓶は逆さに保管していると説明を入れる事もあります。私が不思議に思った事をお話しすると身近に感じて頂ける様で。」奥のセラーには入れませんが、樽熟成中のワインや樽について、色々教えてもらいました。
bindume.jpgセラーを出て、瓶詰めラインを見せてもらい見学終了。 最後はショップに寄ってみて下さい。レフレール等タケダ・ラインナップを色々試飲の上、お気に入りを見つけて蔵出しワインを購入できます。ワイン関連小物や、洋画家の筆によるタケダの風景"ワインの里"絵葉書。オリジナルTシャツも置いてあります。「折角来て頂くお客様の為に、もっと勉強してより良いご案内にしたいと思います。」専用スタッフのいない小メーカーの、素朴ながらも心を込めた案内です。秋の仕込みシーズンに、いらっしゃいませんか?tika-sera.jpg






Winery通信 Vol.22 

初夏の整理・整頓は以外に気持ち良い

2007.夏

私事ですが、戸棚の中を整理しました。「使えそう。」と仕舞っていたジャムの空瓶や可愛らしいクッキー缶など、2~3個だけ残して処分。空いたスペースに出番の少ない水筒を片付けました。普段は見えない所ですが、"お母さんの新学期"を迎えたようで清々しい気持ちです。

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醸造責任者が典子氏になってから、タケダレギュラー陣に加え、収穫畑を限定したもの、醸造・熟成を工夫したもの等、新たな試みのワイン造りにも力を入れて参りました。お客様から「ワインリストが増えて楽しみです」との声を頂戴しています。一方で、「何が違うの?」との質問も多く、もっとわかり易く出来ないかなあと思案していました。そこで。この度、ラインナップの整頓を行いました。
大きく分けて2系統になります。
①タケダ自家農園葡萄100%使用ワインの『ドメイヌ・タケダ』シリーズ。
②山形県産葡萄100%使用ワイン『タケダワイナリー』シリーズ。

①ドメイヌ・タケダは"キュベ・ヨシコ""シャトー・タケダ"等、葡萄栽培からはじまり、全てをタケダワイナリーで行っている完全自社製品です。タケダが原材料としている葡萄全品種の内、デラウェア以外がそろっています。(デラウェアは栽培していない。)中でも欧州種のシャルドネ、リースリング、カベルネ・ソービニョン、メルローは元々自家農園産しか使用していませんので、「ドメイヌ・タケダ」シリーズのみとなります。
"リースリング ヴァンダンジュタルディブ"と"ピュア・シャルドネ"の2品以外は樽熟成です。
②タケダワイナリーは"サン・スフル"のベリーA栽培家・花輪和雄さんをはじめ、タケダ協力農家によって丁寧に作られた葡萄を原料としています。デラウェア、マスカット・ベリーA、ブラック・クイーンの3品種。自社畑ではありませんが、「葡萄のクオリティは自信があります。」と典子社長。美味しいテーブルワインとして、ソムリエ折り紙付の"蔵王スター"がこのラインです。私の大好きな"アストール"、人気の"アイスワイン""特別限定醸造"も、こちらに入ります。
「タケダには契約農家がありません。ウチが青果物商&果樹農家だった頃からの仲間である、花輪さんのような栽培家から、必要な品質の葡萄を必要分買っています。栽培方法について一緒に勉強したり、葡萄の収量制限をお願いしたり出来るのは、何代にも渡る長い長い付合いのおかげ。」
畑に出向き、葡萄を見て、「これを何㎏欲しい。収穫は何日頃にして下さい、とお願いします。」・・・結構ワガママだなあ。でも、この辺が契約栽培との一番の違いなのだそうだ。「花輪家も、天童市で農業を営みながら、地域の皆の果物を取りまとめて、流通させる仕事を代々しています。」生産者でありながら、商品に対するキビシさを理解し、対等な関係でいられる。「花輪さんは、これを原料にした果汁100%ジュースを造って販売しておられます。美味しいですよ。」
このシリーズでは"アストール赤≪艶≫"のみ樽熟成。
新ラインナップを、どうぞ宜しく。

Winery通信 Vol.21 

冬はどこへ?お山にだけ来たのね。

2007.春

暖冬といわれるこの冬は、山形でも"らしくない"まま終わりそうです。町中で雪を見る事も無く、雪捨て場(雪かき後の雪を持込む、市指定の場所)の河川敷は土がむき出しになっています。保育園に通う三男は1度も雪遊びができずガッカリ。もっとも、蔵王のスキー場は通常通り営業していて、次男の小学校のスキー教室は無事行われました。 2月中旬、タケダワイナリーを訪ねました。葡萄の樹上に雪は全くなく、地面が見えない程度の積雪。長靴さけ履けば畑に入って行けそう。昨年の今頃は、樹が雪に埋まって、いかにも可哀想だった。どんなにか春が待ち遠しいかろう、と思ったものだ。

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2月中旬の葡萄畑

でも今年は気配が違う。「スキあらば伸びちゃうもんね。」的覚醒状態にある様に見える。本当のところはどうなのか。典子社長に訊いてみよう。
「実際、2月初旬のえらく暖かい日が続いた時は、葡萄が芽吹くのじゃないかとビクビクしてました。積雪でまだ畑に入れないのに芽が出たら大変だ、と。」幸い樹はまだ休眠中だが、本当の気がかりはまだこれから。
暖冬のときは冷夏になると言われる。経験からも、その心配はある。「今年はどうなのか。土の中の微生物にも影響があるかもしれないし。この雪の少なさは私には初めての事で・・・。ただ心配していてもしょうがないので、今年はとにかく"備える"ことにしようと、スタッフと話しています。」というと?「例年、3月半ばまで掛かっていたワインの瓶詰めを、何とか2月中に終わらせ、3月になったら、即、畑作業スタート。天候が読めない分、より目と手を掛けて補っていこうと。」
informatiaon20_02_000.jpg手始めに、葡萄の樹皮を剥く。カイガラムシ対策だ。カイガラムシは害虫で、アブラムシの仲間だそうだ。園芸をやっておられる方はご存知かもしれない。庭木、果樹等の樹皮の割れ目や粗皮下に卵を産み付け、幼虫になってからは樹皮を吸って生きる。カイガラムシの出す液は甘く、アリや植物の病菌を呼び寄せる基になるという本当に迷惑な奴だ。「樹皮を剥いで、越冬中の虫を日に晒すといいんです。葡萄農家は皆やっていますよ。樹も虫も休眠中に手を掛けて、病害虫がつきにくい環境をつくります。」
畑の薬剤使用を抑え、自然農法によって葡萄本来の力を引き出す。-先代社長・武田重信氏の心を引継ぎつつ、典子氏の新たな試みは、畑でも毎年続けられている。「ワインを良くしたいと思ったら、やっぱり畑から始めないと。『良い葡萄』のために、出来る事がもっとある。可能な限り葡萄のポテンシャルを高めたいんです。良い畑と、とても良い樹を受け継ぎましたからね。今年はこれをやろう、あれもやってみようと、心が奮い立ちますよ。毎シーズンが楽しみです。」
春の芽吹きのウズウズは、ひとあし先に典子氏に訪れていたようだ。

Winery通信 Vol.20 

「天高く」馬肥ゆる秋」到来。

2006.冬

なにを食べても、空気までもが美味しい季節となりました。

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「収穫するよ。」連絡を受けて、10月の土曜日カベルネ・ソービニョンの収穫に飛び入り参加させてもらいました。平日は勤めがある私にとって、これはまたとないチャンス!久々の休みとなった夫に「長男も居るし」と、次男の習い事の送迎及び三男の子守りを頼み込み、長袖の薄物の上に半袖シャツをはおり、ジャージを履いて、ドラえもんもびっくりの大きいポケット付エプロンを装着。長靴、首にはタオルを巻いて準備完了。車のハンドルを握ること30分。今日の私の心と同様、キラキラと光が眩しく見事な秋晴れ。

