ワイナリー通信

2013年をふりかえる

                                            Winery 通信 2013 winter  Vol.46

また、この季節がやってまいりました。新酒を口に出来るこのしあわせ。今年はどんな味かな?と過ぎた春や夏を思い出しながら飲むのが、いちばん贅沢な夜長でしょうか。

社長、今年はどんな案配だったでしょう?

岸平社長「今年は大変だったあ。7月は雨ばかりで早生種のデラウェアが打撃を受けました。果実の成熟期に過剰な雨を吸い上げ実割れが続出した。下のグラフをご覧ください。山形市の今年7月の降水量と、7月の過去30年の平均降水量を棒グラフに表したのですが、今年の降水量の多さに驚かれると思います。

降水.jpg

山形地方気象台HPよりデーター取得

「仏蘭西にいた頃何度も耳にした『(葡萄の)悪い年ほど造り手の力量が問われる』のがここだと思って、最初の作業である選果からかなりナーバスになりました。選果だけで例年の4倍の時間と手間が掛かってしまい、搾り終わりが深夜2時だった時も。"今年のサン・スフルは造れないから"とウチの営業に宣言したのが、今シーズン仕込み始めの言葉になっちゃった。」

 えっ!?それは困るなあ。

「そう。"社長それは困ります"と。そこで、何とかサン・スフルを造る為の方策を考えた。葡萄の品質低下を防ぐため、農家にお願いして、割れている実は畑で落としてもらいました。傷んだ実は極力持ち込まない。そのうえで厳しい選果と、細心の注意を払って醸造し、2013年サン・スフルも造る事が出来ました。」

デラ選果4.JPG今年ほどチームの力を感じた年はない、と(珍しく)目を潤ませて語る岸平社長。農家の方に協力いただけたこと。連日夜遅くまで作業が続いても、嫌な顔せず働いてくれたスタッフ。その中には主婦もいる。「本当に頭が下がりました。社員の家族も含め、みんなの力があって造る事が出来たワインです。」

 晩生の黒葡萄(マスカット・ベリーA、カベルネ・ソービニョン、メルロ、ブラック・クィーン)に関しては、色付きや糖度、酸味ともに例年通りの分析データが上がっているそうです。

こちらは取材に訪れた10月末が仕込みの真っ只中でした。人に同じ日が廻ってこないように、ワインも同じ味の年はないのだなあ、と改めて思う2013年の初冬です。

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著者プロフィール

菅井由美子(すがいゆみこ)
山形市在住/弊社社長、岸平の高校時代からの友人。成人から高校生の3人の子供の母親。葡萄収穫をはじめ、ワイナリーでのいろいろな仕事の経験がある。それを活かしつつ、タケダワイナリーの今の様子をレポートタッチでお伝えしています。