ワイナリー通信

改植穴掘り体験記

Winery 通信 2014 summer Vol.48

GW期間の4月29日、休日返上で植替えをすると聞き、タケダワイナリーを訪ねました。

長靴に割烹着、帽子と園芸用手袋のいでたちで午前9時頃タケダに到着。今日は社屋に隣接するシャルドネ畑の改植。スタッフは段取が済み作業を始めたところでした。

これが苗木だ.JPG「まず、苗木を見せましょうか。」と岸平社長が冷蔵倉庫に案内してくれました。苗木はどれも接木(つぎき)これには理由がある。

岸平 「フィロキセラというアブラムシがいます。葡萄の根や葉に付き枯らしてしまう害虫です。元々アメリカに生息する虫でしたが、19世紀、米国原産の葡萄を仏国に輸入した際一緒に持ち込まれ、欧州の葡萄畑が壊滅的被害を受けた。この虫に耐性がある米国原産のブドウ品種を台木(接木の根部分)にして欧州品種を接木すると、この虫に負けずに育つことが判り、以降この方法になりました。」

 日本でもそれに習って米国原産種の台木を使う。

岸平 「穂木(ほぎ・接木の上部分)は、自社の樹から採って作っています。」

自社樹の一年枝を2月に採取、苗屋さんに渡し指定した品種の台木に接いで育苗してもらうのだそうだ。その日見せてもらったのは、穂木を渡してから1年2ヵ月経て帰ってきたもの。

岸平 「地熱が適温より高くなってしまうから、春の連休前に植樹は終わらせろ、と先代(父)は言ってたけどね。近頃は4月一杯でギリギリ何とかってトコロ。」農事日和.JPG

快晴の農事日和。物差し代わりの細竹、鍬、スコップと各自役割に応じた道具を手に働く。元気な樹はそのままに、弱った樹は植替え、樹の間が抜けている場合は植え足す。皆さんに気使われ、私は穴掘りの必要な所に印を付ける軽作業となった。簡単そうだが実際にやってみると難しい。樹と樹の間を1mにせよと指示されたが、既存のブドウ樹が1m間隔とは限らずズレが生じる。第一、どれが残す樹で、どれがアカン樹かが見極められない。自ずと慎重になりかなり遅い。且つ不正確な目印である。ああ、とんだ足手まといだ。

穴掘り.JPG居たたまれず午後はスコップ隊に編入してもらう。穴は30㎝の立方体に堀り、底は真ん中を高く山型にする。『丸穴は生長の時に根が廻って絡んでしまう。角の立った四角にするのが肝要』とのこと。

土に立てたスコップの上辺を思いきり踏みつける。表面は少し硬いが、下は想像したよりも軟らかい。これなら根っこもさぞ伸びるだろう。親方の志田さんは見事な四角穴をサクサク作るが私はなかなか四角にならず角丸になってしまう。これが正しい四角穴.JPGのサムネイル画像時折強い風が吹くなか、和やかに賑やかに畑を進んで行く。ケーンと甲高く鳴くキジが同じ畑の先に見える。明日は体が動かないかもなあと思いながらも、何と気持ちの良いことか。

植付け用穴は2人の印係と6人の穴掘り係で200個以上出来た。午後5時過ぎ「今日はここまでだな。」と親方の声で作業終了。苗木は明日植えるそうだ。お疲れ様でしたと皆さんに声をかけて頂き、お世話さまでしたとご挨拶したが、本当は"すみませんでした"じゃなかろうか? 帰ったら念入りにストレッチしなくちゃ。

 

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著者プロフィール

菅井由美子(すがいゆみこ)
山形市在住/弊社社長、岸平の高校時代からの友人。成人から高校生の3人の子供の母親。葡萄収穫をはじめ、ワイナリーでのいろいろな仕事の経験がある。それを活かしつつ、タケダワイナリーの今の様子をレポートタッチでお伝えしています。