infomation_1903_000.jpgタケダにとっても急な休日出勤の為、岸平社長夫妻を含め7人のスタッフ(内1人は蔵の作業)で行う。「あら、おはようございます。」畑に直ぐ行ける格好で来た私に呆れつつも皆さん暖かく迎えてくれる。今日の畑は比較的新しい場所で平地にある。5年前、私の胸ぐらいの高さだった樹はすっかり大きくなり180cmはあろうか。幹も太く逞しくなっていた。何だか久し振りに見る親戚の子って感じで、親しみをもってしまう。
「今年は鳥の被害が多くて、ホレ。」あらら。きれいに(?) 軸だけになった葡萄が、これまたきれいに棚の端から順に並んでいる。ホラーチックな秘密兵器『バード・ガード』-音による害鳥除け。鳥の首が絞められている時の声だそうで-が「ゲッ、ゲッ、ギャギャー」と働いているのに?「今年は7月の長雨の所為で、里山に木の実等のエサが少ないらしくって。それに、近くの里山だった所が住宅地として随分開発されて他にエサ場がない。」収穫日を決めると、その半日か1日前に食べられる事が多いそうだ。鳥は一番美味しい時に来るんだから典子氏の収穫の判断が正しいって証しだね。「まあね。という呑気な話ではないよ。」
垣根式棚の一列に一人入り、横並びで摘んで行く。葡萄の房付近の葉をもぎ取り、房の元に鋏を入れる。以前に比べて葉が少なく、随分と風通しの良い畑になっている様だ。農薬使用を極力抑えて、除草剤も撒いていない畑は雑草も元気。「化学合成の薬は殺虫・殺菌の為、梅雨明け直後に一回だけ使いました。10回程度散布するのが普通だそうで、「農家の人に話したらびっくりされました。」φ12mm位の黒っぽい紫の粒は、"水分でパンパン"状態を過ぎた頃合。ここが生食用との大きな違いなのだろう。ワインに適さない粒を取り除きながら農業用カートンに入れていく。生来不器用な私は焦れば焦る程上手くいかず、指をチョキン、いてっ!スタッフの皆さんが話しながらサクサク収穫する中、黙々と集中して頑張っている岸平和寛営業部長と二人取り残されてしまう。(私達若葉マークは話をする余裕がないのだった。)
畑の半分は昨日終わっていたという事で、午前8時から始めた収穫は2時間程度で終わった。「さあ、工場に戻って搾るべし。」

infomation_1901_000.jpg本日葡萄を搾る機械のイタリー君を運び出し、隅々まで水洗い。ベルトコンベヤ、果汁を流すパイプも丁寧に洗う。「今年はコンベヤの前に選果用テーブルを用意して、増して厳しく葡萄のチェックをしています。葡萄の質がかなり良かったし、期待してるんですよ。シャトー・タケダも赤白造るつもりです。」
全てのセットが完了し丁度お昼となった。「午後からが、また盛り上がるのになあ。」と人手の欲しい典子社長の言葉に後ろ髪をひかれつつ、残念、私は時間切れとなったのだった。

Winery通信 Vol.19 

山形には珍しく、しとしと降り続く梅雨でした。

2006.秋

今年はこれで終わりか、と悲しく思っておりました。ところが、8月になった途端、ガーと強い日射しと湿度の高い、山形のベタベタ夏です。いつもなら盆辺りから朝夕は涼しくなるのですが、今年は違います。盆を過ぎてから暑くて眠れません。ここに来て夏バテか。調子が狂います。 天候の遅れは作物の成長の遅れに繋がります。今年の葡萄は少し遅れ気味。8月下旬になっても、畑のシャルドネはいかにも硬い緑色をしていました。とはいえ。そろそろ畑の葡萄の分析を始める時期です。畑ごとに収穫、醸造しているタケダでは、その"畑"の成熟度を知るため、何箇所かランダムにサンプルを採り、酸、PHと糖度を測定します。

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「これは人に任せるわけにはいかない、私の仕事です。ほぼ毎日やります。」ワインメーカー典子氏(社長)は言います。「分析して出て来た数値は目安にすぎず、五感を使って葡萄を知ることが最も重要なのです。葡萄の軸の色、食べた時の皮の感じ、種の色・味。果汁だけでは収穫時期が判断出来ないのです。」
15ha(東京ドームの2.5倍の広さ)の自家農園の収穫は、スタッフ総出でも不可能です。無論、数種類の葡萄を一度には採りませんが、「この日が最良!」の決戦日に収穫を終え、搾る為に、毎年葡萄農家の方々に協力を頂いています。時にアルバイトも雇います。(数年前私もお世話になりました。)その手配を考えて、遅くとも5日前には『その日』を決定するそうです。「いつ収穫するのが、一番美味しいワインになるのか。台風の頃だから天気予報を睨みながらねぇ。悩むんですよ。収穫期によってワインになってからの成分に違いが出てくるんでね。」そんなに違ってきますか?「はい。全くキャラクターの違うワインになっちゃう。」こわいなぁ「誰かに相談できるワケもなく、胃が痛くなる事もありました。経験を重ねて来て、落ち着いて考える事が出来るようになったかな。」葡萄の分析は昔からやってるんですか?「私がワインを造るようになってからですね。初め父からは"不思議なコトをしている"と言われました。'80年代以降世界的な、ワインの技術革新の波が起きているんですよ。"伝統"を誇るボルドーだって造り方は変わってきています。各々シャトーに合った方法を取り入れ進化してるんですね。昔通りにやってれば良いだろうでは、フランスでも通じないのです。」
8月20日過ぎにデラウェアが入荷。『特別限定醸造』蔵王スターワインの仕込みを皮切りに、9月シャルドネ、10月マスカット・ベリーA、10月下旬メルローとカベルネ、11月の遅摘みのリースリングまで、ワイナリーでは気の抜けない毎日が続きます。でもそれは、収穫の喜びに満ち満ちて最も活気付くワイナリーの姿でもあるのです。「やっぱり良いですよこの頃は。畑の心配から開放されて、『あとは(ワインを)造るしかない』とハラを括れば前に進むだけです。」
ワイナリーを訪ねるならこの時期がお薦め。平日の午後だと、収穫してたの葡萄を搾っているかも。辺り一杯に漂う葡萄果汁の甘く、且つ青い香りがなんとも良いのです。

Winery通信 Vol.18 

夏はアイスワイン。

2006.夏

日射しがキラキラと輝きを増し、美しい季節になりました。 気温が高くなると、キリリと冷えた飲み物が美味しいですね。「やっぱりビールでしょ。」と言われる向きもおありでしょうが、甘口ワインも良いですよ。南国生まれのカクテルにフルーツを使った甘いものが多いのは、体が欲するからでしょうか。今回は「夏」をテーマに、タケダのアイドル"蔵王スター アイスワイン"を飲んで、食べてみました。

w_ice01.GIF4月29日 蔵王スター アイスワイン〔白・甘口〕
シンプルにいってみよう!と卵とトマトの炒め物でチャレンジ。「あれ~」と悲鳴をあげて卵トマは粉砕される。ワインの力強さに太刀打ち出来ず。私、久し振りにこのワインを飲みました。前と比べ酸味が減り、葡萄の甘味がより凝縮されている気がする。香りも良い。こりゃあ人気物になるわなあ。我家メニューの中であれこれ展開を考えていたが、方向転換せねば。

4月30日 蔵王スター アイスワイン〔白・甘口〕
昨日のデータと分析(?)に基づき実験食を作ってみる。
熟したアボガドを裏ごしにしてカッテージチーズ(裏ごしタイプ)と混ぜる。塩・白胡椒を入れ、レモンを搾り入れる。ちょっとだけマヨネーズも加えてみる。まぜまぜ。はい、ディップが出来ました。人参・セロリ・きゅうりのスティックに茹卵・茹エビ(しっぽ付)も一緒に並べれば豪華版。トーストを添える。鶏手羽元とキャベツをにんにく風味の蒸焼きにする。サラダ・パンどちらもディップをつけて召し上がれ。これは旨い!アイスワインにもばっちりです。やっとワインの強さに負けない相手が見つかりました。爽やかな楽しい元気が出る組合せ。実験ついでに、更に夏っぽい飲み方を試してみる。
①果汁100%のオレンジ・ジュースの氷をつくる。②グラスにアイスワイン白を入れ、①の氷を3~4コ入れる。③炭酸水を注ぐ。ごくん。実に爽やか。ワインの飲み方としては邪道かもしれないが、夏の暑い時にはこれもアリかな?

w_ice02.GIF5月3日 蔵王スター アイスワイン〔ロゼ・甘口〕
このワインに豚肉が合う事を私は知っている。冷しゃぶ+ごまダレは特に良かった。が、あまのじゃくは別のをさがすのだ。
本で見たダイエット・メニューに旨そうなのがあった。アク抜きした薄切り茄子にゆでたオクラ(小口切)、なめこを加え、花みょうが・生姜(細切り)を合わせ、醤油・だし汁・塩であえる。
ワインと供に頂けば、夏を先取りしちゃったね。食欲が落ちる頃でもこれなら大丈夫だろう。主菜は鶏のキンカン煮。鶏の卵管と砂肝をにんにく・生姜・日本酒で炒り煮にし、凍豆腐と長ねぎを加えたもの。母から伝わる我家の人気メニュー。料理は好評だったが、ワインは辛口にすべきだったかな。

5月4日 蔵王スター アイスワイン〔ロゼ・甘口〕
ロゼ2日目。鶏ささ身をレンジで蒸し、さいておく。それをもやし・きゅうりの上に載せる。①たたき梅干+マヨネーズ、②ごまダレ、③わさびじょう油、その他、豆板醤やにんにく味噌、酢等を並べ、手元でお好みダレを作って食べる。今度こそ!ロゼに合います。これに漬物ずしと、ウルイとさつま揚の煮びたし。いいね。ガス台の前に立つ時間も短く夏向き。

白・ロゼ、どちらも良く冷やして飲むのが私は好きです。ロゼに炭酸水とスライスレモンを入れれば、「川風に吹かれに行こうかな。」とうずうずしてくる味になりました。太陽の下で飲むのにピッタリ!今年の夏のアウトドアには、アイスワインとソーダ水をお供にいかが?

