ワイナリー通信

2016年のはたけの話 その2

Winery通信  summer Vol.60

春号から続く畑のはなし。ニュアンスをお伝えしたく一部山形弁をそのまま記します。意味は最後の注釈をご覧ください。

 

"有核葡萄"についてもう少し教えて下さい。デラ花1.jpg

岸平「種ありが有核、種なしが無核です。」

どう違うのでしょう。

岸平「現在、生食用の多くは"無核"ですが、そういう樹があるわけではありません。普通の樹に〈ジベ付け〉を行い人為的に作っています。ジベ付けは、開花前後の葡萄を、容器に入れたホルモン剤のジベレリンにひとつひとつ浸していく作業です。これによって種のない果実が生ります。」

ぶどう棚の下に入ってずっと上向いて、大変な作業ですよね。デラ畑1.jpg

岸平「有核が増えた理由として、まず農家の高齢化があります。生食用葡萄は見栄えも大事な分、手間が掛かって大変。"年寄って葡萄さんねは"*1とおっしゃる農家さんにはワイン専用を作ってみないかと話しているんです。"有核だじぇ" *2ってね。」

岸平「二つめの理由は国産ワインが広く認められるようになった事。以前は《有核の葡萄=質が劣る加工用の果実》のイメージがあり、外聞わるいというか、誇れないものだった。近頃は、生食になれなかった果実と、ワイン専用に栽培した葡萄は違うという認識が定着してきました。胸張って有核を栽培してくれる。若い農家の中には、最初から高級ワインの葡萄つくりを目指す人もいます。」

他にも要因はあります?

岸平「価格の安定。生食葡萄は市場価格の変動が大きく、博打のようだと言う人もいます。豊作での供給過剰や、天候による品質の低下によってガクっと値が下がる場合もある。生食用が安い時は、加工用はさらに安くなっちゃう。ワイン専用は加工用より高く、価格を予め取り決めていますから。」

手間が減って、収入が安定するなら農家にとっても"いいばり"*3じゃないですか?

岸平「そう思います?でもね、傍から見るほど楽じゃないのよ。ジベ付けしないと葡萄の生長が違うの。何十年と栽培してきたじいちゃんでも、ほとんどの人が有核は初めて。天候と葡萄の状態の組み合わせが、"見たことない"わけです。例えば梅雨頃はこれ位の大きさだからこの手入れをする―といった経験値が活かせない。"どやんばいすっどいいのや典子さん"*4と問い合わせをもらうので、その畑に出向いて、確認しながら一緒にぶどう作りをしているところです。」

確かに、現在リリース中の蔵王スターは種の香ばしさや熟した皮の味を強く感じます。ワインが美味しくなって、沢山飲まれるようになって、農家の後継者が増えると、まさに"いいばり"なのですがねえ。

 

*1"年を取って葡萄はもう作れない"

*2この場合"有核でいいんだよ"の意

*3"いいこと尽くめ"

*4"どうすればいいの?典子さん"

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著者プロフィール

菅井由美子(すがいゆみこ)
山形市在住/弊社社長、岸平の高校時代からの友人。成人から中学生の3人の子供の母親。葡萄収穫をはじめ、ワイナリーでのいろいろな仕事の経験がある。それを活かしつつ、タケダワイナリーの今の様子をレポートタッチでお伝えしています。