ワイナリー通信

雪国ワイナリーの冬

Winery通信 SPRING Vol.75

 

山形の大雪が全国ニュースになる度、タケダワイナリーでは「大丈夫ですか」とお見舞いの電話を頂戴します。雪かきフォークリフト.JPG

 山形県の中で山形市・上山市は積雪が少ない方で、TVで見るような"玄関が雪に埋もれる"ことはありません。1m積もることは稀です。

 しかし、上山市も、降ればやっぱり雪かきで一日が始まります。除雪車でガーッと一気に出来るのは広い駐車場だけ。あとは人が雪かきスコップを使って片付けます。全社員総出(もちろん社長も)の人海戦術です。IMG_3265 (1).JPG

 ひと汗かいた後はワインの瓶詰めなど屋内作業が中心。ボトリングは機械で行いますが、要所での人の目チェックは欠かせません。

キュベ・ヨシコのデゴルジュモン(澱引き)も、一年で最も寒いこの時期に行う作業です。冬の工場は思いの外タイトなタイムスケジュール。

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畑では雪下ろしがあります。積もった雪の重みでブドウ棚が潰れるのを防がなくてはなりません。急な斜面でヒザ上まで雪に埋もれながら、長い棒を使いブドウ棚を揺らしていきます。一足ごとにずぼっずぼっと進み、頭上の雪の塊を落としていく。ひと冬の間に2,3回でしょうか。体力の要る大変な作業です。

 雪が解け始めると、もう一つ大切な仕事が待っています。"穂木採り"です。毎年春に、自社畑のどこかしらでブドウの植え替え(改植)をしますが、その苗木は自社のブドウから作ったものです。天候にもよりますが、苗の穂木にする枝を採取するのは2月第一週ごろです。

 野菜苗と同様、ブドウ苗も接ぎ木をします。苗木の根になる下の部分を台木、実を結ぶ上の部分を穂木といいます。ブドウを枯らす害虫フィロキセラ(根アブラムシ)に耐性がある米国原産品種を台木に、自社のブドウを穂木として苗木を作るのです。正確には、苗木屋さんで作ってもらうのですが。

 11月末にブドウの剪定をする際に、穂木を採る畑―仮に区画Aとする―を残します。雪が解け始め且つブドウが目覚める前のタイミングで、区画Aの剪定をしつつ枝を採取し、地元・上山市の苗木屋さんに渡します。苗木屋さんが台木に接ぎ木をし、約一年かけて育て、翌年の春に苗木完全体をワイナリーに納めてもらうのです。

 台木にも種類があり"根が横に張る"とか、"着色がよい"とか、特性を考慮して選びます。苗木屋さんは台木を自前で育てているそうで、食用ではないブドウが栽培されていることを私は初めて知りました。タケダの苗木屋さんは典子社長と私の同級生、向日葵のような笑顔の『ともちゃん』です。いろいろ相談できて助かると社長が言っておられました。

ちなみに、ブドウ苗木の生産量は山形県が全国一だそうです。知らなかったなあ。

 

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著者プロフィール

菅井由美子(すがいゆみこ)
山形市在住/弊社社長、岸平の高校時代からの友人。成人から高校生の3人の子供の母親。葡萄収穫をはじめ、ワイナリーでのいろいろな仕事の経験がある。それを活かしつつ、タケダワイナリーの今の様子をレポートタッチでお伝えしています。