Winery通信 Vol.17 

やっとこさ雪が溶け出しました

2006.春

轍にハンドルをとられる車の運転にうんざりしながら、春を待っていた私です。 今年の様な大雪は、支柱を倒したり、枝を折ったりと畑にとってはあまり有難いものではありません。ぶどう棚修繕の手間を考えると、1日でも早く畑仕事に掛かりたいところです。 今回はタケダワイナリーの"春"についてお話しましょう。 しのび寄る冬と違い、あっけなく来る春。日差しだけでなく、気温だけでもない。敢えていうなら空気が「春だ」と思える日があるのです。まだ雪の山が残って朝夕の冷えが厳しかったとしても、そのとき、春の匂いがするんですね。雪の下の土が見えるようになると、そこには既に小さい緑が。花咲き鳥歌う本当の春はまだ先だと知っていても、うれしくて心がほっこりします。 まあ、大抵はその後何度か吹雪いたりするのですが。 雪が少なくなってきたら、棚直しからスタート。秋の剪定で切落した枝を拾い集め、片付いた畑から"誘引"。誘引というのは、樹の枝を支えの針金に留めて「こっちに伸びるんだよ。」と導く作業です。その頃になると、地面の雪もほとんど消え、天気の良い日は、武田家の蔵下に住む丸々と太った"お蔵ネコ"の姿を見かけるようになります。 普段、アスファルトの上で暮らしていると気付かない春の息吹。ここタケダワイナリーに来ると実感できます。辺り一面から湯気となって立上るのが見える(気がします。)土が「ワヤワヤ」と言っているのが聞こえる(気がする)んですよ。いや、本当に。

sakura.jpg会社事務所前の坂を上ると広場みたいな高台があります。秋に収穫祭が行われる所です。左手奥に竹薮があって、さらに奥に古いお堂が見えます。地元の人達が大切にしている十一面観音が祭られているそうです。そこから高台下の畑に向う道があります。祠と参道はタケダの所有ではありませんが、4月末、桜のトンネルになるんです。桜の古木って特別な感じがしませんか?ひとり眺めていると畏怖の念さえ抱きます。例年、タケダ・スタッフは"お花見弁当びらき"をして楽しんでいるようです。花粉症の人まで参加する、見事な咲きっぷり。
タケダの近辺は花の見所が他にもあります。
元・上山競馬場南沿いの道。両側からアーチ状に枝が張出し、散りはじめると淡紅の長い絨毯が出来上がります。もう1つは斎藤茂吉記念館のある「みゆき公園」。偉大な歌人はこの近くで生まれたのです。余談ですが。典子氏と私の通っていた高校の校歌は、茂吉先生作詞でした。入学後、"良妻賢母"訓示から始まる学校らしく、清らかで心豊かであれと歌われていました。・・・・・何だか、申し訳ない気になります。
今年は、山形の桜は遅れ気味の情報もあります。春の連休あたり、こちらにおいでになりませんか?お待ちしています。

Winery通信 Vol.16 

今年の冬子さんはのんびり屋さんです。

2005.冬

11月だというのに、秋の装いで街を歩く人々。山形ではめずらしい光景です。「北国の夏は短い」と思う方が多いでしょうが、梅雨前から暑い山形では、実感としては秋の方が短いのです。 近頃、タケダワイナリーを訪ねたらTV・雑誌の取材の人達がいた、という事がよくあります。国産ワインの評価が高くなり、タケダワイナリーも多くの人の注目を集めているのだと感じます。 その中でも、今年の1月から取材を続けているのが、RSK山陽放送※さん。遠く岡山県よりお越しです。ワイナリーの1年を通じての姿を撮影なさるそうで、葡萄棚の雪降ろし(タケダ通称:サラドコギ)からはじまり、開花、収穫、仕込み等、ワイン・メーカー典子氏に密着。何度となく足を運んでおられます。 桃太郎のふるさと岡山はマスカットの産地ですね。私事になりますが、15年前岡山へ旅行に行きました(いわゆる新婚旅行というヤツですが)。その時、桃太郎の仕掛時計のある新幹線ホームの売店では、贈答用の白桃とマスカットの「産地直送・予約承ります」のパンフレットが大量においてあり、「力入ってんなぁ。」と感心したものでした。それもそのはず。岡山には、産業としての葡萄に関心を寄せた人が140年前にいたというのです。

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幕末の1863年。ペリー来航から10年後。「ふたたび鎖港を」と幕府が派遣したヨーロッパ外交使節団の正使は、現在の岡山県井原市にあたる井原藩・藩主・池田長発(ながおき)。上海・インドを経てエジプト・仏へ行き、カルチャー・ショックを受け、先進国の書籍を沢山持ち帰りました。測量・紡績などの中に醸造論も混じっており、産業として関心を持ったとみられます。その時、池田長発は27歳。昔の27歳って、エライですね。
池田候の話を入口に、日本のワイン造りへと話は広がります。
番組案内役に、映画「ラストサムライ」出演の俳優、小山田真(しん)さん。小山田さんは、岡山県出身の24歳。高校卒業後、米国ハリウッドへ渡り活躍中の方です。現代日本でワイン造りに励む人として、岸平典子氏。エジプトでは吉村教授による、古代ワイン復元も予定しているそうです。
私の拙い文章では仲々お伝え出来ない、タケダの四季の風景が、ハイビジョン映像で全国に流れます。3月、年度末のお忙しい頃でしょうが、ぜひ、ご覧になって見て下さい。
※TBS JNN28社共同製作番組「ワイン大国を夢見た男たち」2006年3月21日(火・祝日)AM9:00~11:20

Winery通信 Vol.15 

菅井由美子のこんなのもあり

2005.秋

このワインに合う食べ物って何かしら?

酒屋の御主人が受ける質問の中でも特に多いのが「このワインに合う食べ物って何かしら?」だそうです。特別な日のお酒とご馳走。雑誌等でも「ワインに合うオシャレな一皿」が紹介されたりします。ワインのイメージはまだカタイ面がある様です。だからと言って、ワイン通の人に「何を食べてるの?」とは聞きにくいですよね。
はい、そこで私の出番(イヤ、誰にも呼ばれて無いんだが)。今回は皆様にオススメというより、「こんなアリ?」と思って気を楽にして頂く為のトホホ企画。主婦暦15年の私が、この夏の「飲んだ記・食べた記」の一部を公開させて頂きます。尚、あくまで個人的な好みですので、「まずそうだぞ!」「失礼だぞ!」等の抗議を申されましても、私も困ります。

6月4日「ピュア・シャルドネ」
潮干狩りのお土産のおすそ分けにアサリを頂く。トマト・にんにく・セロリと一緒に蒸し煮にする。アスパラと茸の焼きびたし、茹じゃが芋が副菜。久し振りだなあ。大地を感じる"健康"そのものの味。旨いなあ。ワインのあまりの力強さにアサリはあっさり蹴散らされてしまう。驚いた事に、焼きびたしにはとても良い。「ピュア・シャルドネ」は、畑の物が合うのかもしれない。

6月5日「ピュア・シャルドネ 2日目」
焼長ねぎを輪切りのトマトに載せ、ドレッシングをかけまわす。冷蔵庫で冷やして、まず一皿。安く手に入れた大量のいんげんを塩・コショーで炒める。香りが邪魔になりそうな気がして、敢えてバターは使わない。これに湯通ししたイカを生姜醤油で食べる事にする。
んまい!やっぱり野菜のストレート味がとても良く合うワインだ。上等な吟醸酒を頂いている感じ。

6月10日「蔵王スター<一升瓶・白・辛口>
冷蔵庫にある野菜でラタトゥイユ風のスープを作る。トマトや南瓜等7種類の野菜にパスタも加える。竹輪があったので、おろし生姜&にんにく醤油に15分漬け、片栗粉を軽くまぶし、多めの油で焼く。朝の残り物と茹卵も並べ、笑っちゃう様な食卓になった。ワインのお陰で気分は豊かに。晩酌にちょうど良いワイン。

7月1日「蔵王スターアイスワイン<ロゼ>」
三男の3才の誕生日。今日は彼の大好きなうどん。豚の冷しゃぶとたっぷり野菜を載せ、ごまだれでサラダ風にする。茹とうもろこしを大皿に積み上げる。子供3人にうどん5玉で少し足りず。胡瓜の浅漬もさわやかに、ロゼもたまには良いものだと思う。正直、普段は手を出さない甘口だけど、これなら食事もとても合う。蒸し暑い今の時期には、体が喜んでいる様だ。

7月22日「蔵王スターヴィンテージ<白>」
山形は庄内地方の夏の味、"口細カレイ"が安かった。塩焼きにする。みその味のなす炒り、山形の※"だし"が今夜のメニュー。このおかずでヴィンテージ白がこの上なく美味しいと思うのは、私が山形の人間だから?

