Winery通信 2020 WINTER Vol.74
一年前に思っていたのとは異なる現実に、今、私たちは暮らしています。旅をする。人と会う。愉快に酒を酌み交わす。何気なく行っていた事が難しいものになりました。
人に何が起きようと、季節は巡り葡萄は育ちます。今年もタケダワイナリーは仕込みにおおわらわ。
岸平「全く根雪のない冬だったので、今春は越冬害虫の対策からスタートしました。樹木の病害菌が死滅していない可能性もあり、先手を打って作業をしています。」
具体的にはどのような?
「昔から使われている硫黄系薬剤の散布を早める。葡萄棚の針金に絡まっているツルを全部取り除くとか。こんなに雪がないのは初めてで"これをやれば大丈夫"という答えはなく、考え得る手立てを全てやるしかない。今年はずっとそんな感じ。」
コロナ禍の影響はありましたか?シルバーさん(シルバー人材センターの農作業員)が来られないとか?
「屋外作業だからね。互いに距離をとって仕事が出来るし、感染対策をしながら、例年通り仕事をしてもらいました。」
天候はあまり恵まれなかった印象です。
「春は穏やかで好かった。7月の大雨が辛かったね。特にデラウェアは壊滅的な被害を受けた所もあった。水を吸って果実が割れてしまったり、菌(カビ)が繁殖したり、取引農家のなかには収量が通常の6割減のところも。仕込みの選果が大変になることが予想されたので、実割れのない良い葡萄だけを納入して頂くようお願いしました。皆さんに協力頂いたお陰で、最終的にデラは予定通り仕込みが出来ました。」
白は大変な年だったんですね。
「ところがシャルドネは良かったの。日本的気候は苦手とする品種だけどね。」
黒葡萄はどうですか。
「8・9月のべレゾン(色づき期)は天候が良かったけど、ベリーAは力強さがもう一歩かな。葡萄の出来は悪くないから柔らかい味のワインになると思います。自社畑の古木はベテランを中心にスタッフがすごく手を掛けてくれて、なかなか良い葡萄が採れました。」
有り難いことですね。
「今年はタケダワイナリー創業100年。特別な事はしないのに、特別な年になってしまった。100年前ってスペイン風邪が大流行していたんですよ。その中で新しく葡萄酒を造り始めた。そこから幾度の困難を乗り越えながら今日に繋がっている。100年後も美味しいと飲んでもらえるように、私も、手を抜かずきちんと積み重ねていくしかないんだなと。変化を恐れず、ブレず、進歩しなくちゃ。」
100年は難しいけど、私この先20年30年と飲ませていただく所存であります。
創業100年おめでとうございます。
菅井由美子(すがいゆみこ)
山形市在住/弊社社長、岸平の高校時代からの友人。成人から高校生の3人の子供の母親。葡萄収穫をはじめ、ワイナリーでのいろいろな仕事の経験がある。それを活かしつつ、タケダワイナリーの今の様子をレポートタッチでお伝えしています。