7月31日「蔵王スターヴィンテージ<赤>」
夫が「子供の次に大事」という山形鋳のジンギスカン鍋でラム肉を焼く。平こんにゃくを薄く切り、ピリピリになるまで焼くと旨い。野菜にもラムにも大変合って、ヴィンテージ赤の旨いこと!1.2kgの肉が、あっという間に消えてしまった。ワインもすぐに、空けてしまった。

8月27日「レ・フレール・タケダ<白>」
今日は贅沢をしてしまいました。あら、しかも主人は出張(ねらったワケではない)。普段遠慮して食べられないサーモンのさしみ。(主人は生の"サケ"は大の苦手)。今日はこれしかない!そう思って買物に行ったら、いるもの神様が。魚屋の今日の目玉は、"それ"。3人前を2パック買って、子らと4人。わさびたっぷりで食べた。いやあ、旨いのなんのって。レ・フレールの樽の香りが、非常に合う。上品で色気があって、すんばらしい!幸せだ。

※ナスやキュウリを主体に大葉、ミョウガ、オクラなどの新鮮な野菜を刻んで混ぜ、しょうゆを一振りした山形県の郷土料理

Winery通信 Vol.14 

瓶詰め工場の香りに酔う

2005.夏

タケダワイナリーに見学においでになっても、工場2階の瓶詰めラインが稼働している所をご覧になった方は、案外少ないかもしれません。なにせ少ないスタッフで畑、仕込み、瓶詰めからラベル貼りまで行っていますので"その時"に当たらないと見る事ができないのです。
瓶詰めが行われるのは"樽空け"の時です。熟成させていたホワイト・オーク樽からワインを出し、瓶の中での熟成(寝かせ)へと移します。木の樽に入れないで造るワイン、例えば蔵王スターは醸造していたタンクから、という事になります。タケダでは収穫した畑毎に、醸造する樽やタンクを分けています。同じ品種の葡萄でも、畑によって異なる個性を持ったワインが出来るからです。
ワインメーカー典子氏は、その個性を引き出しつつ、ワインによりふくらみを持たせるように樽の組合せを決めているわけです。ですから2種類以上の葡萄の品種を合わせる時の配合具合はもちろんですが、単一品種のワインでもブレンドは必要となります。「ブレンド」というと「ナニかを混ぜているの!?」と不安に思われるかもしれませんが、決して、そうではありません。
ちなみに、限定で発売されたシャルドネ「南斜面」や「久保手」は、この畑からお届けします!という思いを込めてタケダで呼んでいる畑の名前をそのまま商品名としました。

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①キレイに殺菌 ②ボトリング ③コルク栓でギュッ!
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④しっかりチェック! ⑤キャップをかぶせて
出来上がり

さて、今日はアストール[白]の瓶詰めを案内します。ワインメーカーの指示書に従い、醸造用タンクからブレンド用タンクへワインが空けられます。澱を落ち着かせる為、寝かせる事1ヶ月。その後、パイプを通って瓶詰室へやってきたワインを「いらっしゃいませ。」と迎えるのは、ペーパーフィルタです。忍び入る澱を取りのける役です。一方その頃、ラインのスタート地点では、①オゾン水によって瓶の減菌が行われています。伊太利製のこの機械は、ちょっと面白いんです。並んで入って来る瓶を1本つかむと、中心の円筒形の機械を中心に、半円状に"くる~ん"と回って洗浄します。その動きのラインが、とっても美しいんです。あら、優美だわ。思わず呟く程です。
②いよいよボトリング。透明な瓶に、黄金色のワインがキラキラ光りながら注入されます。アストールの甘い香りが辺りに漂って、それはもう幸せな気持ち。香りだけでも酔いそうだなあ。ウナギの匂いでご飯を食べるって言いますが、この香りで洋梨のタルトやチェリーパイを食べる事が出来そうです。③スポッとコルク栓をした後は。④コルクかすが入っていないか、欠けていないか、量は適切か等人の目で検査し、⑤キャップをかぶせて出来上がり。アストールのラベルは一枚一枚手作業で貼るので、ワインは出番が来る日を地下の大セラーで待つ事になります。
「自家農園やシャトー・タケダ等は、ペーパーフィルタを通しません。」瓶の中で長期間熟成させるタイプですね。「その方がうま味が増しますからね。そういうのも大切なポイントですよ。」
機械はほとんどが外国製です。ボトリングのラインは伊製※1。ペーバーフィルタの枠は独製、ペーパーフィルタは英製。そうなると大変なのがメンテナンス。「以前はうちのスタッフが機械の修理もやっていました。代理店が東京なので直ぐには来る事ができないのです。」代理店でもわからなくて、典子氏が仏の商社に電話をし、更に伊のメーカーに聞いて直した事もあったそうです。「今は近くの機械を扱う会社にお願いして面倒を見てもらっています。助かってますよ。」
何でもこなすタケダスタッフ。尊敬します。
※1 こぼれ話をご覧ください。

Winery通信 Vol.13 

「春休みも残りわずかだというのに、昨日は吹雪でした」

2005.春

この冬は降り始めが遅く、1月中旬以降に雪が集中しました。蔵王に職場がある私は、冬用のもこもこコートがまだ手離せません。 さて。雪に閉ざされる北国のワイナリーでは、この期間、工場仕事が中心です。典子氏の舌が決めたワインのブレンド指示書に従い、工場中に広がる良い香りの中、樽空け・ワインの瓶詰めが行われるのです。ああ、何て幸せな香り。心はフラフラとそちらに引っ張られますが、積雪量の多かった今年は冬の畑についてお話しましょう。

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日本でも海外でも雪の積もらない土地では、ワイナリーの冬仕事は葡萄の剪定だそうです。樹が休眠するこの季節が、最も適しているからです。そういえば、以前何かで読んだ事があります。仏の農家では切り落とした葡萄の枝で火をおこし、肉や野菜を焼いて食べるそうです。おいしそうだなあ。雪が降る前に、大急ぎで剪定するタケダでは「そんなひまは無いねえ」。枝はそのまま雪の下敷きに。呼ばれようと思ったのに、残念。では、雪国ならではのイベントってありますか?「それはサラドコギだな、やっぱり。」え?サラド?何?
漢字にするなら"更土"ではなかろうかと。どっかり雪が積もり、且つまだ誰も足を踏み入れていない所。雪の更地。「こぐ」は「扱ぐ」か。更土扱ぎ。除雪のなっていない所へ踏込んで行く様を言うらしい。方言だと思われるが、タケダ以外では「聞いた事がない。」とスタッフも口を揃える。山形県、北部の寒河江市方面で使うらしいが、どなたかご存知の方がいらしたらご連絡下さい。
さて、タケダの「更土扱ぎ」どはどんなものか。
棚作りの葡萄畑に大雪が積もると、重みで棚の支柱や針金がつぶれてしまう為、葡萄棚の雪降ろしをするんです。その時、畑は勿論そこに至る農道も全く除雪されていない。そこで更土扱ぎをしながら作業をするんですね。
今年は1月17日、膝上まで積もったトコロで更土扱ぎが発令されました。デッキブラシや幟のポール等各自好みの得物を手に、重ね着の上にカッパをすっぽりかぶり、首にはタオルを巻いて、怪しい一団は急な斜面に一列で入って行きます。先頭は「若くて大きい人」(除雪車の役ね)。棚の下に入り、枝をたたいたり木を揺すったりしながら雪を落として進みます。山の上にスライドしながら約2haの畑で格闘するのです。「うちで棚なのはマスカット・ベリーAとブラック・・クイーンだけだから、他の農家に比べたら少ないよ。」山形の葡萄農家は皆どこでもやっている事だそうです。
足跡の無い雪に入るのは、子供の頃の楽しみでした。田んぼに落下して人の形を付けたりね。大人になると人目もあってできません。少し羨ましい。更土扱ぎって、少しだけ大人の雪遊びみたいですね。「皆でやると楽しくない事もないけど、余裕ないです。とにかく体力勝負ですから。」
9人で朝から午後3時まで掛かりました。「膝がカクカクになって、腰から下がだるくて。」後の仕事が大変になってしまうそうです。如何に重労働かが窺われます。今シーズンは1回でした。2年前は0回。当たり年の2001年は2回。今年の夏は、暑いかな。

Winery通信 Vol.12 

今年も残す所少なくなりました。

2004.冬

「昨年より短い。」発言を毎年やってしまい、子に呆れられてます。 info11_1.jpg今回はじっくりと、個人的なオススメをさせて頂こうと思います。 タケダワイナリーには美味しいワインは数あれど、一主婦の私は五千円・一万円のワインは、何か口実がなければ買えません。お正月や家族の誕生日(自分は除く)、結婚の御祝いに等。しかし、「サイフの風通しが良くなってるけど、それでも今日は美味しいワインが飲みたいじゃないか。めずらしく山形牛(広告の品)を手に入れたんだもの。」という時、私は蔵王スター赤・辛口、720ml税込\1,060を買い物カゴに入れます。蔵王のお釜(火口)のラベルでお馴染みの瓶は、実は、「これが千円!?」というソムリエもビックリの中身です。皆さん知ってました?近頃、さらに美味しくなってるんですよ。 info11_02.jpgワインメーカー典子氏に伺います。葡萄の種類を変えましたか?「いえ、品種は同じですよ。ただ質がググッと上がっています。」 蔵王スターの一升瓶や720mlは、自家農園100%原料のワインではありません。上山市、天童市の栽培農家が作った葡萄を使用しています。ワインに適した果実になる様に、大変な手間を掛けて頂いています。典子氏曰く「農家にとってはイヤだろうなあと思う事も色々お願いしているんです。例えば"摘房"(てきほう)。実のつきはじめに、房を間引いて、より充実した葡萄にする為の作業ですが、一定面積からの収量が減ってしまいます。 農家の方にとっては、売る品物が減るので収入減を意味します。」でも、その辺は特に厳しくしてもらってる。「本当にね、味が全然違ってくるんですよ。お陰で葡萄が格別になりました。」 info11_03.jpg仕込みの際にも、手間は惜しみません。空気に触れる時間を少なくする為、可能な限り短時間で行う"しぼり"。機器の隅々までの清掃は、休憩時間が入る度、徹底的に行っています。実際、仕込みの時の集中力と、そのペースの速さは私も身をもって体験しました。「小さい事の積み重ねが、味になる。だから絶対に手は抜きません。」いつにも増してキリリと語る典子氏には、余程の決意がうかがえます。「"蔵王スター"はウチの原点です。"キュベ・ヨシコ"・"シャトー・タケダ"等、評価を頂だいしているワインは、これがあってこそ造る事が出来たのです。高額な物は良いのが当たりまえ。ですが、日常飲むワインが美味しくなければ、話になりません。」冠(賞)はいらないと、フツーの顔で言う無欲の人柄は、昔から変わらないのね。 蛇足ながら。山形牛のスネ&モツ煮込み、※モッテ菊&えだ豆の酢物と蔵王スターの相性はバッチリ!豚。もとい馬肥ゆる秋しちゃいました。あはは。ああ(ため息)。 ※山形特産の淡い紫色の食用菊

Winery通信 Vol.11 

「2004年今年初の仕込み体験記」

2004.秋

 じめじめ雨の無かった今夏は、病気が付く事もなく、葡萄は仲々に良い出来だそうです。八百屋の店先で、、秋の到来を告げるデラウェアはワイナリーでも一番に仕込まれます。
 8月末、今年初の仕込みが行われました。主に上山市の農家から、良質の物を選び買い付けたデラウェアをこの日は10t。大型のドイツ製とスイス製の2台の圧搾機を使って搾ります。PM1:00晴天の下、皆首にタオルを巻き、前掛け、ゴム手袋、ゴム長靴で作業開始。機械等のセットをしつつ、保冷庫から葡萄のコンテナ(収穫箱)60コを積んだパレットをフォークリフトで運び出します。今日フォークリフトを操るのは社長です。「このドイツ製圧搾機はウチのIT君です。コンピューター制御になってるからね。」と言いながら、典子氏も気合いの入った顔になっています。搾るのは機械ですが、その前後は全て人の手です。社長、典子氏、スタッフ6人+ネコの手(私)の9名。本当はもっと欲しい所ですが、畑の摘房作業も並行して行われているので、この人数で頑張ります。

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①コンテナをのせる ※圧搾機に向かう ③取入口に空ける

①16kg入のコンテナをローラー式のコンベアに次々乗せる。②それを手押しで送り出し、③取入口に空ける。④空コンテナの片付け、⑤取入口の補助。1つのラインで少なくとも5人は必要です。ドドーと空けられた※葡萄は、まるで駅のエスカレーターに乗っている様にベルトコンベアで圧搾機に入れられます。振動で弾みながら昇っていくのが、スキップしているみたいです。熟した葡萄の甘い香りが辺り一面に。が、それを楽しむ余裕も無く、「ハイ、ハイ、ハイ。」と2拍子で仕事は進みます。私は②の担当でしたが、5~6コンテナに1回、除茎後の出口に葡萄の茎が詰まるのをかき出すのも役目です。出口が少し離れている為、ラインからはずれなければなりません。もたもたしていると①担当の方が1人で16kg持ち上げた他に5~6コンテナを押すことになります。ウォー急げぇと自分に気合を掛けつつ、皆さんのペースについていくのがやっと。本当にタケダ・スタッフって働き者だぁ。日頃ナマケモノの私は、開始から30分で、早くも肩の内側(腕の付け根)が張ってきました。明日は筋肉痛かも(明後日だったりして。)
非常に集中した時間で約1時間。今日予定の分はプレス機に入った。それにしても急いで作業するんですね。「出来る限り短時間で搾りたいんですよ。酸化を防ぐ為にもね。」搾ったジュースはすぐさま遠心分離機にかけられ、発酵タンクで2週間、ろ過後瓶詰めされます。蔵王スター「特別限定醸造ワイン」白として10月1日に発売されるそうです。
3時の休憩の後、3人が片付けに残り他のスタッフは畑作業に出掛けました。道具類も機械も念入りに水洗いし掃除。その間もIT君は動き続けザーっと搾り汁が出ています。葡萄の匂いと搾り汁のそれとは若干違います。甘いだけでなく、若いバナナの様な青い香りも混ざるのです。傾きかけた陽ざしがやわらぎ、時折さわやかな風も吹く中で、今年のワインが、とても美味しく出来ますように祈るのでした。

Winery通信 Vol.10

「さくらんぼの収穫見込量がニュースになり、梅雨入りが近いことを実感しています。」

2004.夏

6月の降り続く雨には気が滅入りますが、合間の晴れの爽快さは全くすんばらしいです。 レストランでワインを美味しく頂くのはそう難しい事ではないでしょう。値段の松竹梅とは別に、玄人がそのワインを一番美味しい状態で提供してくれるから。では、自宅ではどうか。奮発して買ったワインを私は本当に美味しく飲んでいるのか?出来る限り美味しく頂きたい。それもお手軽、お気楽に。それには押さえておくべきポイントがあるのでしょうか。 酸化したワインはまずい。だからこそ昔から酸化防止の手立てが講じられている訳ですね。一方で、ワインをデキャンタして飲むという方法があります。ワインを瓶から別容器に移し替え、すっかり空気に触れさせて頂く。これは矛盾しないのだろうか。今回はその辺りを探検したいと思います。

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幼い頃テレビドラマで、ガウンを着たおじさんがガラスの花瓶からグラスに醤油を注いで飲むシーンを観ました。今考えるとあれは花瓶ではなく"デキャンタ"で、液体は赤ワインだったのでしょう。「ワインの栓を閉めるまでが私の仕事でその先に関しては素人です。」と言うワインメーカーの典子氏に無理矢理話をしてもらいました。
4年間仏留学していた典子さんに質問。仏人はデキャンタしてワインを飲むんですか?「仏人も色々ですが普段はしないです。いわゆる上流の家を除けば、一般家庭でデキャンタは持って無いんじゃないかなあ。」そもそも何故デキャンタするんですか?「デキャンタするのは2つの理由からです。1つは瓶の中の澱を取り除き雑味のないワインを味わう為。もう1つはワインを"起こす"為です。」ワインを醸造から飲むその時まで①温度、②酸化と還元の管理が重要です。タンクや樽での醸造熟成の間は酸化に属します。空気が無いと発酵しないからね。瓶に詰めコルクを閉めると、そこから先は"還元"です。理科の"還元"は酸化の反対語です。文系的には還元は『ワインが寝ている』、抜栓してワインを『起こす』又は『開く』と表現します。「コルクを抜けば酸化が始まりますが、"起こして"あげないと香りや深い味は出てこない。酸化=悪ではないんです。」若いワインは硬い蕾と同じで、開くまで少し時間がかかる。一杯目から開花したワインを飲みたい時、『ほら起きろ』と酸化を促し"起こす"のです。-なるほど。しかし、我家の食器棚にデキャンタは入りません。「デキャンタを持っていなくても家庭で簡単に出来る方法がありますよ。私もソムリエの松本和子さんに教わったんですけど。」
揃えたいのは大きいワイングラスを2つ。ワインは飲む2~3日前に立てて置き、澱を瓶の底に沈める。コルクを抜き、ひとつのグラスに注ぐ。この時、間違ってもワインがどんぶらと波打つような手荒な扱いはしない事。澱がまざっちゃうから、ワインを注いだグラスから別のグラスに移す。おしまい。「これでデキャンタしたのと同じになりますよ。大きいグラスだと大きく空気に触れるし、香りと味が同時に味わえるでしょう?薄いクリスタル製が、本当はお薦め。唇に当たる感触が味覚を大きく左右すると言われてます。飲む際の適温は赤20℃前後、白15℃まで。冷やし過ぎに注意して下さい。低めの温度から始めてみて、ワインの変化を楽しみつつ美味しい地点を探ったりしてね。」
手頃なところでは「蔵王スター・ヴィンテージ」、新発売の「ピュア・シャルドネ」で試してみてください。グラスをもう1つ並べ、瓶から注いだままの一杯との違いを比べても面白いそうです。

Winery通信 Vol.9 

「降り始めの遅かった雪がようやく消えました。」

2004.春

今年は桜の開花が早く、北国山形でも入学式を花の下で迎えた所もある様です。ひとり探検隊といえど、たまには人と触れ合いたいずっと一人は寂しいわという事で、今回はタケダワイナリーに寄せられたお客様の声とご一緒させて頂きとうございます。 インターネットでご注文下さるお客様が飲んだ感想をメールで、お店でお買い上げになってのお叱りや疑問に思った事をお手紙でと、ワイナリーには日々お客様の声が届きます。どのご意見もスタッフ全員が目を通し其々の仕事の目安にしたり励みになっています。お客様の方にはワインメーカー典子氏がお返事を差し上げているそうです。今回はその中でも近頃多く寄せられる2点について、典子氏に答えてもらいました。掲載にあたり快く承諾して下さった若宮様、ありがとうございます。尚、字数の関係上一部割愛させて頂きました。

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Q1.2003年の特別限定醸造ワイン頂きました。昨年は赤も白もおいしかったんですが今年のワインは酸味が強いように思われます。フランスは猛暑だったけど山形は太陽が足りなかったようですね。(石川県/若宮様)
A1.まず葡萄と気候について話します。果物は実ってから熟していくうちに糖分が増え甘くなりますが、反対に酸は減少していきます。未熟の果実を食べると酸っぱいでしょう。酸は元々もってるんです。成熟期である夏に十分な日照があれば、糖度が上がり、酸が減少します。ところが'03年のような冷夏の時は、糖はある程度上がるものの酸は下がりきらず残りがちです。ワインを造る際にもそれが顕れました。ウチでは仕込みの時、このタンクは"どこの"とわかるように収穫した畑ごとに分けています。場所によって糖・酸のバランスが違うので製品化の際にそれをブレンドして調整してありますが、人工的な処理はしていません。ワイン造りには「減酸」という技術もありますがどうしても風味は損なわれる様です。より自然な味のワインを召し上がって頂く為にウチでは敢えて行っていません。色々お好みもあるとは思いますが、人工的に「何かした」から酸が強いのではなく、葡萄そのままの味なのだとご理解頂けたらと思います。

Q2.ワインの中に透明で小さいガラスのような結晶体が入っています。
飲んでも大丈夫?(みやぎ生協様 他)

A2.大丈夫です。この結晶体は"酒石"です。葡萄中に含まれる酸の一つ"酒石酸"が、ミネラル分と結合して出来たもので「ワインのダイヤモンド」とも呼ばれています。'03年収穫は酸の強い年だったのも要因かと思いますが、低温にボトルを置いておくとより析出しやすい傾向があります。又、原料としてバルク(輸入ワイン)やマスト(濃縮果汁)を使用した場合は出にくいようです。品質には何ら問題ありませんが、気になる様でしたらボトルの底に結晶を沈めてから静かにグラスに注いでください。
ワインは工業製品と違い毎回均一のものを造ることは出来ません。もちろん、毎年より美味しいワインを安心して飲んで頂く為に、私共もいっそう努めて参ります。
あなたも疑問・質問お持ちじゃありませんか?どの様なことでも結構です。
不肖ながら私が皆様にかわりワインメーカーに聞いて参ります。
ワイナリー通信までお便りお寄せください。お待ちしております。

Winery通信 Vol.8 

「今回は仕込みについてレポートします。」

2003.冬

突然ですが蟷螂(かまきり)予報によると今年は雪が少ないそうです。古くから伝わる"自然天気予報"ってありますね。猫が顔を洗うと雨が降る等の。蟷螂が木の高い位置に卵を産みつけた時は大雪、低い時は少ない年といいます。「今年は低い」という事ですがどうでしょうね。ワイナリーでは、10月で収穫も終わり、今「仕込み」の最中です。果物の葡萄がお酒に変身するまでを「仕込み」と言いますが、ここタケダワイナリーでは瓶詰めまでをその工程としています。畑での収穫作業と並行して行われ、且つ(仕込み中は)一日も休みが無い、一年で最も忙しい時期です。赤と白、仕込みの方法は違うんですか?「はい。白の辛口と甘口でも異なりますよ。」ワイン→醸造→仕込みと連想するのは(多分)私だけでは無いでしょう。素人目には"これぞワイン造り"、今回は「仕込み」についてレポートします。

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白・辛口。

①果汁搾り。葡萄を茎から外し圧搾機に入れる。果実の入ったドラムをゆっくり回転させ、自らの重さで流れ出た果汁(フリーラン)を発酵用タンクに入れる。
②果汁に乾燥酵母を植える。酵母は自家製?「いえいえ。ドイツのガイゼンハイムという大学の研究所のもので輸入品です。」
③2~3週間掛け発酵させる。葡萄の糖がアルコールに変わるのにこれくらいの期間が必要で、発酵が終わる頃丁度11~12%のアルコールとなる。
④発酵を止める。亜流酸ガスを注入する事で、残っている酵母を死滅させる。と同時に、酵母がいなくなって始まるワインの酸化も防ぐ事が出来る。
「酸化防止の方法としてはこれは歴史が古く18世紀のナポレオン時代の記録に残っているそうです。」そんな昔から!この方法が確立されたお陰でふる~い(高価な)ワインが現存するのですね。尚、「無添加はこの工程がありません。」
⑤酵母を沈殿させる。
⑥上澄みを瓶又は樽に詰める

白・甘口はアイスワインを例にします

①収穫した葡萄はそのまま-25℃でカチコチに凍らせる。「ドイツ等寒い所と違い人工凍結させています。」
②1~2晩5℃の部屋に置く。
③圧搾機に入れる。果実の水分が凍っている為、流れ出たフリーランは"糖"そのもの。果汁の糖度を見つつ圧力を掛ける。「氷が溶けない内に果汁を搾ってしまいます。」
④酵母を植え発酵。「辛口との違いは、果汁の糖度が非常に高い為、アルコール11~12%に達しても糖が残っている点です。」・・・以降は白・辛口と同じ。「葡萄の皮が黒く(濃く)ないと赤ワインになりません。」

赤ワインの仕込みを教えて頂きましよう。
①茎を除き実(粒)のままタンクへ。
②酵母を植える。
③発酵。「発酵が始まると、ガスで実が浮き上がってしまうんです。これを"シャポー"帽子と呼びます。シャポーになると困る事が2つある。皮の色・味が充分に抽出できない。上部分が乾いて雑菌がつく。そこで・・・
④「醸し」(かもし)を毎日欠かさず行う。タンクの上から棒でシャポーを突いて液に浸す「ピジェ」、下から液を抜いて上から掛ける「ルモンタージュ」と"醸し"には2つの方法があるが、どちらも酵母に酸素を与える事になり、より発酵が進む。
⑤シャポーの下の液(フリーラン)を抜き樽や瓶に入れる。
⑥シャポーを圧搾機で搾る(プレスラン)
現在タケダでは、一升瓶「蔵王スター」にプレスランが少し入るだけで、それ以外のワインはフリーランのみで造られています。エグミの少ないすっきりした味に仕上がるそうです。赤のプレスランが滴る様は美しく、ウチの次男曰く「紫色の真珠が落ちてくるみたい。」ですよ。

Winery通信 Vol.7 

「真っ赤に燃える太陽とほとんど会えなかった今夏」

-東北の稲が10年ぶりの不作となりそうだとニュースで流れています-

2003.秋

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他の作物も例年通りとはいかない様です。ある果樹農家の方にお会いした時、「今年はいかんねぇ。特に葡萄は、全くだめだなぁ。」とおっしゃっていました。大変だなぁと心配しつつ、取材に訪れました。「おかげ様で、ウチの葡萄はまあまあといった出来ですね。」あら、ほんと?では、今回は「雨と葡萄」について教えて頂きましょう。
皆さんは生食用葡萄の畑をご覧になった事はありますか?「近くに農地はないわ。」とおっしゃる方でも、観光葡萄園の写真などで御存知かと思います。棚作り葡萄樹は、ビニールハウスが掛けてあり、直接雨があたらない様(レイン・カット)になっています。さらに、高級葡萄ともなると、一房一房に紙袋が被せてあるのが普通です。生食用は"見た目"も重要なので特にその必要があります。ワイン用葡萄でも所によってはビニールハウスが標準だそうです。なぜ、それ程に雨を嫌うのでしょう。「成熟期は味が薄く(水っぽく)なる為、雨そのものも歓迎しませんが、一番こわいのは、水気(雨)を媒体として葡萄に病気が付く事です。病気というのは"菌"です。菌は水気のない所では元気がありません。たとえ、部分的に病気が発生したとしても、乾いていれば畑全体がやられる事はないのですが、雨で濡れると、それが広がってしまう恐れがあります。」タケダの葡萄畑は、かき根仕立ては勿論棚作りもビニールハウスはありません。雨除けは全くしていませんね。「専門的な話になりますが、葡萄栽培には年間800mmの降水量が必要といわれています。これに対し山形は1200mmですが三分の一は雪ですから、雨量としては800mm。決して多くはありません。問題は降る時期です。欧州は5月が雨期にあたり開花前に降ったら終わりと、非常に望ましい環境にあります。日本は雨期・乾期という気候ではないので、そこが難しいわけです。まあ、山形の場合、夏にジクジクと降り続く雨はまずありませんから、果物栽培に適している土地といえるでしょう。適地なのだから徹底した畑の管理をすれば、健康な樹が育ち、実りがあると、ウチでは考えています。」「人間と同じで、過保護にするとたくましさに欠けた樹になってしまう。土の質、均等に行き渡る太陽光と風通し。早めにまわりの環境を整える様にして、本人(樹)にはあれこれ手を掛け過ぎない様にしています。」それにはじっくり注意深い観察が、まず大事だそうです。― "手を掛けずに目を掛けろ"何だか最後は耳の痛い話になってしまいました。

Winery通信 Vol.6 

「今回は畑についてのお話を・・・」

2003.夏

information_052.jpg「伸びる」力を持つ生きものを見るのは、本当に嬉しい気持ちになります。  切れ目なくやって来る季節の中で敢えて区切りをつけるとしたら、葡萄造りの最初はどこでしょう?芽吹きの春か開花の初夏か。正解は、秋。収穫後すぐに行う"土"のサンプリングが、畑作業"その1"です。10月、全ての葡萄の収穫が終ると同時に採取した土は、畑作業が休みになる冬の間、詳しく分析されます。これは今もオーナー自らが行う重要な仕事です。11月下旬。雪が降る前に、タケダに協力して下さっている葡萄栽培家の皆さんに手伝って頂きながら剪定をします。「一般的に、以前は1ヘクタールからの収量が多くなるように心掛けた栽培が主流でした。でも葡萄の質を考えると、収量を減らして一粒一粒を充実させる事が必要です。仏ではワインの等級によって、一定面積からの収量上限が法律で定められています。それは大変シビアなもので、国が抜打ち検査を行い、悪質な違反が見つかるとワインの等級を下げられてしまう事さえあるのです。時には剪定した畑を見て調査するんですよ。」シャルドネ種の場合、一本の樹から二本の枝だけを残して(ダブル・グィヨー)あとは切ってしまいます。しかも、その枝の長さは約30cm。皆さん想像してみて下さい。約1mの樹から30cmの枝が2本ヒョロ。素人の私なぞは「ワインが造れるほどの葡萄が果たして採れるんだろうか。」と心配になる程さびしい眺めです。「どれを落としてどの枝を残すのか。それはその人の哲学です。私が仏で学んだのは醸造技術だけじゃなくて、むしろその事の方が大きかったと思います。」典子さんは(葡萄栽培も含め)ワイン造りの中で剪定作業が一番好きだとおっしゃいます。腕の見せ所ですね。切落とした枝の上に雪が積もり長い冬が来ます。

information_051.jpg 雪が溶けたら棚直しと枝集め。3月下旬。枝を"支え"のハリガネに留め誘引を行う頃、剪定した切り口からポタポタと樹液が滴る様子は感動的です。乾いて表面がひび割れた畑で、枯れ木みたいに見える枝の先が、日ざしの加減でキラッと光ったりすると思わず"雫"を飲んでみたくなります。(私と子供達は昨年実行した)今年の誘引は3月第4週にはじまりました。私の訪ねた4月15日は晴天。虫と花粉症対策として完全防備のスタッフが黙々と仕事に励んでいました。いつもにぎやかな人達だけに、その姿は異様であります。「少人数でこの広さ(15ヘクタール)ですから一所懸命にやらないと終わりません。」(スタッフ談)ごもっともです。失礼な事を申しました。

information_053.jpg 畑仕事は、駆け足で進む季節との追いかけっこです。やるべき"時期"は決まっています。4月下旬余分な芽を取る「芽欠き」と樹そのものから芽吹いたのを取り除く「胴吹きとり」に2週間かかります。これによって風通しが良くなり、葡萄に太陽の光が当たるようにします。病害虫に強い葡萄に育てる為にも手抜きは出来ません。6月「夏誘引」、そして開花。7月成長点を切る「夏切り」。8月摘果。9・10月収穫と続きます。工場での瓶詰めや仕込みも平行して行われているので非常に忙しい毎日です。その辺りのお話しは、また今度に致しましょう。

Winery通信 Vol.5 

ワイナリーひとり探検隊!(大寒の巻)

2003年3月号

information_044.jpg雪が溶けた畑にチラホラ緑が見られるものの春と言うにはまだまだ寒い毎日です。 今回は「初夏の巻(2002年6月号)」でお伝えしたキュベ・ヨシコその後の行程。酵母共瓶詰めされ2年半、ゆっくりと発行を終えシュール・リ(澱と一緒に寝る)していた"眠れる美女"は瓶口に澱を集める作業ルミアージュに入ります。専用の厚板(名称:ピュピュトル)に瓶を逆さにした状態で斜めに差し、それを1日1回90度ずつ回転させると差し込み穴の構造上角度も上がり1ヵ月後は垂直に。1年で最も寒い時期にいよいよデゴルジュモン(澱引き)が行われるのです。3日間0℃で冷やしたワイン(ルミアージュまでは10℃)は逆立ちで貯蔵庫から工場へ。

information_042.jpg私が訪ねた3月5日も真冬並に寒い日でした。「これから瓶口を-25℃で凍らせて澱ごとキャップを飛ばします。瓶の中は6気圧になっているのでポンッといくんですが、気温が高いと吹きこぼれるワインも多くなって。」勿体ないですね。「本当は大寒の頃がいいんです。」2月にも澱引きしたそうですね。「タケダの最上級キュベ・ヨシコとなる'92年です。シュール・リ10年モノです。今日のは'99年。」

information_041.jpgポンッと開栓後目減りした量の調整、蒸して柔らかくしたコルクをはめワイヤーを付けるというのが作業の大まかな流れですが、瓶口の不凍液を洗ったり残った澱を取除いたりと衛生面には十分注意を払います。15分間の休憩時にも用具は全て水で洗い流していしました。「行程はシャンパンと同じですが大きな違いが1つ。それはウチでは何も足さない事です。」仏の北部シャンパーニュ地方では伝統的にデゴルジュモンの際、香りづけにリキュールやコニャックを添加する(ドザージュ)そうです。タケダではシャルドネを味わってもらう為、同じワインで量の調整だけを行っていました。まだ落ち着いていないという出来たての'99年を飲んで見ました。泡立ちがボワッときます。熟す前の林檎をかじったような香りがとても若々しい感じです。透明でキラキラしたイースト香のさらに後、少し苦味が?ワインメーカー典子さんによると「それは澱の名残でしょ。まだ暴れてるんで。私たちはこの半年後の味がわかるので良し悪しの判断がつきます。」少しおいたら蜜の入った林檎の香りに変わってきました。凛としたそれでいて可憐な少女の様なワイン。発売予定の1年後にはどの様に変わってるんでしょうか。ワクワクします。いい勉強をさせて頂きました。
それにしても、10年モノの'92年てどんな味なんでしょうね。すんごいんだろうなぁ。うちの長男も'92年生まれです。

Winery通信 Vol.4 

ワイナリーひとり探検隊! (秋の収穫祭の巻)

2002年11月号

山形の山の稜線が白く染まり、約半年に及ぶ北国の冬がやってきました。ここタケダワイナリーから眺める蔵王の姿は冬が格別に美しいのをご存知ですか?私にそれを教えてくれたのはタケダの工場長石川さんです。

information_03.JPG去る10月6日第二回タケダワイナリー収穫祭が行われました。葡萄栽培家、販売店、レストラン関係者等招待客は250名を超え大変賑やかでした。私も今回は二人半探検隊(ミルクタンクが必要な三男とサポーターの夫)としてお招きを頂きましたのでその時の模様をお伝えします。午後12時半より社長と専務・岸平典子さんが自社畑とワイナリーを案内して下さいました。普段の見学コースでは入る事が出来ない発酵室やシャトー・タケダの眠る小セラー、さらに奥キュベ・ヨシコの間までタケダ「ならでは」話を聴きながら皆でゾロゾロ。若いソムリエの方でしょうかデジカメ片手に熱心です。その後午後2時よりワインセミナー。講師は日本最初の女性ソムリエ松本和子さんと岸平典子さん。スペシャルゲストに「田崎真也の秘蔵っ子」ワインコーディネーター・友田晶子さんを迎えシャトー・タケダ(赤)'01年バレルテイスティングをしました。稀に見る上出来葡萄の'01年収穫ワインが樽の違いでどの様にかわるのか、熟成中の樽からサンプリングした3種と樽に入れていないもので試飲。樽に入って1年経っていないのにこんなに違うのかとオドロキ。このワインの10年後を想定し最も美味しくなる様ブレンドするのかと又オドロキ。この企画を百人相手に行う冒険に又々オドロキ3でした。
講師の方々を見ているとワインを職業にするというのは、言葉を職業にする事でもあるのだなと感じました。3時からは「ビッグなミニコンサート」原田禎夫さん、加藤知子さん、店村眞積さんの弦楽三重奏。こちらも大好評。

午後4時過ぎ。天候に恵まれた秋空の下で収穫祭が始まりました。社長の開会のあいさつに続いて今年のワインとスタッフ紹介が岸平専務よりありました。その中で「違法農薬問題で揺らぐ山形にあってタケダワイナリーにもお客様から問い合わせが殺到した。」そうです。自家農園は勿論、県内委託農家より購入しているデラウェアの安全性は?対応に追われパニックになりかけた時「農家の方々が自主的に「安全性に責任を持つ」念書を作ろうと申し出てくれた。世話人の呼びかけに次々と同意が集まり、取りまとめられて書類が届いた。こういう方達にタケダは支えられているのです。」と感謝を述べていたのが印象的でした。
豚一頭の丸焼き、東京のチーズショップ・フェルミエによる本当に美味しいチーズの試食、豪快な'01年メルロ種100%の225リットル樽明けと楽しさ一杯。唯一の心残りは授乳中の身である為ワインが少ししか飲めなかった事、だなあ。

Winery通信 Vol.3 

ワイナリーひとり探検隊! (初夏の巻)

2002年8月号

 「お暑うございます。」今年の夏の挨拶はこの一言に尽きます。いつまで続くのでしょうか、山形の連続真夏日が20日を越えました。
 出産予定日を2日後に控えた6月26日。晴天に誘われ訪ねたら、キュベ・ヨシコの瓶詰め作業を見ることが出来ました。機械を使わない全くの手作業をこの日は6人で行っていました。
「今日は工場には入れません。外から見学して下さい。」いつもより少し張りつめた空気のなか、国産初のシャンパーニュ方式で造られた発泡ワインの瓶詰めは「んだら、はじめっかっす。」と、あくまで和やかにスタートしました。日本の発泡ワインには仏のシャンパーニュの様に厳しい規定は無く、普通の白ワインに炭酸ガスを充填したものが多いのですが、タケダのキュベ・ヨシコは専用に醸造した白ワイン(ベースワイン)にシャンパン用酵母と糖分を加えて瓶詰めにし"瓶内二次発酵"によって造られた本格派です。セラーマスター典子さんに訊いてみましょう。ワインに糖分を加えるのは何の為ですか?「瓶内で酵母が働いて醗酵する訳ですが、それには糖分が必要です。」「??」「小学校の社会見学に来る子達には、酵母が糖分をエサとして食べてオナラをする。それが炭酸ガスとなり発泡ワインになると説明してます。」ああ!なるほど。私にも理解できます。「酵母はその後、死骸となって沈殿しますが、それが澱(オリ)です。」酵母入りの濁っているワインを瓶に詰め、変わった形の白いプラスチックのキャップをかぶせ王冠で蓋をします。このキャップはシャンパン専用の物で中央部に澱が溜まる造りになっていて、3年後に澱を除く際にはキャップを外しそれごと捨てます。キュベ・ヨシコは他のワインの葡萄に先駆け一足早く収穫されます。ちなみに、私も摘んだこのタンクの中の'01年シャルドネは8月下旬の収穫でした。作業の合間に食べてみたら想像より酸っぱく、糖度が高い方が良いワインになると単純に思い込んでいた私は、意外に思ったものです。「確かにある程度の糖度は必要ですが発泡ワインには酸味と香りが大切です。又、風味を損なわないよう白ワインに比べ圧搾は軽く行います。」広大な葡萄畑の中でキュベ・ヨシコ用の場所も決まっているそうです。醸造は樽を使用せずタンクで行います。余計な菌が入らない様如何にクリーンに瓶詰めまでもっていけるか。デリケートな味のワインは、デリケートに造られていました。

Winery通信 Vol.2

ワイナリーひとり探検隊! (春の巻)

2002年6月号

今年は春の訪れが早く、うかうかしている間に花々の見頃が過ぎてしまうことも珍しくありません。ここ上山のタケダワイナリーでも、例年より2週間程はやいペースで畑作業が進んでいるそうです。

はじめまして。今回よりワイナリー通信の担当をさせて頂きます菅井由美子です。「バイト代の他にワインが付くぞ、どうだ?」の話しに釣られ、昨年の葡萄収穫に来たのが8月末。以来、工場が忙しい冬から春にかけ、タケダワイナリーの"猫の手"に成済ましお手伝いをさせて頂きました。不慣れな私も働き者の明るいスタッフの皆さんと一緒に仕事をしながらタケダワイナリーのタフで真正直なワインの味はここで生み出されているのだなと感じることしきり。グラス一杯のワインの楽しみが何倍にも膨らむ様です。そんなヨロコビを皆様に伝える事が出来たらと思っています。

info011.jpg「樽空けをする」の連絡を貰い4月下旬に伺いました。
この日は"シャルドネ100%"と"ヴィンテージ・白"。仏製のオーク樽に寝かせてあった2000年収穫シャルドネ種をセラーマスターの指示書に従いホーロータンクに空けていきます。樽1つ1つに番号と収穫した年、畑が記入されていて、其々味や香りが違うそうです。
どの樽を組合わせるか(ブレンドするか)でワインの味が決まりますが、決める人が"セラーマスター 岸平典子"氏。二十年来の友はエライ人だったのだと感心しつつ写真をパチリ。
ところで、何をしているんですか?「新品の樽を使ったときは瓶にサンプルを採ります。樽といっても木の産地等によって色々で、うちのワインとの相性を見る為これはセラー(貯蔵庫)で何年も寝かせ成長をみていきます。」ちなみに、新樽を使うのは葡萄の出来が良い年だけだそうです。新樽は力強いワインになる反面、葡萄が弱いと樽の香りに負けてしまうとか。
そして曰く「シャトー・タケダは新樽のみです。」という事は2000年のワインは-。「ん(う)まいよ!期待してて下さいさい。」
5,000リットル容量のタンクに入れられた後、澱(オリ)取り剤を入れ落ちつかせる事1ヶ月。瓶詰めされ、セラーで休められたのち、出荷の際には1つ1つ手貼りでラベルをはるこの2本。「2000年シャルドネ100%」「2000年ヴィンテージ・白」。はやく飲める日が来ないかな。

Winery通信 Vol.1 

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著者プロフィール

菅井由美子(すがいゆみこ)
山形市在住/弊社社長、岸平の高校時代からの友人。成人から中学生の3人の子供の母親。葡萄収穫をはじめ、ワイナリーでのいろいろな仕事の経験がある。それを活かしつつ、タケダワイナリーの今の様子をレポートタッチでお伝えしています。